フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO

フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO - All photo by Viola KamAll photo by Viola Kam


●セットリスト
1. シンクロック
2. リリリピート
3. トウメイニンゲン
4. 愛の迷惑
5. ディスコプール
6. プロレスごっこのフラフープ
7. ナイトステップ
8. うわさのケムリの女の子
9. まちがいさがしの国
10. 峠の幽霊
11. ふしだらフラミンゴ
12. KITAKU BEATS
13. オドループ
14. オンリーワンダー
15. オワラセナイト

(アンコール)
EN1. かなしいうれしい
EN2. TOGENKYO


10月18日にリリースされたミニアルバム『TOGENKYO』を携えて行われた東名阪QUATTROツアー「フレデリズムツアー2017 QUATTRO編~僕のTOGENKYO~」のファイナル公演が、10月25日に渋谷CLUB QUATTOROにて行われた。聴く者を楽しませ躍らせるための身軽さと、しなやかなのに驚くほど骨の太いサウンド、そして「自分たちの音楽に関わってくれる全ての人をネクストステージに連れて行く」という熱き決意の相乗を全身で感じることのできたアクトだった。

フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
SEに合わせたハンドクラップでテンションを上げるオーディエンスの前に三原健司(Vo・G)、三原康司(Ba)、赤頭隆児(G)、高橋武(Dr)の4人が登場すると、ソールドアウトで満員のフロアはぐっと前に詰まった。そして青い照明に照らされながら健司が「フレデリック、始めます」と言葉を放つと、熱気高まる会場の意表を突くように“シンクロック”をプレイ。9ヶ月振りのワンマンツアーということもあり、てっきりど頭からアッパーチューンで攻めていくのかと勝手に思っていたが、レゲエのリズムが気持ち良く緊張感をほぐしてくれて、《たった2時間ちょっとのワンマンの中で/君はどれくらい心揺らしてくれんの》と変えられた歌詞にはまるで「まぁまぁそんなに慌てるなって」と言われているような気持ちになった。

フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
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とはいえ、そこからはアクセルをグッと踏み込みアップテンポなダンスナンバー“リリリピート”や“愛の迷惑”をプレイし、曲の切り替わりの度にフロアの大歓声を呼び起こしていた。さらに「クアトロ、フレデリックのディスコで遊びませんか?」との健司の誘いから始まった“ディスコプール”から、ギターのカッティングに導かれて流れるように“プロレスごっこのフラフープ”へ移り変わると、高橋・康司・赤頭のソロを経ての“ナイトステップ”と攻めのダンスチューンを畳みかけていった。その間、会場の熱気で空気が湿り気を帯びたことが肌で分かったし、フロアは一瞬の隙も無く揺れっぱなしだった。

フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
そんな空気の中で心底思ったのは、「フレデリックはここまで逞しいバンドだったのか」ということだった。聴く人の身体を軽やかに揺らすには、無駄な力を入れさせないためのある程度の「言葉の難しさや意味を取っ払うこと」がスパイスになるのだと思うし、フレデリックはそれらとメロディとの調合が抜群に上手いバンドだとは前々から思っていた。そのブレンドが「中毒」と呼ぶような毒々しいものではなく、ふと口ずさんでしまえるようなフラットでさらっとした親しみやすさを持つものだからこそ、彼らの音楽は様々な年代に愛されるのだとも納得していた。しかし、この日を含めてフレデリックのライブを体感する度に、その軽やかさとは全く別の「サウンドやグルーヴの骨太さ」を更新していく彼らに圧倒されるのだ。康司と高橋が生み出す重低音は身体どころか骨の髄まで痺れさせる音波を放っていて、ビリっとする瞬間が何度もあった。その安定感の上に赤頭のキレのあるカッティングががっちりハマった時の気持ち良さは快感だし、大量のスモークに包まれてプレイされた“うわさのケムリの女の子”や“まちがいさがしの国”での小技の効いた音使いには耳が離せなかった。

フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
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そしてこの日唯一のロングMCでは「この9ヶ月で確実に進化して帰ってきたわけですが、確実に増えているものがありませんか? あれ、一人増えてる?」という健司のフリから、今年5月に正式加入した高橋の歓迎モードになり、そのままメンバーの自己紹介へ。上京して2年経っても東京に慣れないと話す康司や「双子+他人からギタリストに昇格した」と紹介された赤頭、「フレデリックのメンバーになりました」と書かれているツイッターのプロフィール欄を変更するタイミングを伺っているという高橋の話で会場を笑わせつつ、そんな4人の気負わぬ空気感から今のバンドの居心地の良さが伝わってきた。

フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
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そのグルーヴを糧に、バンド史上最大キャパとなる神戸ワールド記念ホールにて行われるアリーナ公演に向けて「アリーナに行ったことで遠くなったなって言われることもあると思います。でも、違うんですよ。俺たちはライブハウスで育ったバンドだから、この熱をアリーナまで持っていきたい。そう思ってクアトロ公演を決めています。俺たちは絶対に遠くに行かない、ずっと近くにいます」と健司は固く約束し、「俺たちなりの遊び方でいきましょうか」と“ふしだらフラミンゴ”で後半戦をスタートさせ、“オドループ”や“オンリーワンダー”などのキラーチューンを最終兵器の如く大連発! そしてラストに“オワラセナイト”を投下し、「このライブハウスの熱を持って、これから俺たちやっていきます」との言葉で本編の幕を下ろした。

フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
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アンコールの拍手に替わって“オドループ”の合唱が止まない会場に再び現れた4人は「欲しがりやなぁ」と嬉しそうに話しつつ、「2017年、今一番かっこいいフレデリックは、この曲があったからアリーナを決めました。俺たちの覚悟を受け取って下さい」と語り、4人になって初めてのリリースとなった“かなしいうれしい”を経て、最後に“TOGENKYO”をプレイした。彼らのツアーはここで終わるのではなく、ここから始まっていく。私たちに一番近い距離を保ったまま、自分たちもまだ見たことのない桃源郷まで突っ走っていこうとしている彼らの背中をこれからも追い続けていきたいと思える夜だった。(峯岸利恵)

フレデリック/渋谷CLUB QUATTRO
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終演後ブログ
【速報】フレデリック、渋谷CLUB QUATTROでのライブを観た
最新アルバム『TOGENKYO』を携えての、東名阪QUATTROワンマンツアーファイナルとなる東京編。「フレデリックって、こんなに力強いバンドだったっけ?」と、彼らのライブを観る度に思っている気がする。 フレデリックの音楽性として、コミカルなリズムと反復的/特徴的なリリックで聴く人を楽し…
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