さくらホールの時は、一部:『東京』以外の解散前の曲たち、二部:『東京』を曲順どおりに再現、プラスアンコール2回、という構成だったそうだが、この日は、本編:『東京』再現、一回目のアンコール:解散以前の9曲、プラス二度のアンコールでさらに2曲、という内容だった。
ここ数年はメンバー3人(ドラマー丸山晴茂が療養で休んでからはサポートの初恋の嵐の鈴木正敏が加わった3人)でライブを行っていたサニーデイだが、この“東京再訪”の2本は、ギター新井仁とキーボード高野勲が加わった、かつての黄金メンバーでプレイされた。
6月17日の時は、曽我部恵一、最後にギターぶん投げてステージを下りてそのまま帰ってしまった、終演後すぐあいさつに行ったけどもういなかった、と、知人にきいた。ちなみにその翌日18日の「YATSUI FESTIVAL」でのステージでは、曽我部だけでなく田中貴もベースを投げてステージを去ったそうだ。
なので、何か今荒れ気味なのかしらサニーデイ、とか思っていたのだが、そんなことはなかった。曽我部、本編中に新井や田中と笑顔を交わした瞬間も見てとれたし、6月17日はなかったというMCも、アンコールで普通にはさまれた。
で、曽我部、アンコールの時のMCで、「20年前、『若者たち』と『東京』を出して、ここでライブやったんですよ。あれ初ワンマンだよね? その時、1曲目で、途中で止まったという(笑)」と言った。それに田中が「で、今日も止まったという」と言葉を足し、フロアが笑いに包まれた。
僕はその20年前のライブも観ているが(止まったの“いつもだれかに”でした)、「あ、それ、MCで言うんだ? で、笑っていいんだ?」と、ちょっと安心した、そこで。
曽我部が不機嫌じゃなくても、笑顔を見せる瞬間があっても、全体にそういう空気だった、と僕は感じた。再結成以降のアルバム2枚&もうすぐ出るというニューアルバムの曲はなし、過去の名曲たちだけが並ぶセットリストであって、超満員のお客さんたちみんな「フルコーラス覚えていて歌えます」みたいな風情でもあって、そもそも『東京』の再現ライブで場所は20年前に初ワンマンをやった渋谷クラブクアトロですよ、というのもあるんだから、もっとこう、観ながら聴きながらオーディエンスみんな20年前のサニーデイと20年前の自分に思いを馳せるみたいな、そんな心地よくノスタルジックな空間になりそうなもんなのに、そんな感じではなかった。彼らが20代の頃に作った、昔の曲ばかりなのに、現在進行形のヒリヒリ感が、終始ステージから放たれていた。
そうか。20代のヒリヒリよりも、40代のヒリヒリの方が手に負えないよな、業が深いよな、いかんともしがたいよな。というようなことを、曽我部&田中よりちょっと歳上だけど、同じように当時20代で今40代の身としては、そして当時も今もサニーデイを追い続けている身としては、思ったりした。
8月3日リリースのニューアルバムと、それをたずさえて回る10月〜12月の全13本の全国ツアーが、よりいっそう楽しみになった。(兵庫慎司)
1.東京
2.恋におちたら
3.会いたかった少女
4.もういいかい
5.あじさい
6.青春狂走曲
7.恋色の街角
8.真赤な太陽
9.いろんなことに夢中になったり飽きたり
10.きれいだね
11.ダーリン
12.コーヒーと恋愛
encore 1
1.いつもだれかに
2.空飛ぶサーカス
3.スロウライダー
4.今日を生きよう
5.江ノ島
6.御機嫌いかが?
7.さよなら!街の恋人たち
8.NOW
9.胸いっぱい
encore 2
夢見るようなくちびるに
encore 3
サマー・ソルジャー