コヒード・アンド・カンブリア、じつに5年ぶりの来日である。2005年のフジ・ロックに出演する予定だったのだが、ベーシスト・マイクがドラッグによる逮捕歴のために入国を拒否され、バンドの来日自体中止になってしまった。だからファンにとっては3年越しの願いが結実したわけである。
エモ/パンクのキャッチーなメロディ、ヘヴィ・メタルの切っ先鋭いサウンド、そしてプログレッシヴ・ロックの壮大な構造美。そのすべてを頭から呑みこんで、爆音とともに吐き出すのがコヒード・アンド・カンブリアのロックである。これまで出ている4枚のアルバムはコヒードとカンブリアという夫婦を軸にした一大ストーリーを描いていて、昨年10月にリリースされた最新作『ノー・ワールド・フォー・トゥモロー』はその第5章にして最終章にあたる。なぜアルバム4枚なのに第「5」章かというと、次にリリースされる5枚目のアルバムで時間軸を遡り、物語の出発点が描かれるからだという。いまどき、こんなことを考えるバンドはいない。
会場となった代官山UNITは、彼らのサウンドのスケールからいえば小さすぎるくらいだが、それにしても、圧倒的な迫力である。ギター/ヴォーカル・クラウディオの何か間違ったんじゃないかというようなヘアスタイルもインパクト大だが、それ以上に音のパワーが圧倒的なのだ。長大な曲でも、そのパワーが弱まることなくダイレクトにこちらの耳に突っ込んでくる。セットの最初と最後にビッグ・スケールの楽曲を置き、ライヴ中盤に特にポップなパンク寄りの楽曲をもってくる構成もうまい。MCもほとんどない、きわめてストイックなライヴだったが、それをここまでドラマティックに魅せてしまうのは、このバンドの本領といったところだろう。マイクはやはり来日できず、ベーシストはサポート・メンバーだったが(リハビリ・センターで更生したという話だったのだが……)、それをまったく感じさせることのない、じつにパワフルなパフォーマンスだった。次はぜひフル・メンバーで!(小川智宏)
コヒード・アンド・カンブリア @ 代官山UNIT
2008.03.26