【インタビュー】《震える足》も《泣き出しそうな心》も信じて照らす「一歩先」の世界。初のアニメ主題歌“日々を越えて”に明くる夜の羊が託した想いとは?

【インタビュー】《震える足》も《泣き出しそうな心》も信じて照らす「一歩先」の世界。初のアニメ主題歌“日々を越えて”に明くる夜の羊が託した想いとは?

《泣き出しそうな心抱きしめたまま/震える足で一歩踏み出す/私の信じたいものを/あなたが信じてくれたから》──明くる夜の羊のメジャー1stシングルの表題曲“日々を越えて”は、自身初のタイアップとしてTVアニメ『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』第3期エンディング主題歌に書き下ろした楽曲であると同時に、その鮮烈な歌とアンサンブルによって「僕らの日常」に光と躍動感を与える明くる夜の羊というバンドの核心が焼き込まれた名曲だ。「転生もの」というファンタジーの世界越しに、フィクションでも絵空事でもない「現実の一歩」にフォーカスを合わせる、カワノユイ(Vo・G)の歌の精度。そして、カワノの歌が最大限に輝くように、ダイナミックなバンドサウンドに精緻な意匠を施すメンバー4人の創造性。そこから生まれる楽曲はいつだって、聴く者の視界をクリアに塗り替えるマジカルな訴求力に満ちている。カップリング曲として収録された疾走感あふれるナンバー“君に、いつか。”も含め、着実に進化を続ける明くる夜の羊の充実した「今」を物語るシングルであることは間違いない。11月22日には東京・Spotify O-EASTにてワンマンライブ「八周年単独公演『蒼星、東より』」を開催する明くる夜の羊の現在地について、カワノユイとクラシマヒロミチ(G)のふたりに話を訊いた。インタビュー=高橋智樹 撮影=エドソウタ

明くる夜の羊がもともと大切にしている「誰かを信じる」「自分を信じる」っていう部分がリンクできたからこそ、『転生貴族』にも寄り添える曲にできた(カワノ)

── メジャー1st EP『cradle』に続いて、まためっちゃいい曲ができましたね。カワノ・クラシマ ありがとうございます!── サビ頭の♪泣き出しそうな心抱きしめたまま〜のところ、《泣き出しそうな心》にメロディも演奏も含めて全員でフォーカスしていく精度がものすごく高いなと思いました。カワノ 今、メロディラインまで歌っていただいて。── (笑)。“日々を越えて”はTVアニメ『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』第3期エンディングの書き下ろし主題歌ですよね。どんなことを思いながらこのタイアップに挑みました?カワノ 全力で(笑)。とにかく、私たちにとって初めてのタイアップ作品なので。ゼロイチで曲を作れる人が3人いるので、特に「こういうふうなところを曲にしていこう」っていうことは決めずに、原作を読んで、いかに明くる夜の羊に落とし込めるか、っていうことを各々考えて、いくつか曲を出して。この曲の元はドラムのアユムが作って、それをみんなで共有したでうえ「じゃあ、明くる夜の羊をどうやって詰め込んでいこうか」って考えていきましたね。各々が思うものを出力したら、自ずと明くる夜の羊にはなると思ったので、そこにどれだけ原作への想いを絡められるか、っていうふうに私は考えながら詞を作っていきました。── 「アニメの内容にどう寄せていくか」よりは、明くる夜の羊はこの物語から何を受け取ったか、そこで心がどう動いたか、をそのまま楽曲にしていくスタンスだったわけですね。カワノ そうですね。作品の中に、私がめちゃくちゃ感情移入をしてしまうキャラクターの子がいたっていうことも、詞を書くにあたってすごく大きかったと思います。あと、私とクラシマの間でもLINEでやりとりしてて覚えてるんですけど──「信じる」とか「信じ合う」っていう言葉を大切にしようって。それはたぶん、明くる夜の羊がもともと大切にしている部分でもあったし、「誰かを信じる」とか「自分を信じる」っていう部分がリンクできたからこそ、作品にも寄り添える曲にできたのかなと思います。クラシマ 画で観ると、戦いがあったりして平和な世界ではないんですけど、「何かを成し遂げるために、誰かを信じる」っていうのがテーマだとは思っていたので。曲の中でも、1曲通して聴いてもらえると、たとえばリードギターも、言葉に対して入ってる音の数とか、フレーズのつき方とか、全部変えてあるんです。Cメロ──あそこはCメロになるのかな?カワノ いちばん最後のところ?クラシマ そう。最後のパートは、それがいちばん顕著に作ってある箇所ですね。《変わり映えしない日々が》のところのフレーズが、次の《形を変えていく》で少し変わり始めて、《忙しなくて騒がしい》で音数が多く入ってきて、《愛おしい》でチョーキングとかも含めて音が上がっていく──っていう。すごく細かい話なんですけど、僕の趣味にも近いつけ方をしたりして、結構こだわってはいますね。アニメが好きで、今回初のタイアップなので。愛情がいっぱい詰まってるなあと思います(笑)。── じゃあ、タイアップの話が来たって聞いた時は──。クラシマ 思わず立ち上がりました。「うわあ!」って(笑)。── 板前さんの包丁の入れ方とか素材の選び方に理由がある、みたいな話にも通じますよね。クラシマ そうですね。明くる夜の羊っていうバンドも、曲に対して、フレーズに対して、言葉に対して、それぞれ意味をつけてここまでやってきたバンドでもあると思ってるので。誰かが気づいたら嬉しいかもしれない、でも気づかなくたって、音楽も言葉もちゃんとそこにあるものとして、誰かに渡せてると思ってやっているので。逆に、今回みたいに言葉で伝えられる機会も、そんなになかったりするので。ギタリスト的にはウキウキしてます(笑)。

転生をして、悔しかったことを再起させることもあるし、もう一回自分を奮い起こすために生きるやり方もあるし──「転生もの」はそういうところが好きなんですよね(クラシマ)

── 日常を越えようもなく生きている人にとって「そこにちゃんと色もあるしドラマもあるんだよ」っていうリアルに気づかせてくれるのが明くる夜の羊という音楽だ、という話を前回のインタビューでもしたと思うんですけども。非日常的なストーリーが展開される今回のアニメに対しても、「何かに挑む」という局面で自分の感情がどう動くかを描いている点で、「明くる夜の羊の戦いの曲」にもなっている気がしたんですよね。カワノ ありがとうございます。確かにアニメだと、たとえば自分が持ってない魔法とか剣とかでドラゴンと戦うみたいな場面もあると思うんですけど。その戦いに行くまでに、「よっしゃ、やってやるぞ!」っていうキャラクターもいれば、「怖いなあ、不安だなあ、でもやらなきゃ」みたいなキャラクターもいるというのは、非日常であろうと日常であろうと、感情がある限りは絶対に発生する心の働きだと思うので。そういうところも反映できているのかなと思いますね。── 《泣き出しそうな心抱きしめたまま/弱い私に刃を向ける》という強い歌詞のところで静かになって、この言葉が「自分のこと」として迫ってくるような展開もいいですね。クラシマ ⋯⋯嬉しい! タイアップ曲ではあるので、「アニメのエンディング曲」っていうイメージとしてこの曲はあるけど、それ以前に「聴いてる人のための曲」でもあると思うので。そうやって「『自分のこと』のように思ってもらえる曲」って言ってもらえるのは──嬉しいねえ、これ!カワノ (笑)。このうえないね。── この喜んでくれてるテンションが、読者のみなさんにどれだけ伝わるかなあ⋯⋯。カワノ・クラシマ (笑)。
【インタビュー】《震える足》も《泣き出しそうな心》も信じて照らす「一歩先」の世界。初のアニメ主題歌“日々を越えて”に明くる夜の羊が託した想いとは?
── 『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』も含め「転生もの」ってたくさんの作品がありますけど、基本的には「現実から逃避するためのフィクション」というよりは、むしろ「別視点を得ることによって、自分がいた現実にフォーカスするための構図」なわけですからね。クラシマ そうですね。転生をして「もう一度何かをやり直す」時っていうのは、その人にとって抱えていたものをもう一度燃え上がらせることもあるし、悔しかったことを再起させることもあるし、もう一回自分を奮い起こすために生きるっていうやり方もあるし──「転生もの」はそういうところが好きなんですよね。今回の作品もそうだし、曲としてリンクする部分もあったりするし。── 有名な話ですけど、ダルビッシュ有の「イマジナリー転生」の話にも通じますよね。不調だった20歳の夜に、「『落ちぶれて40歳でホームレスになった自分が神様に出会って、一回だけ20歳に転生させてもらった』という体で、後悔がないようにできることは全部やろうと覚悟を決めた」という。その結果が今、40歳でメジャーリーグで投げてるダルビッシュ有なわけで。カワノ すごっ! ⋯⋯でも、日々そういうことの繰り返し感はありますよね。── 日常を生きてる中で、今自分が何者であるか、どういう感情を持っているか、みたいなことを特に言語化もしないで、下手したら意識もしないで生きていることも多いかもしれないけど、「他人の視点」とか「未来から振り返った視点」から見たら、全然違って見えることもあるでしょうからね。クラシマ そうですね。── だから、「異世界越しに現実を見る」っていう今回のアニメ作品の本質は、明くる夜の羊とも相性がよかったのかもしれないし、そういう曲に“日々を越えて”というタイトルがついているのもいいなと思いました。カワノ 嬉しい!クラシマ 命名したのはカワノですから。カワノ 確かに、自分たちが今まで作ってきた曲も、くじけそうな時とか、「あの時の自分にもう一回伝えてあげたい」みたいなところから歌詞が始まっていることが多いので。この曲も──私もそうですけど、「今は変えたいけど怖くてできない」っていう人にとって、何かきっかけになってくれたらいいなと思いますね。あの、イマジナリー転生のきっかけになってくれたら──。クラシマ そこに繋がるんだ?(笑)。
【インタビュー】《震える足》も《泣き出しそうな心》も信じて照らす「一歩先」の世界。初のアニメ主題歌“日々を越えて”に明くる夜の羊が託した想いとは?

次のページステージに立つと足が震えるし、「泣き出しそうな心」は常に抱えてるんですけど、その弱さも自分だって認めたまま一歩踏み出したい(カワノ)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on