きのこ帝国@赤坂BLITZ

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「年明け東京1本目が今日ということで。ワンマンライヴで赤坂BLITZが人でいっぱいになって、私たちはとても嬉しく思ってます。今日ここに来てくれたみなさん、本当にありがとうございます!」と物静かな口調で語る佐藤(G・Vo)の言葉に、赤坂BLITZソールドアウト満場のオーディエンスから拍手喝采が湧き上がる。昨年10月29日にリリースされた2ndアルバム『フェイクワールドワンダーランド』を携えて大阪(1月15日)・東京(1月21日)にて行われたワンマンライヴ「CITY GIRL CITY BOY」の東京・赤坂BLITZ公演。昨年2月の東名阪ワンマン・ツアー「花束を持ってきみに会いに行こう」以来のワンマン公演ということで、寒風の吹く中にもかかわらずこの日を待ち詫びて集まったオーディエンスの熱気を、痺れるほどに美しいアンサンブルと佐藤の揺るぎないヴォーカルが高揚の果てへと導いた、至上のステージだった。

きのこ帝国@赤坂BLITZ
緊迫感に満ちたイントロダクションの演奏を経て、「こんばんは、きのこ帝国です」という佐藤の挨拶から気合い一閃“海と花束”へ。佐藤&あーちゃん(G)が放つ清冽でダイナミックなギター・アンサンブルと、谷口滋昭(B)&西村"コン"(Dr)のシュアなリズムが絡み合いながら、雄大な風景を生み出していく。『フェイクワールドワンダーランド』で格段に強さと美しさを増した歌を聴かせていた佐藤だが、そのヴォーカリゼーションが楽曲の中にしっかりとした軸を作ることで、オルタナ/ポスト・ロック/シューゲイザーなど多彩な要素を孕んだきのこ帝国のサウンド・キャラクターが過去曲含めより鮮烈さと輝度を増してBLITZの空間を隅々まで照射していく。かつては冷徹なサイケデリアとともに響いていた“WHIRLPOOL”の《いつか殺した感情が/渦になる》というフレーズも、ヴィヴィッドな艶かしさと体温をもって胸に迫ってくる。

暮れ行く年の穏やかな風景を歌った“ラストデイ”からは『フェイクワールドワンダーランド』の楽曲を連射。ヒップホップのトラックを思わせる異色のアプローチで生まれた楽曲“クロノスタシス”のアンニュイな心地好さ。赤黒く渦巻く轟音を貫いて観る者の心と身体をびりびりと震わせる“ヴァージン・スーサイド”の佐藤の絶唱。白昼夢の如き音像でオーディエンスを抱きしめる“あるゆえ”……約1年前に観た渋谷CLUB QUATTROワンマンよりも、4人の歌と音がくっきりとした色彩感をもって響くのは、楽曲そのものが変わったことももちろん、何よりそれらの楽曲を生み出すに至ったメンバーの――とりわけ佐藤の強靭なポジティヴィティだろう。轟音で描き上げる葛藤の繭としてのバンド・サウンドではなく、心を取り囲む繭にひとつでも出口を作り、開放するための音……会場の一体感をアピールしたり、明快なメッセージや人生訓を歌うバンドではないが、この日のきのこ帝国が鳴らしていた音楽には確かな包容力と、目の前のオーディエンスひとりひとりに音楽を届けてともに前へ先へ進もうとする明確な意志が備わっていたし、フロアをゆっくりじっくりと揺らしてみせる訴求力に満ちていた。

きのこ帝国@赤坂BLITZ
中盤以降は最新アルバムから“You outside my window”を交えながら、ミニアルバム『渦になる』(2012年)から“退屈しのぎ”“夜が明けたら”、1stアルバム『eureka』(2013年)から“風化する教室”“国道スロープ”“ユーリカ”“夜鷹”、EP『ロンググッドバイ』(2014年)から“パラノイドパレード”といった楽曲を織り重ねてこれまでの足跡を1曲また1曲と今この瞬間に輝かせつつ、「『フェイクワールドワンダーランド』のキャップを今グッズで売ってるんですけど、大阪でひとりもかぶってる人がいなかったんですよ(笑)。そしたら今日、ステージから何人か見えてて。5人ぐらい……5人は盛りすぎか」(佐藤) 「いや、私6〜7人は見えますね」(あーちゃん) 「近視なんで、あんまり遠くまで見えないですけど。本当に嬉しいです。さすが東京は私たちのホームなんだなと思いました」というMCで笑いを誘ってみせる。胸揺さぶるセンチメントを爽快なギター・サウンドとともに晴れやかに鳴らしてみせたミドル・ナンバー“疾走”、《曖昧なあなたに救われて/未来なんていらないや、って笑うのさ》という言葉までもが豊潤に響いた“明日にはすべてが終わるとして”に続いて、「心をこめて、この曲を歌います」という佐藤の決然とした言葉とともに披露した楽曲は“東京”。昨年の渋谷CLUB QUATTRO公演で未発表の新曲として披露されていたこの曲。《日々あなたの帰りを待つ/ただそれだけでいいと思えた/赤から青に変わる頃に/あなたに出逢えた/この街の名は、東京》……すれ違いも別れも葛藤も渦巻く「東京」という街を舞台に、真っ向から「出会い」を歌う佐藤の渾身の絶唱と、凛とした世界を繰り広げる4人の爆音が、荘厳なまでの凄味と伸びやかさをもって、会場丸ごと震撼させていった。

きのこ帝国@赤坂BLITZ
本編ラストを飾ったのはアルバムのタイトル曲“フェイクワールドワンダーランド”。朗らかなアコギ・アレンジのアルバム・ヴァージョンとは異なり、静かに張りつめたバンド・サウンドで展開されるこの曲が、BLITZの空間へと解き放たれて……本編終了。アンコールでは、先ほどのMCでも触れていた『フェイクワールドワンダーランド』のキャップ(「FWWL」の文字が前面に大きくあしらわれている)をかぶり、4人で肩を組みながら登場。本編を最高の形で終えた充実感が、佐藤の顔に満面の笑みとなって広がっている。この日のラスト・ナンバーとして鳴り渡ったのは、アルバム『フェイクワールドワンダーランド』の最終曲“Telepathy/Overdrive”だった。tricot/きのこ帝国/赤い公園による同名イベントにちなんだこの曲の、開放感に満ちたアグレッシヴな歌とサウンドが、珠玉の一夜の終わりを眩しく彩っていた。

アンコールの演奏前に、「春頃まで、制作活動に集中するために、ライヴを3ヵ月ほど休みます。春に、みなさんに新曲を届けられるように、頑張って作曲してまいりますので。どうかお待ちください。よろしくお願いします!」と佐藤はさらなる意欲を語っていた。大きな覚醒と進化の季節を経たきのこ帝国が描く「その先」の風景が、今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)


■セットリスト

01.intro
02.海と花束
03.WHIRLPOOL
04.ラストデイ
05.クロノスタシス
06.ヴァージン・スーサイド
07.あるゆえ
08.風化する教室
09.You outside my window
10.国道スロープ
11.パラノイドパレード
12.ユーリカ
13.夜鷹
14.退屈しのぎ
15.夜が明けたら
16.疾走
17.明日にはすべてが終わるとして
18.東京
19.フェイクワールドワンダーランド

(Encore)
20.Telepathy/Overdrive

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