クリープハイプ×千原ジュニア@Zepp Tokyo

クリープハイプ×千原ジュニア@Zepp Tokyo
ステージの閉じた幕の合間から尾崎世界観(Vo・G)と長谷川カオナシ(B)の2人がひょっこり顔を覗かせると、尾崎がアコースティック・ギター、長谷川がヴァイオリンを携える形でオープニング・セッションを繰り広げる。7/23にリリース予定のニュー・シングル『エロ/二十九、三十』初回限定盤に収録の“なぎら”と、一方通常盤に収められる“ベランダの外”の2曲。ヴァイオリンの旋律が味わい深く、長谷川作の“ベランダの外”ではその長谷川から尾崎へとリード・ヴォーカルがリレーするパフォーマンスだ。そこで尾崎が今回の対バン企画「ストリップ歌小屋」について「クリープハイプが好きなお客さんに観て欲しいバンドとやりたいなあと思って……やりたいバンドがいなくて。バンドじゃないんですが、僕が大好きで、すごく尊敬していて……この後、楽しみにしていてください」と告げ、2人で更にもう一曲を届けるとステージを後にした。

クリープハイプ×千原ジュニア@Zepp Tokyo
というわけで、オーディエンスの大喝采に迎えられたこの日のゲスト・アクトは、千原ジュニアである。「どうも、あ、千原疎外感です」と挨拶するジュニアは尾崎から対バンを求められた経緯を説明し、「どうしよう、と思いまして……今回、詩を書きまして。それを朗読しようと。吉と出るか凶と出るか、もし凶と出たら、《夏のせい》ということで」と告げてパフォーマンスへと向かう。これが、素晴らしかった。短編詩が次々に朗読されるのだが、シリアスな内容の作品も多い。素朴な言葉を用いながらフレーズを反復させることでリズム感を生み出し、くすくすと笑い声が漏れ聴こえていた場内も次第に静まり返って聴き入り始める。そしてシュールな笑いに急展開するオチで大爆笑。この静寂から爆笑への一連の流れが大きな抑揚のグルーヴも練り上げていた。過去に『人志松本のすべらない話』などで披露されていたネタも幾つか含まれていたが、詩という形を取ることでまた違った味わいがある。尾崎世界観が自宅に遊びに来て、呑んで語ったりしているうちに尾崎がトイレを流すボタンと間違えて非常ベルを鳴らした、という内容の作品も披露される。個人的には、おばあちゃんを題材にした2作の詩がとりわけ良かった。一方は「異様に爽快感のある笑い」で、もう一方は「大きな哀しみを一瞬だけ忘れさせる閃光のような笑い」。約1時間、メリハリを効かせながらノンストップで繰り広げられる朗読の熱演であった。

クリープハイプ×千原ジュニア@Zepp Tokyo
そして、ユニークな対バンのステージはクリープハイプへと受け渡される。「やります」と尾崎が一言を放ったところで、鮮烈かつタイトな4ピース・アンサンブルが立ち上がり“寝癖”が切り出された。オープニングの2人アコースティック・ライヴも良かったけれど、やはり小泉拓(Dr)が強いビートを打ち鳴らし小川幸慈(G)が刺激的なギター・プレイを繰り出すほど、尾崎のあの今にも泣き出しそうなエモーショナルなハイトーン・ヴォイスは負けじと本領を発揮し始める。4人の音のドライヴ感が右肩上がりとなって走り抜け、「そう言えば、間違えて押したジュニアさんの家の非常ベルの色は、オレンジでした」とフロア一面を跳ね上がらせるのは勿論“オレンジ”だ。スピードに乗ったまま優れたストーリーテラーとして力を発揮する“おやすみ泣き声、さよなら歌姫”。更には「えー、半年間ガマンしてきましたが、ようやく照れもなく歌える季節になって参りました」と届けられる“ラブホテル”でヒリヒリとした夏の感傷を伝え、終盤のブレイク部で演奏を一旦止めると、「では、次の曲をお聴きください(尾崎)」「お願い!(オーディエンス)」「やりますよ! そりゃやりますよ!(尾崎)」といったやりとりで楽曲を再燃させるなど、フロアともがっちり噛み合ったステージになっていった。

クリープハイプ×千原ジュニア@Zepp Tokyo
小川の熱いギターが迸って長谷川の歌声を導く“かえるの唄”も披露すると、「久しぶりにライヴが出来て嬉しいです。本当にジュニアさん、ありがとうございました」と告げてアコギを抱え、“グレーマンのせいにする”の滑らかなファンク・ロック・グルーヴへと向かう尾崎。そして「新曲やります。初回盤と通常盤で中身が違う、セコい売り方をするシングルを聴いてください(笑)」と届けられたのは“エロ”だ。長谷川のベース・プレイが一際かっこいいアップリフティングな曲調が、やさぐれた詩情をヒート・アップさせる。続いて4人のタイトなコンビネーションでギラッギラの爆走を見せる“ホテルのベッドに飛び込んだらもう一瞬で朝だ”の後には「大事な曲を忘れてたな。人を愛する気持ちというのをね……。ヘンな宗教を始めたわけじゃないよ。愛おしくて仕方がない会社があってね!」と放たれる新曲へ。ひたすら上昇し続けるばかりだったライヴ本編ははあっという間にクライマックスを迎え、“HE IS MINE”、“社会の窓”という必殺ナンバー2曲が、追い込みをかけるように轟くのだった。

アンコールでは、「ライヴやってなかったから、取り残されるんじゃないかという不安を感じていて。今日、安心しました。長く聴いて貰いたいと思います。次にやる曲は、自分の歳の曲だけど、歳をとっても聴き続けていて欲しいです」。そんなふうに率直な願いを投げ掛けながら、尾崎はミドル・テンポの、もうひとつのニュー・シングル表題曲“二十九、三十”を歌った。そして最後には、トドメの一撃とばかりに“イノチミジカシコイセヨオトメ”も放たれる。愛憎入り乱れ、シュールもエロスもえげつない現実もすべて抱え込んで「好き」を共有する。開演前はどんな内容になるんだろうと思っていたが、ジャンルを越えた表現者同士の、そしてファンとの、とても濃密で深い信頼関係を確認する対バン企画であった。(小池宏和)

■セットリスト

<千原ジュニア>
※詩の朗読29篇

<クリープハイプ>
01.寝癖
02.愛は
03.手と手
04.オレンジ
05.おやすみ泣き声、さよなら歌姫
06.ラブホテル
07.かえるの唄
08.グレーマンのせいにする
09.明日はどっちだ
10.エロ
11.ホテルのベッドに飛び込んだらもう一瞬で朝だ
12.新曲
13.HE IS MINE
14.社会の窓

(encore)
15.二十九、三十
16.イノチミジカシコイセヨオトメ

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