ウィズイン・テンプテーション @ SHIBUYA-AX

紅一点のヴォーカリスト、シャロン・デン・アデルの存在感もあって、昨年のLOUD PARKでは初来日ながら大反響を獲得したウィズイン・テンプテーション。今回が単独としては初の日本公演となるわけだが、実はキャリアの長いバンドだけあって、オープニングからその世界観は確立されている。

おごそかに黒い幕が開くと、そこに現れるのは中世の都市がシルエットで描かれた巨大なバックドロップ。そして、更にその上に映し出された映像によって都市の上空に雷鳴が走るという演出からして、まさにゴシック・メタル。しかし、このバンドの魅力というのはそこにあって、クラシックや民族音楽を引用することによって、先入観に囚われずオールド・スクールなヘヴィ・メタル・サウンドに取り組んでいて、それを衒いなく見せることに成功しているのだ。ステージ上にはギター・アンプやPAスピーカーが一つもおかれていなかったのだが、そうした佇まい一つをとってもヘビメタの先入観からはかけ離れている。しかし、このバンドの表現を2007年のものにしているのは、なんといってもヴォーカルのシャロン・デン・アデルの歌だろう。肩の開いたコルセット風のドレスに膝までの茶色のブーツという出で立ちだった彼女は、4枚のアルバムからの代表曲を熱唱。客席を煽り、ステージ上を所狭しと動き回りながら、繊細なファルセットまできっちり聴かせる。気付けば、1時間50分。アンコール最後の“Ice Queen”まで完璧な演奏も含め圧巻のステージだった。AXが既に満員だったが、このバンドはもっともっと大きくなるんじゃないかな。(古川琢也)