BABYMETAL@さいたまスーパーアリーナ

《世はカオスの時代 世界中の人々がメタルの魂を失いかけていた2014年 BABYMETALはキツネ様の教えに従い 再びメタルの魂に火をつけ メタルで世界をひとつにするという使命を背負い 異国の地へと旅立った》というナレーションがステージ左右のヴィジョンの映像とともに厳かなナレーションが響くと、ソールドアウト満場のさいたまスーパーアリーナは雄叫びのような歓声に包まれていく。《幼きメタルの魂は世界中を駆け巡り 幾多の困難を乗り越え 国を越え 言葉の壁を越え 感動を与え 世界はひとつ“THE ONE”になったのであった――》

昨年2月に1stアルバム『BABYMETAL』をリリースして以降、日本武道館での女性最年少記録を更新した武道館2DAYSワンマンなど国内での躍進はもちろんのこと、「BABYMETAL WORLD TOUR 2014」での海外メタル・フェス歴戦やレディー・ガガ北米ツアーのサポート・アクト、11月のロンドン/ニューヨーク公演といった海外での積極的なアクトを経て、アメリカ/イギリスなど各国のiTunes Storeで1位を獲得するなど世界中で圧倒的な支持を集めてきた――という彼女たちの2014年の活動については、いちいちここでダイジェストする必要もないだろう。BABYMETALが体現する「メタルレジスタンス」という物語=フィクションは、この上なくエキサイティングな「現実」となって、メタル/アイドルの枠などもはや遥かに飛び越えた次元で急加速を始めた、ということだ。そして、彼女たちにとって初のさいたまスーパーアリーナ単独公演となるこの日のステージ=「BABYMETAL LEGEND“2015”~新春キツネ祭り~」は、そんな状況を真っ向から受け止めてさらなる「その先」への意志とヴァイタリティを放射するBABYMETALの3人の「今」を、この上なく鮮烈かつダイナミックなアクトとして提示してみせた、最高の爆演だった。

巨大なメタルの王宮の如きセットの前に、和風の朱塗りの橋がステージ中央から左右に大きく渡され、時折舞台上空から吊り下がってくる大きな朱色の橋が、アリーナ中央に設けられたセンター・ステージとメイン・ステージとを結ぶ架け橋として機能する――という大掛かりな舞台装飾の中、ステージ背後のLEDスクリーンに浮かぶ棺の映像とともに、「Scream & Dance:MOAMETAL」「Scream & Dance:YUIMETAL」「Vocal & Dance:SU-METAL」と名前がコールされて着物をまとった3人が登場、「さあ時は来た いざ進まん!」のナレーションとうおおおっという大歓声を受けて、着物を鮮やかに脱ぎ捨てて流れ込んだ1曲目は“メギツネ”! 上手側に大村孝佳(G)&青山英樹(Dr)、下手側にLeda(G)&BOH(B)という陣容の「神バンド」が繰り広げる鉄壁の爆音、そして開幕早々からセンター・ステージでアグレッシヴな歌とダンスを展開するSU-METAL/YUIMETAL/MOAMETALの姿が、実に2万人を動員した広大な会場の距離感をあっさり無効化し、あっという間にたまアリを「THE ONE」にしてみせたのはさすがだ。

そこからメイン・ステージに戻って“いいね!”の重轟音ポップで客席とアリーナの温度をがんがん上げた後、序盤ながら新曲(タイトル未定)を披露。前回の国内ワンマン・ライヴ=幕張メッセ イベントホール(昨年9月)から新曲はリリースされていないため、当然ながら幕張公演と同じくアルバム『BABYMETAL』に収録されているオリジナル曲13曲がセットリストの主軸を成していくことになるのだが、この日ドロップされた2つの新曲はいずれも、今や世界的な注目の的となったBABYMETALの「新たな一歩」としての強度とエネルギーに満ちていたのが印象的だった。序盤に披露された新曲は、“Catch me if you can”のデジタル・ハードコア感とポップ感を遠心分離させてバーストさせた上で再合体させたような、キャッチー&スリリングな魅力を備えていたし、ヘヴィ・メタルという音楽に異次元の輝きとドラマを与えてきたBABYMETALという名のマジックに、改めて強烈な衝撃と感激を感じさせるものだった。メタル・シーンが脈々と受け継いできたストイシズムも、アイドル・ユニットならではのキュートなポップ感も、何一つ失うことなく――いや至上の化学変化でもって無限増幅し続け、未知の狂騒感と祝祭感を振り撒き続けている。ほとんど奇跡だ。

SU-METALソロ曲“紅月-アカツキ-”のドラマチック&エモーショナルな絶唱から、パーカー姿のYUIMETAL&MOAMETALの「BLACK BABYMETAL」編成による“おねだり大作戦”のカラフル・ヘヴィ・ミクスチャーへの展開。一面のOiコールが巻き起こった“Catch me if you can”に続いての“ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト”では「Say!」とSU-METALがシンガロングを煽ってみせたり、“ギミチョコ!!”では「さいたまスーパーアリーナ、スクリーム!!」と大歓声を呼び起こしてみせるなど、オーディエンスとの一体感をアピールしてみせる場面も、この日のアクトではいつにも増して多かったように思う(いつも通り曲間MCこそないが)。もうひとつのSU-METALソロ曲“悪夢の輪舞曲”ではSU-METALを乗せた架け橋が空飛ぶ船のように宙に浮いたり、“ヘドバンギャー! !”では朱塗りの橋を渡って巨大なステージの左右に大きく展開したYUIMETAL&MOAMETALがCO2ガスを噴射してみせたり――といった具合に、この広大な会場ならではの特殊なシチュエーションを、彼女たち自身も全身で謳歌しまくっていることが、その弾けんばかりのダンスとパフォーマンスからもびりびりと伝わってくる。特効の火の玉が舞台を赤々と照らし出す中、ひときわダイナミックに轟いた“イジメ、ダメ、ゼッタイ”に応えて、会場一面にダメジャンプとフォックスサインが巻き起こり、フロアが大きく揺れ、「We are!」「BABYMETAL!」の勝鬨の声のようなコール&レスポンスが、今この瞬間を分かち合う無上の喜びとともに、轟々と噴き上がっていった。

SU-METAL/YUIMETAL/MOAMETAL3人と神バンドが姿を消した後も、アンコールを求めて熱気冷めやらぬ会場に、ほどなく“BABYMETAL DEATH”の荘厳なイントロが流れ、満場のオーディエンスとともにライヴはさらなるクライマックスへと昇り詰めていく。“ド・キ・ド・キ☆モーニング”でさらにでっかくアリーナ&客席を揺らした後、この日の熱演のグランド・フィナーレを飾った楽曲は、昨年のロンドン公演で初披露されていた新曲“Road of Resistance”。UKメロディック・スピード・メタルの雄:ドラゴンフォースのギタリスト=サム・トットマン&ハーマン・リの参加がアナウンスされているこの曲。超速リフと性急なビートが紙一重のバランスを描きながら激走するスリリングなアンサンブルをパワフルに乗りこなし躍動しながら、目映いばかりのメロディを巨大な空間いっぱいに解き放っていくSU-METALの歌声。センター・ステージでBABYMETALのフラッグを掲げるYUIMETAL&MOAMETAL、高々と拳を掲げて場内一丸の大合唱を煽るSU-METAL。途中、歌と神バンドの演奏が止み、照明が場内を照らし出す中、たまアリ狭しと一面のシンガロングが噴き上がったシーンは、決定的瞬間だらけのこの日のアクトの中でも間違いなく最大のクライマックスを観る者すべての胸に刻みつける名場面だった。

“Road of Resistance”のラストに再び「We are!」「BABYMETAL!」のでっかいコール&レスポンスを響かせ、ラストのキメと同時にどでかい花火が炸裂して――終了。そして、暗転した場内でヴィジョンに映し出されたのは、「BABYMETAL WORLD TOUR 2015」「2015年6月 幕張メッセ展示ホール」の文字。さらなる過去最大規模のワンマン・ライヴ開催決定の告知に、驚きと感激に満ちた大きな歓声が湧き起こる……自らの快進撃を勇壮な新曲“Road of Resistance”として高く掲げ、どこまでも進み続けるBABYMETAL。5月にはアメリカ・オハイオ州で開催されるフェス「ROCK ON THE RANGE」にジューダス・プリースト/スリップノット/リンキン・パークらとともに出演することが決定している彼女たちの、いよいよ幕を開けた「メタルレジスタンス第三章」の行方をまだまだ観たい――という期待感が終演と同時に湧き上がってくる、圧巻のステージだった。なお、今回の「BABYMETAL LEGEND“2015”~新春キツネ祭り~」の模様は3月にWOWOWで放送が決定(詳細は http://www.wowow.co.jp/babymetal/ をご参照のこと)しているので、そちらもお楽しみに。(高橋智樹)

■セットリスト

01.メギツネ
02.いいね!
03.タイトル未定(新曲)
04.紅月-アカツキ-
05.おねだり大作戦
06.Catch me if you can
07.ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
08.4の歌
09.悪夢の輪舞曲
10.ヘドバンギャー! !
11.ギミチョコ!!
12.イジメ、ダメ、ゼッタイ

(encore)
13.BABYMETAL DEATH
14.ド・キ・ド・キ☆モーニング
15.Road of Resistance
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