ORANGE RANGE @ 日本武道館

ORANGE RANGE @ 日本武道館

ORANGE RANGE @ 日本武道館
9月頭からこの12月まで行われてきたアルバム・ツアーの、日本武道館と大阪城ホールで2公演づつ行われる追加公演の武道館2日目。ツアー全体40公演の総動員数は15万人にものぼり、この日の武道館(単独としてはこの2日間が初)も、平日にもかかわらず7,500人ものオーディエンスが詰めかけていた。あと、やはり女子率高し。なのでメンバー登場と共にあがる嬌声のピッチもめちゃくちゃ高い。なんとも華やかな雰囲気である。今回のステージの構成は、後半に「夏メドレー」と呼ばれるアッパー・チューン連打とメロウ&メロディアスに聴かせるクライマックスが配置してあって、当然ヒット・ナンバーが目白押しで盛り上がることこの上ないのだが、個人的に興味深く楽しめたのは『PANIC FANCY』の楽曲群が数多く並べられていた前半戦であった。特に、幻想的でアシッドなポップ・サウンドとダイナミックなロックが交錯し転がってゆく“現実逃避”や、サイケ・フォークなイントロから羊の鳴き声?まで挿入される“Beat it”といった、リスナーに対して実に挑戦的な曲が今のレンジ・ワールドの玄関口のように前半に置かれていることに、彼らの表現力の向上と自信を汲み取ることが出来た。こんなことをやってしっかりオーディエンスを巻き込み嬌声を浴びているのだから凄い。『PANIC FANCY』の実験性が、ライブ感の生のうねりの中に、そして開かれたポピュラリティの中に、ちゃんと落とし込まれているのである。別に武道館だから思ったわけじゃないけど、これだけ実験的なロック・サウンドを鳴らして女子の嬌声を浴びているなんて、まるでビートルズだ。もちろん僕はビートルズを生で観ることなど出来てはいないが、あと、ビートルズは実験的なロック・サウンドに取り組みはじめてからライブ活動をやめてしまったのだが、そんなことをふと思ってしまった。『PANIC FANCY』というアルバムを聴いて、それをライブのダイナミズムの中でも味わうことができるというのは素晴らしい体験だと思う。「ポップ」の価値観そのものを揺るがしてゆくことこそが、ロック本来の機能でもあるのだから。更に欲を言えば“5”も、この環境の中でどう表現されるか聴いてみたかったな。好きなんだ、あの曲。歌そのものに大勢のオーディエンスが直接的に関わることができる、インタラクティブな楽曲構造。そして、メンバーが余裕さえ感じられるような無理のない姿勢でステージに臨んでいたことが、会場の盛り上がりを根底で支えていた。MCを交えながら展開を切り盛りしてゆくHIROKIとRYOは実に頼もしく、“GOD69”や“キリキリマイ”でのNAOTOのつんのめるようにエモーショナルなギター・プレイは鬼気迫るほどだった。そしてあらゆるパートの一音一音に四肢でビクンビクンと反応(「踊る」というよりそういう感じだった)しつつ、大きな目でオーディエンスを見据えて歌うYAMATO。音楽表現への高い集中力を保ちながら、それを個人的な閉じたものにせずに人々と分かち合うことが出来ている。見事なバランスで成立したステージだ。まだ大阪公演が残っているので詳しいセット・リストは書けず、また諸々のド派手で楽しいステージ特効もネタバレになってしまうので触れないが、この12月11日はベーシスト・YOHの25歳の誕生日だった。本編終了後、満場のオーディエンスがアンコールの催促の代わりに「happy birthday, dear YOHちゃーん♪」と自然に歌い出した光景も良かったのだが、一人でステージ上に現れたYOHが礼を述べたあと、彼が続けた言葉が更に素晴らしかったので、最後に書きとめておきたい。「子供も生まれたんですけど、実は今年に入って、親父が亡くなったんですよ。親が亡くなると考えることも多くて、このままじゃダメだな、って。きれいな世界を次の世代に残さなきゃ、って。僕たちが、頑張りましょう」。緊張して若干しどろもどろだった上にシンプルな言葉ではあったけれど、それ以上に大切な言葉があるのか、マジでビートルズか!と思うぐらい、感動的な一幕であった。(小池宏和)
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