ということは。ニュー・シングル『Little Miss Weekend』の発売日でもあるツアー初日の今日は、4人テナーの正真正銘初ライブ! 19:08、向かって右からホリエ、大山、ひなっち、そして後方中央やや左寄りにシンペイ(大山のアンプがセットされているので、若干左にずれているのだ)がステージ上に勢揃いするやいなや、700人キャパのUNITに信じられないくらいの歓声と熱気が渦巻き始める。
ミニアルバム『Immortal』で3ピースとしての表現を極めきったテナーにとって、4人バンドになるということは、単に「1人ギタリストを加える」という話ではない。3面揃った状態のルービック・キューブを動かせば、美しい正六面体が揃うかもしれない反面、ぐちゃぐちゃで支離滅裂な状態になってしまう危険性も孕んでいる。ルービック・キューブはたとえが古いかもしれないが(知らない人はググるか、お父さんお母さんに訊いてみてください)、タイト&シンプルな構造でこの上なく複雑な響きを実現しているテナーのアンサンブルは、やり方を間違えればその絶妙なバランスを失ってしまうことにもなりかねない。
大山自身、加入の話が持ち上がった際に「テナーは3ピースを極めるんじゃないの?」と驚いたというのも無理はないし、最初の数曲がえらく緊張して見えたのは、単に久しぶりのツアーだからというだけの話ではなかったようだ……が。そんな手探りなモードで始まった演奏の中でも、4人のサウンドが実に自然で、豊かで、心地好く脳裏に響いてくるのがわかる。そして、1曲ごとにホリエ/大山/ひなっち/シンペイの呼吸がでっかいグルーヴを獲得していくのがわかる。
熱さと清冽さを併せ持つホリエのSG(一部ストラト)の音色に対し、フェンダー・ジャズマスター特有のギャリーンとした音で、3人時代の楽曲に次々と新たな輝きを与えていく大山純のギター・プレイ。たとえば“COLD SLEEP”ではホリエのコード・ストロークに大山が別のソロ・フレーズを重ねたり、“Little Miss Weekend”では疾走ビートの上で2つのギターの和音をぶつけてカオティックな響きを演出したり、かと思うと曲によってはホリエ&大山がユニゾンで爆音を鳴らしてみせたり、“SIX DAY WONDER”のようにホリエがピアノを披露する曲に、大山のアルペジオ・ギターが壮大な広がりと厚みを与えたり……と変幻自在なフォーメーションで、超満員のオーディエンスに挑みかかってくる。
「今日は初日っていうか……練習! 『Little Miss Weekend』のリリース・パーティー!」とホリエは冗談めかしたMCをかましていたが、この日のUNITにはどこかシークレット・ライブのような雰囲気があったのは確かだ。4人テナーとオーディエンスが熱く共犯関係を結びながら、ストレイテナーの音楽世界を再定義していくような、不思議な空気感。しかし、たとえば激しく展開しながら『Immortal』の「その先」を切り開くような新曲といい、たとえば新たなアレンジで生まれ変わった“TRAVELING GARGOYLE”といい、テナーというバンドがさらに無限の可能性を手にしたことだけは、この場にいた誰もが確信したに違いない――そんなアクトだった。ツアーを回って鍛え上がった4人テナーは、ファイナルの新木場STUDIO COAST、あるいは年末の幕張メッセなど大きい会場ではさらに壮大なサウンドスケープを見せつけてくれるに違いない。それが今から楽しみだ。(高橋智樹)