CLASSIC ROCK AWARDS 2016 @ 両国国技館

All pics by Michiko Yamamoto/TeamRock.com
イギリスのクラシック・ロック誌が主催するクラシック・ロック・ロール・オブ・オナーズ賞、いわゆるクラシック・ロック・アウォーズ授賞式だが、なんといっても今年注目すべきところは会場が日本の両国国技館という、2005年に開始して以来、初のアジア開催となったこと。2013年まではロンドンのラウンドハウスで行われていたが、2014年と2015年はロサンゼルス開催となり、その模様はラジオ局で報じられた。そして今回、式典が一般公開されるという画期的な試みとなった。

では、なぜこの賞式典を観たいかというと、一部の受賞アーティストの特別なパフォーマンスが観られることもあるが、それ以外に「クラシック・ロック」という形容にふさわしいアーティストが勢揃いした「ガラ・パフォーマンス」が後半に用意されているからだ。ガラとはクラシック系音楽のフェスティヴァルによく使われる呼称で、特にオペラやバレエのスターが勢揃いして各パフォーマーが十八番の演技を競演するもの。クラシック・ロック・アウォーズの式典の後半では、並み居る「クラシック・ロック」ミュージシャンらによるスーパー・セッションが行われるのが恒例になっていて、クラシック音楽がポピュラーなものとして定着しているイギリスではこれが「ガラ」と称されている。それを今回は日本で観られるというわけなのだ。

今年の司会は歌舞伎役者・尾上松也とメガデスのデイヴ・ムステイン。本人としてはばりばりに低姿勢なつもりなのに、ほとんど無愛想にしか映らないデイヴのMCはとてもおもしろかった。前半では2部門を除く賞がすべて発表され、ショーマンシップの素晴らしさを称える「ザ・ショーメン賞」にはチープ・トリック、「クラシック・ソングライター賞」にはリッチー・サンボラ、「アジア・アイコン賞」にはYOSHIKIが輝き、それぞれにスペシャルなパフォーマンスが行われた。

チープ・トリックは、「帰って来たぜ、武道館!」というリック・ニールセン(G)らしいMCで会場を和ませた後、往年の名曲を披露するパフォーマンスとなったが、最新シングル"When I Wake Up Tomorrow"があらためて素晴らしすぎたので感激した。

東京と大阪で単独ライブも敢行したリッチー・サンボラは、オリアンティとブルース・ハーピストを従えたアコースティック・セットで、ボン・ジョヴィのヒット曲の数々とソロ曲を演奏。そして、ヴァイオリン隊を従えたYOSHIKIは、プリンス、デヴィッド・ボウイ、ジョージ・マーティンなど今年亡くなったアーティストへの悼みを表明し、「この賞をX JAPAN、HIDEとTAIJIに捧げます」と語って、デヴィッド・ボウイの"Space Oddity"、とX JAPANの“ART OF LIFE”をピアノとカルテットで披露した。

後半に入ってからは「アルバム・オブ・ザ・イヤー賞」の発表となり、プレゼンターとしてデイヴ・ムステインに紹介されて登場した音楽評論家の伊藤政則が、デフ・レパードのアルバム『デフ・レパード』の授賞を発表した。この発表を機にスーパー・セッションへと雪崩れ込んだが、基本メンバーはザ・ストーン・テンプル・パイロッツのロブ(ロバート、B)&ディーン(G)のディレオ兄弟、ハリウッド・ヴァンパイアーズのトミー・ヘンリクセン(G)、コーンのレイ・ルジアー(Dr)が軸となり、ここに入れ替わりさまざまな顔触れが加わるという展開となった。

序盤はデフ・レパードのフィル・コリン(G)が最優秀作品受賞者として大活躍する展開となった。スコーピオンズのルドルフ・シェンカー(G)との共演や、ディープ・パープル"Mistreated"、デフ・レパード"Hysteria"、そしてジミー・ペイジへのトリビュートとしてレッド・ツェッペリンの"Dancing Days"を披露、司会のデイヴ・ムステイン(G)をセッションに引きずり込んだりする一幕もあった。

その後、ジョニー・デップ(G)が登場して、ザ・ストーン・テンプル・パイロッツの"Sex Type Thing"の演奏に雪崩れ込むと一気に演奏のノリのエッジーさが爆発。ハリウッド・ヴァンパイアーズのアルバムに収録された“School's Out/Another Brick In The Wall Part 2”を経て、ジョニーの紹介でジョー・ペリー(G)が登場し、さらに極まる展開となった。ジョーの参加以降は、テスラのジェフ・キースがヴォーカルを務める"Sweet Emotion"も披露され、さらにチープ・トリックのリック・ニールセンとロビン・ザンダー(Vo)が加わってのビートルズの"Come Together"のカバーとなったが、その後の演奏ではジョニー・デップとリック・ニールセンがやたらとじゃれ合っていてとてもかわいかった。

セッションはその後のメイン・アクトを予告するように"Train Kept a-Rollin’"でいったん締めとなり、「ジ・アイコン賞」の発表のためデイヴ・ムステインがプレゼンターのジミー・ペイジを紹介。ジミーがジェフ・ベックにこの日の最高栄誉となる「ジ・アイコン賞」を授与することになった。

ジミーは、60年前に初めて知り合ったジェフの驚異のテクニックと唯一無二の境地を称賛する一方で、ジェフは受賞後、「自分の姉に感謝する」と述べてから、「12歳の時、その姉にジミーを紹介されたことで自分の人生はすべて変わったからだ」と説明し、さらに「ただし悪い方だけど」と断ってから「冗談だよ」と付け足した。

そのままこの日のハウス・バンドともども、ジェフは"Beck’s Bolero"を披露し、さらにフィル・コリンのヴォーカルによる"Superstition"、ジェフ・キースのヴォーカルによる"Going Down"と超絶的な演奏を叩きつけていくことになった。

4時間強のちょっと長丁場なイヴェントだったけれども、基本的に式典であることを考えればパフォーマンスは期待以上のものだったし、特に終盤のヴォルテージはしびれるものだった。ジミー・ペイジとジェフ・ベックの共演が日本で初めて観れる、という誰もが期待していた夢がかなわなかったことは残念だが、ジェフの名演はただひたすらにすごいものだったというのはいうまでもない。(高見展)