【インタビュー】飾らない「明るさ」で君の背中を押す、次世代のポップアイコン・Lavt──孤独の中から自分を肯定する強さを見出すEP『solitude』に至るまでを語る - All photo by 野口悟空All photo by 野口悟空

【インタビュー】飾らない「明るさ」で君の背中を押す、次世代のポップアイコン・Lavt──孤独の中から自分を肯定する強さを見出すEP『solitude』に至るまでを語る

アーティストを好きになる理由はさまざまだ。いちばんの理由は、やっぱり自分好みのジャンルや曲調であるかということだろう。ただ、それだけが重要なのであれば、最近ではAIが特定のジャンルや曲調を器用に表現してしまう。であるならば、一体何が「このアーティストの新曲が楽しみ!」とか、「このアーティストのライブに行きたい!」という感情をもたらすのだろうか。
私は、この人に歌われると励まされるとか、この人が作った曲なら信じられるとか、楽曲に説得力を持たせられる人が、「このアーティストでなくてはならない」存在意義を獲得していくものだと考えている。以下のLavtのインタビューをぜひ読んでほしい。EP『solitude』を制作するにあたって、リスナーの暗い感情に深く寄り添うために、自分自身の暗い部分と一つひとつ丁寧に向き合い、言語化していったのだという。そうやって生まれた“voicemail”の歌詞にはこんな一節がある。
《自分自身がたまにウザくて/不器用な行動が目立って/優しさを持ち合わせているのは/気に入ってるけど》
自分自身のことになると嫌なところばかりがどうしても目についてしまうけれど、こうやって自分を認めてあげてもいいのだと気づかされ、ハッとする。辛いことのほうが多いと思ってしまう人生の中で、どうやって前を向いて歩けばいいのか。彼は自分のことを綴ることで、自然とみんなにその方法を伝えることができる稀有なアーティストだ。以前から取材をするたびに、明るい人だなとは思っていたが、暗い部分もあるけれど明るい部分が際立って表出していると説明したほうがきっと正しい。悲しさも苦しさも抱えたまま、笑って踊ることだってできるんだ。それを体現した姿を目の当たりにすることは、どんな有名な書物や偉人の言葉よりも励まされ、希望の光になる。こんなアーティストこそ、早く有名になって、たくさんの人に聴かれるべきだ。インタビュー=有本早季

AIは人間じゃないから悩むことがないじゃないですか。僕は人間だから悩むし、そういう人間らしさをどんどん培っていきたい

──前回取材させてもらったのがミニアルバム『glauben』リリースタイミングでした(『ROCKIN’ON JAPAN』2026年1月号掲載)。その際に、「自分の音楽の芯をしっかり形成したい」とおっしゃっていましたが、その後手応えはいかがですか?今は順調に進んでいる感覚があって。『glauben』(ドイツ語で「信じる」の意)は、いろんなものが好きだし、いろいろ迷っちゃう性格だから、「好きなものをとことん信じてやっていこう」ということをスローガンに掲げたくてタイトルをつけたんです。それからは、いろんなものを吸収しつつ、自分らしさってなんなんだろう?っていうのを、自分が好きかどうかという基準だけでどんどん判断していったので、最近は「Lavtらしさ」を見つけられてきていると思います。“パラソムニア”(2026年2月リリース)あたりからは、「ああ、やっぱりこういう音好きだよね」とか、もうひとりの自分みたいな存在と「わかる、わかる」ってやりとりをする感覚で作曲を続けています。──自分が好きかどうかを明確な基準にしてやっていこうと思ったきっかけはあったんですか?最近、AIが音楽でもすごく発展してきていて、AIじゃない自分という人間が音楽を出力するにあたってどういうことができるんだろう?って考えた時に、人間味とか、その人にしか出せないものがどんどん大事になってくると思ったんです。特定のジャンルに寄り添う作曲は、AIでもできちゃうじゃないですか。たとえば「踊れる曲を作って」って言ったら踊れる曲を作ってくるし、「ロックを作って」って年代も指定したらその年代っぽい曲を出力してくるから、これはまずいと思って(笑)。だったら「Lavtの音楽」と言えるようなかたちを作っていったほうがいいんじゃないかという考えになって、そこから自分の色とか自分の好きな音を意識するようになりましたね。──確かにAIの精度はどんどん上がっていますからね。AIに自分の得意だったものが吸い取られていく感覚もあって、すごく悔しかったんです。でも、AIは人間じゃないから悩むことがないじゃないですか。僕は人間だから悩むし、そういう人間らしさ──たとえば、僕がギターを弾くとミスっちゃうこともあるけど、それが良さになることもある。AIがそのミスも計算してやり始めたらヤバいんですけど(笑)。でも、そういう人間らしさをどんどん培っていけたらなと思います。
【インタビュー】飾らない「明るさ」で君の背中を押す、次世代のポップアイコン・Lavt──孤独の中から自分を肯定する強さを見出すEP『solitude』に至るまでを語る
──そういう意味で言うと、まさに今回のEP『solitude』は、こんな曲もできるしあんな曲もできるんだっていうLavtさんの色を、全4曲で網羅的に表現したEPだなと感じていました。Lavtらしさを残しつつ、いろんな曲をどんどん作っていきたいので。単純にいろんな曲が好きだから、自分で枠を決めてやるのも変だなと思っています。──「孤独」というテーマにはどうやって行き着いたのでしょうか?「孤独」という意味の単語は「loneliness」と「solitude」でふたつあって──「loneliness」はマイナスな意味というか、寂しいという気持ちが強めの孤独なんですけど、「solitude」は自分自身で選んで進んだ孤独っていう意味があって。これまでは、自分自身と向き合うことがそんなになかったんじゃないかなって思ったんです。で、今回このEPを作るにあたって、自分自身のパーソナルな部分とか今まで経験してきたことに向き合いました。
自分自身の性格はポジティブだと思っていたんですけど、ネガティブな部分もあることに気づいて、両方ある人間なんだなっていうのをものすごく感じたんです。たとえば、失恋だったら自分自身でどうしようもない範囲のことだから、どうあがいてもネガティブにしか捉えられない瞬間もあるし、逆にその失恋があったから前を向けたみたいなポジティブな部分もある。そういうのをどんどん表現していきたいなと思いました。“サイレン”はまさにそういう失恋の曲で、ただただ自分の後悔を書いて、それにファンの人が共感できたら、救われる部分がすごくあるんじゃないかと思って書きました。“voicemail”は、ネガティブの中にあるポジティブみたいな感じで、ポジティブもネガティブも両方書いた曲です。

理由づけがない好きのほうが夢中になれる気がする。ただ、ギターがめっちゃ楽しいし、音が好きだっていう、この気持ちは絶対に忘れずにいたい

──「Lavtらしさ」を開拓していく流れの中で、自分と向き合う作業に行き着いたんですか?そうですね。自分がかっこいいと思うものをどんどん自分の中で言語化していったというか。なんでこのアーティストは自分に刺さっているんだろうとか、いろいろ共通点を探したら意外と見つかって。それを自分の中で織り交ぜて曲を作っていけば「Lavtらしさ」になるんじゃないかなと。──具体的にはどういうところからひもといていったんですか?幼少期からひもといていきました。「なんであの時俺は絵本にあんなに興味がなかったんだ」とか、「なんであんなに外に出ずに家でずっと引きこもってパソコンをいじってたんだ」とか。あとは、家庭のこと、今まで恋愛してきたこと、友達のこととか、本当に全部ですね。
音楽でいうと「アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の何が僕に刺さってたんだ」とか、「なんでこんなにギターが好きなんだろう」とかにも向き合いました。その中で、理由なく「ただ好き」っていうのもあったんです。そういうものがすごく大事だなと感じていて。理由づけがない好きのほうが夢中になれる気がするんです。それこそギターに関しては言語化しようと思ってもあんまりできなかった。ただ、ギターがめっちゃ楽しいし、音が好きだっていう、この気持ちは絶対に忘れずにいようとか、そういうふうに向き合っていきましたね。──思ったより本格的に向き合われていたので驚きました。大変じゃなかったですか?大変でした(笑)。でも、たとえば「苦しい」という感情なら、かたちは違っても誰しもが経験してると思うから、今聴いてくれているお客さんのそういうものに寄り添おうと思った時に、自分自身がまず自分のそういう部分に寄り添わないと、あんまり解像度高く表現できないんじゃないかと思ったんです。だから、むっちゃしんどかったですけどやってよかった。一気に全部振り返ろうとしたのでヤバかったですけど(笑)、これからも定期的にやろうかなと思いました。
【インタビュー】飾らない「明るさ」で君の背中を押す、次世代のポップアイコン・Lavt──孤独の中から自分を肯定する強さを見出すEP『solitude』に至るまでを語る
──1曲目の“voicemail”が、人間の不完全さに寄り添う本当にいい曲なのですが、徹底的に自分と向き合うという過程を経たからこそ生まれた曲なんだろうなと、お話を聞きながら強く感じていました。特に《ほら鈍感な人間にはもう/鈍感に当たっていたい》という歌詞が秀逸で。一見突き放すような言葉ですが、そんなに気を張らなくていいんだよという優しいメッセージを受け取りました。これは僕の中でもキラーフレーズになっています。生きていく中で、「なんでこの人はこんなに人の気持ちがわからないんだろう?」って思うような、すごく鈍感な人に出会うことがあって。自分は、「相手は今、こういうことを考えているんじゃないか?」とかを一回考えるタイプだから、その人のことが理解できなくてしんどくなっちゃう時がよくあるなと、自分自身と向き合った時に思ったんです。どうしたらいいんだろうって考えた時に、こっちもその気で当たればいいんじゃないかって(笑)。おまえが気を遣わないならこっちも遣わねえよっていう気持ちというか、大切に扱ってくれる人のほうを絶対大切にしたいって誰しもが思うはずだから、鈍感な人に対してはそんなに深く考えなくていいよって伝えたくて、この2行に込めました。──この2行は攻めたことを言っているようにも聞こえるんですけど、実際にそう振る舞えるかどうかは別だから、あくまで願望だというところにも人間らしさを感じます。そうなんですよ。生きていく中でゾーンに入ってる瞬間ってあるじゃないですか。何事もうまくいくなとか、人間関係がものすごくうまくいっているなと感じられる時にはこう思えるというか。ただ、実際にできるかっていうとたぶん50%くらいしかできないのも自分でわかっているから、本当に願望って感じですね。僕は勝手に立つんですよ、《言葉の奥に》。──Lavtさん自身がそういうタイプなんですね。たとえば、友達とごはんに行った時とか、寝る前に「ああやって発言したけど、果たしてよかったのかな」とか、「友達のあの発言ってどういう気持ちで俺に言ったんだろう」とかめっちゃ考えちゃうタイプです(笑)。
【インタビュー】飾らない「明るさ」で君の背中を押す、次世代のポップアイコン・Lavt──孤独の中から自分を肯定する強さを見出すEP『solitude』に至るまでを語る

次のページこの曲を聴いた人が僕と同じ立場に立って歌詞を読んだ時に、その人自身がその人の背中を押すって考えたら、ものすごく素敵なことだなと思った
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