【来日レポ】イマジン・ドラゴンズ @ 東京体育館公演

【来日レポ】イマジン・ドラゴンズ @ 東京体育館公演 - Photo by MITSUHIRO GONDAIPhoto by MITSUHIRO GONDAI

昨年夏にリリースされた通算3作目のアルバム『エヴォルヴ』は、英米1位こそ逃したものの世界各地でチャート上位に食い込み、ラスベガス出身のイマジン・ドラゴンズが今や全世界的な人気バンドであることを証明した。それを受けての新作ツアー「EVOLVE WORLD TOUR」は、2017年内に北米を巡った後、年明けからアジア/ヨーロッパ・ラウンドがスタート。精力的にステージを繰り広げるスケジュールの中、一夜限りの日本公演が東京体育館で行われた。過去に2度サマーソニックでの来日を果たしているものの、単独来日公演は今回が初となる。

『エヴォルヴ』=「進化」をモチーフにした壮大なアニメーションのイントロ映像を経て、ウェイン・サーモン(G)、ダン・レイノルズ(Vo)、ダニエル・プラッツマン(Dr)、ベン・マッキー(B)が横一列に並ぶと、新作曲“I Don't Know Why”が繰り出される。キーボード等、マルチにサポートするのはソロアーティストとしても活躍しているエリオット・シュワルツマンだ。ダイナミックに広がりゆく音像とは裏腹に、ダンのソウルフルな叫びは人間関係の中で傷ついてしまう繊細な心模様を伝えている。『エヴォルヴ』というアルバムの制作動機には、ダンが幼少期に抱いた精神的苦痛と向き合うというテーマがあった。

【来日レポ】イマジン・ドラゴンズ @ 東京体育館公演

2010年代きってのスタジアム・バンドとして語られるまでになったイマジン・ドラゴンズのライブは、ざっくり言えば言葉と物語の熱狂だ。ダンが真摯に、熱心に語る東京という街への敬愛の念に沸き、いつしか手拍子や掛け合いのコーラスもどんどん大きなものになってゆく。『エヴォルヴ』で楽曲がより大ぶりでシンプルな構造になり、キャッチーなコーラスのフックがいくつも仕掛けられていた理由が、序盤のうちに氷解した。アカデミックな音楽的基盤を培ってきたはずのメンバーの演奏も、正確さや高度さよりむしろ直情的で、プリミティヴな熱狂を目指すものになっている。“Whatever It Takes”でメンバーが一斉にフロアタムやバスドラムを打ち鳴らす一幕は、まさに象徴的だろう。

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がっちりと合唱を練習させて臨む“Yesterday”では、歌声に誘われるようにバンドサウンドもクレッシェンドする。シンプルだが、とてもインタラクティヴ性が高い。「僕には、日本について腹を立てていることがひとつあるんだよ。それは、食べ物が美味しすぎるってことだ!」と笑わせながら、次の瞬間には真剣そのものの表情で、周囲とのズレに悩まされていた幼少期を語り、鬱と格闘していることをまっすぐに告げるダン。世界中を旅しているのは同じような苦痛を抱え込んでいる人と語らうためで、僕はいつでもあなたの側にいる、と“Demons”を語り聞かせるように歌う。ロックの進化が陥りがちな落とし穴を巧みに回避しながら、しかしイマジン・ドラゴンズは最もロック的な熱狂を逃さない。熱狂こそが、彼らの求める対話だからだ。

【来日レポ】イマジン・ドラゴンズ @ 東京体育館公演

アリーナ中央に設営されたサブステージでのアコースティック・セッションは、メンバーの演奏技術の本領が発揮されるという点でも素晴らしかった。リハーサル無しで敢行したインディーズ時代の曲“Tokyo”で《きみたのしむ》のフレーズが弾け(歌う前にダンはオーディエンスにこのフレーズの意味が日本語で通るのか確認していた)、“Dream”や“Bleeding Out”ではダニエルのヴィオラやウェインのチェロがじっくりと美しいアンサンブルを構築する。フロアには、誰からともなくスマホのライトが灯されていた。

そしてライブ終盤は、アンコールも含めてアンセムの嵐である。エモーショナルなコーラスが膨らむ“Believer”も、大量の紙吹雪が舞う(しかも滞空時間が長い)“Walking the Wire”も素晴らしい盛り上がりを担っていたし、プリミティヴな熱狂のピークに到達する乱舞ビートと音圧の“Radioactive”まで、100分超え全20曲というボリュームも申し分なかった。ロックバンドの熱狂は、例えばこういう形で新しい時代に受け継がれてゆくものなのだということを、肌で確かめることができたステージであった。(小池宏和)

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〈SETLIST〉

01. I Don't Know Why
02. It's Time
03. Gold
04. Whatever It Takes
05. I'll Make Up to You
06. Mouth of the River
07. Yesterday
08. Start Over
09. Demons
10. Rise Up
11. On Top of the World
12. Tokyo
13. Amsterdam
14. Dream
15. Bleeding Out
16. Thunder
17. Believer
(encore)
01. Warriors
02. Walking the Wire
03. Radioactive
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