「スペースシャワー列伝15周年記念公演 JAPAN TOUR 2016」@赤坂BLITZ

all pics by 古渓一道
2001年にスタートして以来、数百を超える数のアーティストが熱演を繰り広げてきた「スペースシャワー列伝」。その15周年を記念した全国ツアー「スペースシャワー列伝15周年記念公演 JAPAN TOUR 2016 supported by uP!!!」のファイナル公演が、東京・赤坂BLITZで開催された。出演者は、全国8都市をともにまわってきたフレデリック、夜の本気ダンス、My Hair is Bad、雨のパレードの4組に加え、東京公演のみ参加のTRY TRY NIICHE。これまでも多くのスターが巣立っていった当イベントならではの、瑞々しい才能が弾けまくった夜だった。

TRY TRY NIICHE
TRY TRY NIICHE
TRY TRY NIICHE
TRY TRY NIICHE
TRY TRY NIICHE
TRY TRY NIICHE
オープニングアクトはTRY TRY NIICHE。繊細なピアノの音色を軸に、ジャズ/ロック/ポップスなどをクロスオーバーさせたサウンドは、昨年7月に活動を開始したばかりのバンドとは思えないほど端正だ。柔剛を自在に操るヲクヤマ(Vo・Piano)のヴォーカルも、色彩豊かな音世界によく映えている。今夏のCDデビューに向けて、大きな期待が膨らむステージだった。

雨のパレード
雨のパレード
雨のパレード
雨のパレード
雨のパレード
雨のパレード
雨のパレード
雨のパレード
冒頭から繊細な電子音を鳴らして、赤坂BLITZを宇宙空間へと誘った雨のパレード。水面にたゆたうように徐々に熱を帯びていく音像に、眠っていた細胞という細胞が呼び覚まされていくような感覚に陥る。心の深淵を撫でるような柔らかな歌声を響かせ、音に任せて身体を揺らす福永浩平(Vo)は実に気持ちよさそう。そんな浮遊感あふれる音世界とは裏腹に、「3月2日にメジャーデビューしました。これからの音楽シーンを塗り替えて、新世代を引っ張っていくようなアルバムを作れたと思います」という福永の強気な発言からは、このバンドの貪欲な闘争心が垣間見える。“Tokyo”では機材トラブルにより演奏を中断するシーンもあったけど、ラスト“new place”で至上のダンス空間を築くまで、フェティッシュな構築美が貫かれた鮮烈なステージだった。

My Hair is Bad
My Hair is Bad
My Hair is Bad
My Hair is Bad
My Hair is Bad
My Hair is Bad
My Hair is Bad
My Hair is Bad
一転して正面突破のギターロックをブチかましてみせたのは、新潟県上越市の3ピース・My Hair is Bad。前のめりでハードエッジな音塊に乗せて、恋心とコンプレックスと激情が入り混じる青春の叫びを勢いよく放っていく。何と言っても目を見張るのは、フロントマン・椎木知仁(Vo・G)の鬼気迫るパフォーマンスだ。曲中・MC問わず全身全霊をかけるような声で膨大な言葉を浴びせかけ、レスポールをかき鳴らしながら衝動を剥き出しにしていく姿は、新世代バンドとは思えないほど泥臭く、それゆえに観る者の心に深い爪跡を残していく。中でも、ラスト1分間に超速BPMでかっ飛ばした“クリサンセマム”のインパクトは強烈。本ツアーを通して確実に人気と知名度を獲得した彼らだが、今後ますます台風の目になりそうな予感がする。

夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
続く夜の本気ダンスは、冒頭から必殺チューンの“By My Side”“WHERE?”を連打。満場のフロアを激しくかき回し、場内の温度をみるみるうちに上昇させていく。「遂に東京に行き着きましたー!」という第一声から雨のパレード“Tokyo”を歌って会場を笑わせたのは、MCモンスター・鈴鹿秋斗(Dr)。3月9日に待望のメジャーデビューを果たすというわけで、「(1週間メジャー・デビューが早い)雨のパレード先輩が『新世代を引っ張っていく』と言ってたけど、新しい時代を引っ張っていくのは夜の本気ダンスだと思ってる!」とライバル心を露わにして熱い歓声を呼び起こし、新曲“Crazy Dancer”の狂騒感へと鮮やかに繋げてみせるのであった。ラスト“戦争”でフロアが一体となった大ジャンプを誘うまで、一瞬たりともテンションの落ちることのなかったアクト。現在の彼らの飛ぶ鳥を落とすような勢いを証明するような、圧勝感に満ちあふれた快演だった。

フレデリック
フレデリック
フレデリック
フレデリック
フレデリック
フレデリック
フレデリック
フレデリック
そして、いよいよトリのフレデリックが登場。冒頭の“オワラセナイト”から、和風情緒あふれるメロディと四つ打ちビートが炸裂し、会場は摩訶不思議なダンスワールドへと変貌していく。小気味良い歌詞とループするメロディは、癖になる気持ちよさ。三原健司(Vo・G)&三原康司(B・Cho)ツインズの息の合ったコーラスワークも冴えわたり、オーディエンスのダンス熱に火を点けていく。“うわさのケムリの女の子”ではスモークが立ち上り、フレデリックならではの幻惑的な音世界が会場を支配する。そんな光景を前にして、「最初は列伝ツアーで勝ちたいと思ってたけど、今は違う。何この楽しさ? みんなで幸せのどつきあいしようや!」と本日の出演バンドの誰よりも無邪気に喜びを爆発させる康司の姿が印象的だった。“オドループ”で絶頂に達した後には、健司も「俺たちは列伝でナンバーワン獲れんかったかもしれん。でも誰よりも幸せやった!」と告げて本編ラストの“オンリーワンダー”へ。アンコールで披露された“ハローグッバイ”も含め、闘うための音楽ではなく、みんなと繋がり幸せを分かち合うための音楽を鳴らしていこうとするフレデリックの意志が、力強く提示された感動的なステージだった。

最後は、全国をともにまわった4組で斉藤和義の“歩いて帰ろう”“オドループ”をセッション。ツアーを振り返った健司が感極まって目を潤ませるシーンもありつつ、ロックシーンの未来を切り拓く才能がせめぎ合った4時間は、ピースフルに締め括られた。(齋藤美穂)

●セットリスト

■TRY TRY NIICHE
01. 水面の果て
02. さよならエイミー
03. Cガール
04. initiation

■雨のパレード
01. epoch
02. 揺らぎ巡る君の中のそれ
03. Tokyo
04. encore
05. new place

■My Hair is Bad
01. 真赤
02. アフターアワー
03. 元彼氏として
04. マイハッピーウェディング
05. フロムナウオン
06. 優しさの行方
07. クリサンセマム

■夜の本気ダンス
01. By My Side
02. WHERE?
03. Crazy Dancer
04. fuckin' so tired
05. 戦争

■フレデリック
01. オワラセナイト
02. 愛の迷惑
03. プロレスごっこのフラフープ
04. うわさのケムリの女の子
05. オドループ
06. オンリーワンダー
(encore)
07. ハローグッバイ

■アンコールセッション
01. 歩いて帰ろう(斉藤和義カバー)
02. オドループ