ザ・クロマニヨンズ×グループ魂@Zepp DiverCity TOKYO

 
all pics by 柴田恵理
例えば辛いことがあった時や何事も上手くいかない時に、胸中の靄を晴らす方法は人それぞれだと思う。おいしいご飯を食べる、買い物に行く、身体を動かす等々…。私がHOT STAFF PROMOTION主催『DiverCity HOT ATTACK』ザ・クロマニヨンズ/グループ魂の2マンライヴを観て感じたのは、日々の生活の中で積りゆくマイナスの感情をスカッと発散させるためには、この2マンは最高に効くのだということだった。笑って、はしゃいで、汗をかいて、またはしゃいで、ああ、こんなに楽しい日があるのなら明日もまた頑張ろうと思える。そのサイクルに大人も子供も関係ない。20代だろうが50代だろうが、「何もかもを忘れて楽しみたい」という感情を求めてこの場所に訪れた人たちの生きる活力を満タンに満たしてくれたライヴだった。 

■ グループ魂
 SEに乗って港カヲル(46歳)が登場すると、その派手な衣装と開口一発に飛び出す下ネタで会場は爆笑。「ほとんどの人が思ったはずです。あのクロマニヨンズが!よりによってなぜ!グループ魂みたいなクソバンドと対バン!?俺が一番思っているよ!果たしてヒロトとマーシーは誰と間違えてオファーしてきたのか…!」なんて自虐で笑わせる。そして「これだけは言わせて下さい。おっぱい元気!?」の恒例コールに観客が「イエーイ!」と返すと、「イエーイじゃないでしょ!何言ってんの!おっぱい元気?と聞かれたら…(しおらしく)元気はありません。でも、STAP細胞はあります…!でしょ!?」と時事ネタで会場を沸かす。こんなコール&レスポンスは恐らく彼の下でしか生まれないのだろうな、なんて笑い涙を拭きながら考えていると、さりげなくステージに登壇していた石鹸(Dr)、小園(Ba)、遅刻(Gt)の鳴らすビートと満場のハンドクラップに乗ってバイト君(大道具)、暴動(Gt)、そして破壊(Vo)が登場!「モテる努力をしないでモテたい!」「アイサツせんヤツ大キライ!!」などの単純明快な歌詞を乗せた勢いのあるキレキレのパンキッシュなバンドサウンドでフロアを掻き乱すその様は、メンバーが俳優や脚本家とはまるで思えない。人を楽しませるために生きている人達の底力は、その舞台が変わってもしっかり伝わるものなのだと思った。
 そんな彼らの演出のひとつに、バイト君のマイクスタンドにはピックスタンドならぬ「スリッパスタンド」が設けられており、MC中や曲中にブーメランの如くスリッパが飛んでくる。もう、意味が分からない!
 コントあり、歌あり、衣装替えあり、スリッパあり、下ネタあり(これが大半だった)。冒頭でも述べたが、まさにエンターテイメント。全てのネタを書いたら、恐らく1冊の分厚い台本が出来上がってしまうことだろう。「名前は知っているけど、ライヴは観たことがない」という方は、抱腹絶倒覚悟で足を運んだ方がいい。

【セットリスト】
1.モテる努力をしないでモテたい節
2.アイサツはハイセツよりタイセツ
3.ラブラブ・マンハッタン
4.I was PUNK!! ~グループ魂にあっちゃん(NEW ROTE'KA)は?~
5.職務質問
6.竹内力
7.High School
8.君にジュースを買ってあげる❤
9.べろべろ
10.Over 30 do The 魂
11.中村梅雀
12. カチカチ
13. ペニスJAPAN
 
■ ザ・クロマニヨンズ
 SEに合わせてステージ後方に大きなフラッグが掲げられ、メンバーがステージに現れた瞬間のあの割れんばかりの大歓声と言ったら。甲本ヒロト(Vo)の「おい、いくぞロケンロー!」の掛け声に観客の諸手が上がり、“タリホー”の大合唱がフロアいっぱいに響くとその光景を目の前に目頭が熱くなった。真のロックンロールとはこのことか。“ギリギリガガンガン”の歌詞を拝借するならば《今日は最高 今日は最高の気分だ》、1曲目からそう感じさせるほどの勢いと熱気と興奮がそこにはあった。
 4/9にシングルA面曲全13曲を集めた『13 PEBBLES ~Single Collection~』を発売し、5月にカップリング集、6月にミュージッビデオ集、さらには8月にニューシングル、9月にニューアルバムの発売が決定しているザ・クロマニヨンズ。甲本が「僕たちももうずいぶん大人になって鼻血もあんまり出なくなって、色々事情も分かるようになったから、今日はシングル中心にやっていきます」と話すように、この日のセットリストはまさに黄金セトリだった。
 ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、時々ハープという至極シンプルなアンサンブルが、胸のど真ん中に突き抜ける。ロックンロールを極め続け、その字の如く日本のロックシーンを転がり続けてきた彼らだが、決して丸くなることがない。さらには転がる摩擦で日に日に熱を帯びて、聴く人の心や記憶に心地よい熱さの焼印を残していく。どこか懐かしいと思える王道ロックンロールなメロディーだったり、愚直なまでに真っ直ぐな歌詞であったり、「あの頃はいい時代だったな」なんて懐古できる彼らの音楽を聴くたびにそれは疼き、更なる熱さを求める。その心地良い循環の根底には、彼らが歌い続けてくれる限り日本のロックは大丈夫だと思える安心感がある。決して派手なパフォーマンスをするわけではないが、4人から溢れる酸いも甘いも噛み分けてきたような安定していながらも熱いライヴには、終始心を動かされ続けた。
 アンコール前に「普段はグループ魂だけじゃなくて他のバンドもいるから薄まって丁度良いんだけど、今日はグループ魂と僕らしかいないということで、はっきり言って、やりづらかったです」というオファーした側である甲本からの実は愛あるレスポンスに会場は手を叩いて笑った。もちろん半分以上は冗談なのだろうけれど、そういうことを言えてしまうのも大御所バンドらしさだ。
帰路は雨が降っていたけれど、心は晴れやかだった。少し小雨に濡れつつ電車に乗って、今日のライヴを思い出して少しにやける。こういう日があるから生きていけるのだと、改めて音楽に、ロックに転がされている毎日だと思えた日だった。センキューロケンロー!(峯岸利恵)

【セットリスト】
1.タリホー
2.紙飛行機
3.ギリギリガガンガン
4.炎
5.エイトビート
6.とがってる
7.グリセリン・クイーン
8.流線型
9.飛び乗れ!!ボニー!!
10.スピードとナイフ
11.オートバイと皮ジャンパーとカレー
12.ナンバーワン野郎!
13.雷雨決行
14. 突撃ロック
15.燃えあがる情熱

En1. 弾丸ロック
En2. クロマニヨン・ストンプ