JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~@大阪BIGCAT

JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~@大阪BIGCAT - all pics by 森好弘all pics by 森好弘
昨年10月2日以来、約1年ぶりの開催となった今年の「JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~」。2010年からはじまったこのイベント。5回目の今年は、昨年までのなんばHatchからBIGCATに会場を移しての開催となった。

開演時間を5分後に控えた会場に、本イベントのオーガナイザーであり『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長でもある山崎洋一郎が登場する。「1回でもこのJAPAN CIRCUITに来たことがある人いますか?」との呼び掛けに対して挙がる手の多さに、このイベントが関西のシーンで確実に独自の地位を築いてきていることがわかる。

この日の出演は、Yasei Collective、avengers in sci-fi、そしてチャットモンチー。「異種格闘技戦」とも言えるラインナップだが、それぞれがそれぞれの音楽観を存分に出し切り、エモーショルな一夜を作り上げてくれた。

JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~@大阪BIGCAT
JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~@大阪BIGCAT
<Yasei Collective>
この日のトップバッターは、Yasei Collective。ドラマー・松下マサナオを中心に、エレクトロ、ジャズ、ロック、ヒップホップなどを融合し、唯一無二の音楽を形成するインストバンドだ。ステージ中央に向かって小さくまとめられたセットにメンバーが登場し演奏がはじまると、会場は一瞬でピリッとした緊張感に包まれる。1曲目は“Training”。松下のドラムがリードする形で、BIG CATを一気に「Yasei Collectiveの空間」へと昇華してゆく。続く2曲目は5周年記念の最新アルバム『so far so good』収録の“Tonight”。音源では在日ファンクホーンズが参加しているこの曲だが、4人でのプレイも非常にポップで開かれた印象だ。音が途切れると、会場の緊張が解けたかのような歓声が上がる。「トップバッターを務めさせていただく、Yasei Collectieveです。今日は楽しんでってください」という短いあいさつに続いて、ピアノの旋律からはじまったのは“Alowari(ショート)”。ボコーダーを介したヴォーカルは、「声」というよりはもはや「楽器」の一部として、彼らの世界観の大きなアクセントになっているのがわかる。シンセベースの不穏な音が会場を飲みこんだ“Something”では、曲のラストに向けてドラムを中心にどんどんエモーショナルになっていく4人の様子に息をのんだ。彼らが音を鳴らせば鳴らすほど、ブラックホールのように空間が増幅していくような気がする。“Chat-Low”からMCを挟み、『2001年宇宙の旅』のフレーズからはじまる“Iiwake(ショート)”へ。轟音が会場を包み込み、最後は「チャットのふたりが『これいいね』って言ってくれたので練習してきました」という1stシングル曲“Sunday(ショート)”でフィニッシュ。無機質な音にめいっぱい感情を乗せ、会場を彼らの世界観で満たす圧巻のアクトだった。

01.Training
02.Tonight
03.Alowari(ショート)
04.Something
05.Chat-Low
06.Iiwake(ショート)
07.Sunday(ショート)

JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~@大阪BIGCAT
JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~@大阪BIGCAT
<avengers in sci-fi>
続く2番手に登場したのは、avengers in sci-fi。スリーピースという最小限の編成でありながら、多数のシンセサイザー/エフェクターを駆使することでスペース・ワールドを形成する彼ら。SEが流れ、一瞬の静寂の後、シンセの旋律とともにメンバーがステージに登場すると会場から大きな歓声が上がる。1曲目は最新アルバム『Unknown Tokyo Blues』より“20XX”。ミドルテンポに乗せるシンセサイザー、そして木幡太郎(G・Vo・Syn)・稲見喜彦(B・Vo・Syn)によるコーラスワークがじわじわと会場を「宇宙空間」へと変えていく。「イェーイェーイェー大阪!」と木幡が叫び、“Superstar”へ。稲見がステージ中央に飛び出すと、フロアも手を上げてそれに応える。続く“Metropolis”では四つ打ちのキックが手拍子を呼び、一体感が増していく。その後は長谷川正法(Dr・Cho)のドラムソロにベース、ギターのスクラッチが重なり、“Tokyo Techtonix”へ。途中「トーキョー」を「オーサカ」に代えて歌うという、この土地だからこそのサービスも見られ、会場は高揚感に包まれた。「イカれた対バンですね、今日は。いい意味でですよ(笑)。僕も今日はお金払ってでも見たいバンドと対バンということで、楽しみにしてきました。最後までよろしく、avengers in sci-fiです」(木幡)というこの日唯一のMCを挟むと、ライヴはいよいよ後半戦に突入だ。疾走感あふれる“Sonic Fireworks”、一面にハンドクラップが巻き起こった“Riders In The Rain”と続けると、流れ星のような打ち込みのサウンドからはじまる代表曲“Yang 2”をドロップ! 《マホロワールド》のサビと共に、フロアが大きく揺れる。最後は木幡がマイクを手に取り前に出ながらパフォーマンスをする姿も見られた“Citizen Song”で締め、アヴェンズとBIG CATとのしばしの「宇宙遊泳」は幕を閉じた。

01.20XX
02.Superstar
03.Metropolis
04.Tokyo Techtonix
05.Sonic Fireworks
06.Riders In The Rain
07.Yang 2
08.Citizen Song

JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~@大阪BIGCAT
JAPAN CIRCUIT vol.53 ~山崎死闘編~@大阪BIGCAT
<チャットモンチー>
最後の登場は、ROCK IN JAPAN FES.2014で1年半ぶりの復活を果たしたチャットモンチー。メンバーが登場すると、「待ってました!」とでも言うかのようにフロアが沸く。それもそのはず。この日は、新生チャットモンチーにとって初めての大阪公演だったからだ。橋本絵莉子、福岡晃子、そしてサポートメンバーの恒岡章(Hi-STANDARD, CUBISMO GRAFICO FIVE)、下村亮介(the chef cooks me)。この4人が今のチャットモンチーだ。待ちに待った大阪での1曲目は“満月に吠えろ”。リリース当時と同じように振り付けを踊りながら歌う絵莉子だが、晃子がギター、シモリョーがベースといった編成はやはり新鮮だ。このように曲ごとに晃子とシモリョーが楽器を持ちかえながら、ライヴは進んでゆく。続いて「私たちは日本のロックバンドです」という女性のアナウンスが流れた後、恒岡による四つ打ちのキックがはじまる。“シャングリラ”だ! いきなりのヒットチューン投下にフロアのボルテージも一気に上昇、サビでは大合唱が巻き起こる。音が止むと、会場のあちこちから「えっちゃーん!」「あっこー!」と大歓声。チャットの復活が、そしてこの大阪でのライヴがいかに待ち望まれていたかが見て取れる。「こんばんは、チャットモンチーです!」という短いMCの後は、10月29日にリリースされた最新盤より“こころとあたま”。BPMの速いロックチューンに、フロアも拳を突き上げて応える。「大阪、わーい! すごい久しぶりです、大阪」と絵莉子が口を開くと、会場中から「お帰りー!」との声。久しぶりの大阪に、久しぶりのチャットモンチーに、互いが互いにこの瞬間を噛み締めているようだ。中盤は“Yes or No or Love”“世界が終わる夜に”“コンビニエンスハネムーン”と表情の違うミドルテンポの曲を立て続けに3曲。メンバー紹介を経て、「1年半お休みさせてもらってたんですけど、こうやってイベントにも呼んでもらって、ありがとうございます!」(晃子)、「すごいかっこいいふたつのバンドとできて、すごい嬉しいんです!」(絵莉子)と語るふたり。そのゆるいテンポ感に場が和む。1年半の休止、4人での再始動という大きな変動がありながら、やはりチャットモンチーはチャットモンチーらしい。後半戦1曲目は、最新盤収録のもう1曲“いたちごっこ”。軽快なリズムとは反して《うたいたいうたが/なくなっていくのが/こわいだけなんだよ》というフレーズが印象的な1曲だ。そしてRIJFでも披露した“親知らず”、初期の名曲“恋愛スピリッツ”で本編は一旦終了――なのだが、待ちに待ったこの日、もちろんアンコールを求める拍手は鳴りやまない。再びTシャツを着替えて登場した彼女たちに割れんばかりの声援が送られる。アンコール1曲目は“ハテナ”。ふたり編成時代の楽曲だが、単に人数が増えたということ以上に一体感という意味において、「バンド感」が増した印象だ。そして、聴きなれたドラムのフレーズからはじまったのはラストナンバー“風吹けば恋”。曲に合わせて観客みんなが一斉にジャンプし、この日一番の盛り上がりを見せた。去り際、絵莉子と晃子の「ありがとう!」「またなー!」の声に、またこの大阪の地で彼女たちの姿を見ることを期待した観客は多かっただろう。

01.満月に吠えろ
02.シャングリラ
03.こころとあたま
04.Yes or No or Love
05.世界が終わる夜に
06.コンビニエンスハネムーン
07.いたちごっこ
08.親知らず
09.恋愛スピリッツ

(encore)
10.ハテナ
11.風吹けば恋

タイプの違う3バンドがそれぞれのスタイルで音楽の楽しみ方を提示し、お客さんひとりひとりがそれぞれの方法でそれを受け止め、笑顔に包まれた5回目の「山崎死闘編」。来年もまたこの大阪の地で、最高のロックが観たい。(安田季那子)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする