では、なぜこの賞式典を観たいかというと、一部の受賞アーティストの特別なパフォーマンスが観られることもあるが、それ以外に「クラシック・ロック」という形容にふさわしいアーティストが勢揃いした「ガラ・パフォーマンス」が後半に用意されているからだ。ガラとはクラシック系音楽のフェスティヴァルによく使われる呼称で、特にオペラやバレエのスターが勢揃いして各パフォーマーが十八番の演技を競演するもの。クラシック・ロック・アウォーズの式典の後半では、並み居る「クラシック・ロック」ミュージシャンらによるスーパー・セッションが行われるのが恒例になっていて、クラシック音楽がポピュラーなものとして定着しているイギリスではこれが「ガラ」と称されている。それを今回は日本で観られるというわけなのだ。
今年の司会は歌舞伎役者・尾上松也とメガデスのデイヴ・ムステイン。本人としてはばりばりに低姿勢なつもりなのに、ほとんど無愛想にしか映らないデイヴのMCはとてもおもしろかった。前半では2部門を除く賞がすべて発表され、ショーマンシップの素晴らしさを称える「ザ・ショーメン賞」にはチープ・トリック、「クラシック・ソングライター賞」にはリッチー・サンボラ、「アジア・アイコン賞」にはYOSHIKIが輝き、それぞれにスペシャルなパフォーマンスが行われた。
チープ・トリックは、「帰って来たぜ、武道館!」というリック・ニールセン(G)らしいMCで会場を和ませた後、往年の名曲を披露するパフォーマンスとなったが、最新シングル"When I Wake Up Tomorrow"があらためて素晴らしすぎたので感激した。
序盤はデフ・レパードのフィル・コリン(G)が最優秀作品受賞者として大活躍する展開となった。スコーピオンズのルドルフ・シェンカー(G)との共演や、ディープ・パープル"Mistreated"、デフ・レパード"Hysteria"、そしてジミー・ペイジへのトリビュートとしてレッド・ツェッペリンの"Dancing Days"を披露、司会のデイヴ・ムステイン(G)をセッションに引きずり込んだりする一幕もあった。
ジミーは、60年前に初めて知り合ったジェフの驚異のテクニックと唯一無二の境地を称賛する一方で、ジェフは受賞後、「自分の姉に感謝する」と述べてから、「12歳の時、その姉にジミーを紹介されたことで自分の人生はすべて変わったからだ」と説明し、さらに「ただし悪い方だけど」と断ってから「冗談だよ」と付け足した。
そのままこの日のハウス・バンドともども、ジェフは"Beck’s Bolero"を披露し、さらにフィル・コリンのヴォーカルによる"Superstition"、ジェフ・キースのヴォーカルによる"Going Down"と超絶的な演奏を叩きつけていくことになった。
4時間強のちょっと長丁場なイヴェントだったけれども、基本的に式典であることを考えればパフォーマンスは期待以上のものだったし、特に終盤のヴォルテージはしびれるものだった。ジミー・ペイジとジェフ・ベックの共演が日本で初めて観れる、という誰もが期待していた夢がかなわなかったことは残念だが、ジェフの名演はただひたすらにすごいものだったというのはいうまでもない。(高見展)