Broccasion Live TOKYO@EX THEATER ROPPONGI

Broccasion Live TOKYO@EX THEATER ROPPONGI - BACK DROP BOMB(all pics by 又来純)BACK DROP BOMB(all pics by 又来純)
日本のミクスチャー・ロックのパイオニア、BACK DROP BOMB(以下BDB)。その結成20周年を祝して先日リリースされたトリビュート盤が『The Broccasion -music inspired by BACK DROP BOMB-』であるが、時を同じくして、そのリリースイベントが、ここEX THEATER ROPPONGIで行われた。ラインナップは、そのトリビュート盤にも参加している4バンド、そしてもちろん主役のBDBである。

Broccasion Live TOKYO@EX THEATER ROPPONGI - Dragon AshDragon Ash
定刻16時にトップバッターがスタート。なんとDragon Ashである。薄明かりの中、颯爽と登場した彼らが1曲目に選んだのは、これまたいきなりのBDB代表曲“THAT'S THE WAY WE UNITE”である。トリビュート盤でも披露していたカバーであるが、ライヴになるとその迫力に圧倒される。Kjのラップ、そしてKen Kenのベース・ラインが、腹の底に打ちつける重厚なグルーヴを紡ぎだすのだ。フロアを一気に熱狂させた後は、最新アルバム『THE FACES』のナンバーを中心に、じわじわと自分たちのフィールドへオーディエンスを引き寄せていくDA。「東京のピカピカのライヴハウスで、BACK DROPに呼ばれて、トップバッターなんかやらせてもらって、10代の自分に教えてやりてえよ」と話すKj。「BACK DROPとかMAD(CAPSULE MARKETS)とか、クソかっこいいオルタナバンドが上にいて、その下に山嵐とか俺らとかRIZEがいて、さらに今はその下の世代も、こういう激しい音楽をやっててさ。ミクスチャーロックっていう名前ぐらいは覚えて帰ってください」――その脈々と受け継がれる系譜をグッと噛み締めるMCを彼が残した後、ラストは“Lily”でBDBの20周年に美しい花を捧げた。

Broccasion Live TOKYO@EX THEATER ROPPONGI - LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERSLOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS
そしてリハの段階からフロアを沸かせていた2番手は、LOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERSである。この日はハットとグラサンでキメた伊達男のいっちゃん。「あ・ば・れ・ろー!」の合図とともに放った1曲目は、こちらもトリビュート盤でカバーした“TURN ON THE LIGHT”。本家よりルーズで、バンド感が強調されているのが、なんともらしくていい。「イエーイ。LOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERSです。BACK DROP BOMB、20周年おめでとうございます!」と盟友のメモリアルな瞬間を祝福するいっちゃん。まるで友人のバースデーパーティーにふらっとカジュアルな格好で現れ、そしてプレゼントをさっと渡していくような、なんとも粋な佇まいを見せたのが、この日のLOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERSである。ただ、そんなフレンドリーないっちゃんに、フロアのオーディエンスは次々と合いの手を挟み、さすがの彼も「ちょっとみんな、話しすぎ(笑)。今日は白川さんに呼ばれてきてんだからね!」と笑顔で静止する始末。勢いそのままに、ラストは“Little Giant”で締めくくり、最後はステージ上で一回転した後、「俺、音楽やってて良かった!」というなんとも多幸感溢れる言葉を残してアクトを終えた。

Broccasion Live TOKYO@EX THEATER ROPPONGI - THE NOVEMBERSTHE NOVEMBERS
続いて今回トリビュート盤に参加した11バンド中、最も「異色」といっていいTHE NOVEMBERSが登場。ステージ上にはうっすらとスモークが炊かれ、不穏な赤黒い光の中、メンバー4人が姿を現す。小林祐介(Vo・G)が「こんばんは、THE NOVEMBERSです」と軽く挨拶を行い、そしてBDBのカバー“MASTADABESTAH”を早速披露する。大胆すぎるカバーは時として迷路に入り込むこともあるが、このTHE NOVEMBERSの楽曲解釈は本当に見事だ。BDBのロックに潜む「闇」のエッセンスを、自分たちの音楽の「暗黒」と掛け合わせ、そのキャンバスの上になんとも耽美な絵画を描き出す。時代とジャンルを超えて共鳴する「ストリートのダークネス」がそこにはあった。「あらためまして。今日この企画に関われたことを光栄に思います。そしてBACK DROP BOMBの20周年と、その20年の間に、彼らが開拓してきたこと、すべてにリスペクトと感謝をしています」と誠実な言葉で語る小林。最後は生の賛美歌“今日も生きたね”をプレイし、まるで祝砲のような轟音を残しながら、彼らはステージを後にした。

Broccasion Live TOKYO@EX THEATER ROPPONGI - ASPARAGUSASPARAGUS
4番手はBDBとの関係が濃すぎると言っても過言ではない、ASPARAGUSである。まずは“Analog Signal Processing”と“APPROACH ME”でガソリンを注入。ポップとラウドの境界を、まるで曲芸師のように綱渡るアスパラの真骨頂が、序盤から早くも炸裂する。そして、しのっぴこと渡邊忍(Vo・G)のMCも冴え渡るのだ。「あらためまして、ASPARAGUSです。BACK DROP BOMBの20周年をお祝いしに来ました。本当におめでとうございます。では初めてやるバクドのカバーを(笑)」という導入から始まったのは、“IN ORDER TO FIND THE NEW SENSE”。原曲のテイストをさらにキャッチーにし、メロディラインをより浮かび上がらせたカバーであるが、フロアからは熱狂をもって迎えられる。「昔、俺はサポートでギターを弾いていたし、一瀬もサポートでドラムを叩いていて、そして直央はバックのメンバーとよく飲みに行っていて(笑)」と、BDBとの深い絆をフランクに語るしのっぴ。そのゆるゆるなんだけど、完成されたトークで会場を爆笑に包みながらも、最後は“FALLIN' DOWN”でしっかりけじめをつけ、本日の主役へとバトンを繋ぐのであった。

そしてDragon Ashのスタートから4時間後、ついにBACK DROP BOMBがステージに姿を現した。オープニングSEに1stアルバム『MICROMAXIMUM』のイントロトラックがかかると、フロアには怒号のような歓声が響き渡る。そしてアルバムの曲順と同じく“BOUNCE IT”“BLAZIN’”“CLAP”の3曲を一気に連打。この序盤の流れが既にヤバい空気を醸し出していた。それこそ『MICROMAXIMUM』がリリースされたのは1999年なのだが、15年という時の経過をまったく感じさせないモダンな楽曲、であることは間違いないのだが、それをさらにアップデイトしてしまうBDBの熱量が、この日のライヴには充満していたのだ。「二十歳になりましたBACK DROP BOMBです。本当にありがとう。とりあえずワチャワチャしたいっていうだけで立ち上げた企画なんだけどね。みんな、もういい歳でしょ? できるだけワチャワチャお付き合いください」――白川貴善(Vo)はすごくラフな挨拶で、出演してくれた仲間たち、そして目の前のオーディエンスと喜びを分かち合う。ただ、もちろんこの日のライヴは、単なる同窓会モードに終始していたわけではない。中盤に畳み掛けられた“ENTERED AGAIN”“ROAD”そして“PROGRESS”の3曲はいずれも2012年以降に発表されたナンバーであるが、そのソリッドなビートとクールなサウンドが未だに研ぎすまされていることを証明した3曲でもあった。先のKjや小林の言葉ではないが、こういう曲を突きつけられると、ミクスチャーロックの開拓者としてのBDBの存在感が、より浮き彫りになるのだ。

Broccasion Live TOKYO@EX THEATER ROPPONGI - BACK DROP BOMBBACK DROP BOMB
そして“NEVER SEEM TO LAST”“TURN ON THE LIGHT”が投下される頃には、フロアは独特なテンションへと変化していく。刹那な憂さ晴らしでもなければ、やけくそな懐古主義でもない。ただそこにはすべてのオーディエンスが「ありし日の自分」と向き合うという、あまりにもドラマチックな瞬間が訪れたのだ。決して「絆」や「連帯感」だけを強調してきたわけではないBDBのロック。むしろ彼らの前衛性や破壊力は、「個」であることの強さ、もっと言うなら「孤独」であることによって担保されていた。ただ、この日の本編ラストで歌われた“THAT’S THE WAY WE UNITE”は、そんな「個」が集うためのシェルターとしての役割を、(この日だけは)果たしたように思われた。本当に感動的だった。

鳴り止まない「BDB」コールを前に、再びメンバーがステージに登場する。そして、さらなるサプライズが。名曲“FLOW(IT'S LIKE THAT)”をトリビュート盤でカバーしたのはBRAHMANであったが、TOSHI-LOW本人がこの曲で登場。ステージ上と袖には、この日出演した盟友たちが次々と集まり、どこかカオティックな状態へと突入していく。そんな手荒い祝福が混在したメモリアル・ライヴ、最後に決着をつけたのは、初期の2曲“BACK DROP BOMB”と“BAD NEWS COME”であった。ミクスチャー、メロコア、ラウド、デジロック、オルタナティヴ……BACK DROP BOMBというバンドが、2010年代の今も日本のロックの最前線に立ち続け、そして意識/無意識を問わず、多くのバンドに影響を与え続けていることを(言葉ではなく)、音そのものによって証明した一夜であった。ちなみに この『Broccasion Live』の大阪公演が、6月27日にBIG CATで行われる。ゲストバンドは、ACIDMAN、LITE、そしてlocofrank。再び伝説を目撃せよ。(徳山弘基)
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