aiko/Zepp Tokyo

aiko/Zepp Tokyo - pic by 岡田貴之(9月7日公演)pic by 岡田貴之(9月7日公演)
●セットリスト
M1.夢見る隙間
M2.milk
M3.相合傘
M4.power of love
M5.なんて一日
M6.恋愛
M7.プラマイ
M8.ドライヤー
M9.アンドロメダ
M10.えりあし
M11.雨踏むオーバーオール
M12.恋のスーパーボール
M13.明日の歌
M14.beat
M15.小鳥公園
M16.舌打ち
M17.赤いランプ
M18.be master of life

<アンコール>
M19.恋をしたのは
M20.Loveletter
M21.キラキラ

<ダブルアンコール>
M22.エナジー
M23.mix juice
M24.鏡

aiko/Zepp Tokyo - pic by 岡田貴之(9月7日公演)pic by 岡田貴之(9月7日公演)
ダブルアンコールでaikoが今回のツアーの途中に足を骨折していたという驚きの事実を明かしたとき、会場中はどよめきに包まれた。「8月12日(のライブ中)に骨折していたんです」と、続けたaiko。そこからの公演は足に全治3ヶ月の怪我を負ったままステージに立っていたと言う。「でもライブをやめようという気持ちはなかった。ライブを休んだときの精神状態のほうがダメになるから。本当にみなさんのサポートのおかげでここまでバレずに来ました」。この日も小さな身体をフルに使って、ステージ狭しと歌いながら飛んだり跳ねたりするaikoの激しいパフォーマンスを見て、その事実に気づく人はいなかったと思う。aikoは「みんなが驚いたってことはバレてなかったんやね、良かった」とも言っていた。この事実をツアー最終日のアンコールまで明かさなかったのは、おそらく来てくれるお客さんに心配をかけたくなかったからだろう。同時に怪我を理由に免罪符を得ることをaiko自身が許さなかったのだと思う。約20年にわたり音楽シーンのトップを走り続けるシンガーのプロ根性の凄まじさ、いや、そんな言葉だけで片づけることのできないaikoの歌にかける執念が、そのライブ最終盤の熱狂にさらに拍車を生んだことは言うまでもない。

約4ヶ月半にわたり全国9ヶ所31公演で開催してきた「Love Like Rock vol.8」のツアーファイナルとなったZepp Tokyo。ライブハウスを中心に構成されたLLRシリーズとしては過去最大規模となった今回のツアーは東京公演だけでも10公演を数える大規模な内容となった。開演時間。ソールドアウトの会場に荘厳な音楽が流れ始めると、スクリーンには荒野にたたずむ古城が映し出され、真っ赤なカーテンがバサリと落ちた。そして1曲目はフロアの期待感を一気に爆破するアップナンバー “夢見る隙間”で幕を開けた。バックバンドにはバンマスの佐藤達哉(Key)をはじめ、芳賀義彦(G)、須藤優(B)、佐野康夫(Dr)、さらに初参加の設楽博臣(G)、伊澤一葉(Key)を迎えた、ツインギター、ツインキーボードによる総勢6名が名を連ねて、ソリッドかつ重厚感のある演奏でaikoのパワフルな歌唱を支えていた。弾むビートでフロアが一斉にジャンプした“milk”や、赤と青のレーザーが縦横無尽に走った“相合傘”。aikoはセンターステージへと伸びる花道を何度も移動してはお客さんの手を握り、フロアの隅々にまで視線を配っていた。ホールやアリーナ会場では実現することが難しいaikoとの距離の近さがLLRシリーズの大きな魅力のひとつだ。リリースに紐づくライブではないため、“恋愛”や“ドライヤー”といった新旧シングルのカップリングなども披露していくなか、バラード“えりあし” が素晴らしかった。誰の日常にもあるありふれた風景から広がるaikoだけのラブソング。繊細なメロディにのせて、震える心の景色をつぶさに映し出す恋の歌は決して色褪せることがない。

aiko/Zepp Tokyo - pic by 岡田貴之(9月7日公演)pic by 岡田貴之(9月7日公演)
「みんなにとっての明日が楽しい一日になりますように」。そんな願いを込めて届けた“明日の歌”のあと、MCでは「久々に(ツアーの)打ち上げでベロベロに泣いて(笑)。どれだけ音楽をやりたいか、どれだけライブをがんばりたいかを話してたんです……真面目なんですよ。こう見えて」と、お客さんに気さくに話しかけるaiko。彼女のライブ名物とも言える客席イジりでは、直接話しかけたお客さんのなかに、海外出張を延期してライブに参加した人、この日のために有給をとった人がいた。みんな、この場所のために毎日を闘ってきた人たちだ。その人たちがこの場所を去ったとき、再び日常を闘い抜けるように。aikoは「あなたたち」にではなく、「あなた」のために歌う。「ズル剥けになりましょう! わたしひとりだけ剥けるのは恥ずかしいので、みんなも一緒に道連れにしていきたいです!」。そう言って突入した躍動感溢れるアップナンバー“beat”から、ライブはいよいよ後半戦へ突入した。aikoの楽曲のなかでも飛び切り攻撃的な“舌打ち”や、バンドメンバーのソロ回しが大きな喝采を呼んだ“赤いランプ”などを間髪入れずに畳みかけると、「これからもみんなの側におれますように!」と願いを込めて、言葉にならない叫びと共に届けたラストソングは“be master of life”だった。《誰が何を言おうと関係ない/あたしは味方よ》と、他の誰でもなく、目の前にいるお客さんに語りかけたその曲のフィナーレでZepp Tokyoの頭上に美しく金テープが舞い、これ以上ない熱気がフロアを包み込んで本編は幕を閉じた。

アンコールでは“キラキラ”を含む3曲を披露したあと、さらに会場の鳴りやまない声援に応えたダブルアンコールへ。冒頭に書いた骨折の事実を明かすと、aikoは「わたし、骨折れてるので、そのぶんみんなで盛り上げてやってください!」と叫んだ。もっと、もっと、と地団駄を踏むようにオーディエンスを煽った“エナジー”や、軽快なロックンロール“mix juice”、そしてポップパンクなライブアンセム“鏡”へ。限界を超えたパフォーマンスを見せながら、「絶対にまたライブをやりたいです!」と約束を交わして、およそ3時間にわたるライブを締めくくった。エンディング映像が流れる直前には、さらにアカペラで“カブトムシ”のワンフレーズを歌うというスペシャルな一幕もありつつ、ファイナル公演では特別なエンディング映像が用意されていた。オープニングと同じように荒野が映し出され、空を飛ぶ鳥がやがて辿り着いた先には「20th」という石像が置かれていた。1998年7月に1stシングル『あした』でメジャーデビューをしたaikoは来年いよいよ20周年を迎える。キュートで人懐こい表情の奥に表現者としてのひたむきな情熱を燃やし続けてきた愛すべきシンガーソングライターは、きっとその節目の年を盛大に祝福されることになるだろう。(秦理絵)

  • aiko/Zepp Tokyo - pic by 岡田貴之(Love Like Rock vol.8より)

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