トップバッターはメインステージで「スペシャ列伝、はじまるよー!」と元気よくスタートしたおとぎ話。“FESTIVAL EXPRESS”で幕を開けると会場はまるで魔法にでもかかったみたいに温かくて夢見心地な空間へと様変わり。そして、「みんなのテーマソングを作ってきたよ」と言って始まった“ネオンBOYS”でキラキラと輝くメロディーに手拍子で応えるオーディエンス。みんな本当に飛びっきりのいい笑顔をしてる。有馬(Vo/G)は「みなさん、ここまででおとぎ話が変なバンドだって分かったでしょ。おとぎ話=妖怪だということが分かるライブをやります」と一筋縄ではいかない中毒性溢れるおとぎ話のロック・ワールドへといざない、新曲“青春”へと突入。この曲がまた素晴らしかった。学生時代のことを歌った唄と言っていたが、まさに「青春」が色鮮やかに蘇えるような甘酸っぱいメロディーが印象的で、アウトロはチャイムの「キーンコーンカーンコーン」というフレーズで締めくくられるという懐かしさ満載の1曲だった。ラストは「みんながライブの主役です、そういう歌をやります」と言って“FAN CLUB”で終了。ドリーミーでハートフルな空間を生み出したおとぎ話。この続きは、5月に決定した渋谷クアトロでのワンマン公演でしっかりと魅せてくれるだろう。
続いて、隣のバーステージでは2月にリリースされた1stフルアルバムが話題の注目度急上昇の3ピース・バンドandymoriが登場。巷を賑わしているロック・バンドを一目見ようとバーステージに一気に人がなだれこみ入場規制がかかる。そんな中、勢いよく3人の演奏がスタート。ギャンギャンかき鳴らされるギターとブンブンとうねりを上げるベース、そして、ドカドカとダイナミックに叩き上げられたドラム、すべてが前のめりに突っ走っていき初期衝動を爆発させたような演奏に圧倒される。“FOLLOW ME”“ベンガルトラとウィスキー”と飛ばしに飛ばしまくって、ドラムなんて1曲ごとにセットが崩れてしまうほど。何かにとりつかれたように性急なビートを繰り出しギョロっとした瞳を見開きほとんど音程も無視して吐くように歌う小山田(Vo/G)の姿からは内に秘めた狂気が滲み出ていて、ロックを感じさせる。荒削りなバンドサウンドながらも、得体の知れない大きな可能性を秘めたバンドだ。
メインステージでは、3月4日にメジャー・デビュ・ーシングル『ピンホール』のリリースを控えたOGRE YOU ASSHOLEがスタンバイ。“コインランドリー”の煌くギターのイントロが聴こえてくると異次元の世界に連れていってくれるようで気分が高揚する。オーディエンスもゆらゆらと揺れ動きながらその音に絶対的な安心感を憶えて身を委ねる。常に向き合いながら心地よいグルーヴを生み出していくベースの平出とドラムの勝浦。直線的なリズムながらも絶妙な間を作り出し、馬渕(G)と出戸(Vo/G)が展開する繊細なギター・アンサンブルと絡み合った瞬間、オウガならではの極上のオルタナ・ワールドが味わえる。最後、3月にシングルを出してそれに伴うツアーでは渋谷クラブクアトロでワンマン公演を行うという告知をし、あっという間のラスト曲“ひとり乗り”まで約30分。一度たりとも途切れることなく淡く彩られたオウガ色の世界に浸ることができた。
オウガが去った後の気だるい心地よさを嵐のようにかっさらっていったのは女子3人組つしまみれ! バーステージに現れるはずだが・・・なんとメインステージにまり(Vo/G)が登場し、「メインステージのみなさーん、これからバーステージに出るつしまみれです!」と突如ご挨拶。そして、フロアに飛び込み、そのまま普通にお客さんが通る通路を通って颯爽とバーステージへ直行。お客さんの波に持ち上げられながら戸川純の“好き好き大好き”をSEにステージまで辿り着き、「かかってこい!」と“敵のテーマ”でスタート。初っ端から息切れ寸前のヒートっぷりにオーディエンスも押し合いへし合いで大盛り上がり。個人的にこれまでLOFTのバーステージで観てきたのはアコースティック・ライブばかりだったので、こんなにフルスロットルで暴れ回るバーステージのライブはかなり衝撃的でした。4月22日にはメジャー・デビュー・シングル『タイムラグ』をリリースすることを大々的に発表し、早速新曲を披露。その後も止まらぬ勢いで、「つしまみれは、みんなと一緒に一つになりたいんです!」と叫んで、ギターを抱えたままハンドマイクでフロアに乱入したまり。オーディエンスにもみくちゃにされながら“脳みそショートケーキ”を演り切って、圧倒のパフォーマンスでバーステージを迎え撃った。
最後はメインステージに全員スーツでバシッとキメたTHE BAWDIESが登場。とても日本人が出しているとは思えないハスキーで渋みの効いたソウルフルなボーカルが冴え渡るロックンロールが堪らない! まるでジュークボックスから流れてくるかのような50年代〜60年代サウンド。その音に身を委ねて踊り狂っているのは、紛れもなくTシャツにスニーカー姿の現代のロック・キッズたちだ。その光景はあまりにも衝撃的。ただ単に懐古的に昔のロックを奏でているだけでは古臭く聴こえるだけだが、THE BAWDIESはそうじゃない。ルーツとする音楽が完全に身体に沁み込んだ状態で、ロックが持つクラシックな良さをそっくりそのまま現代に持ってきて自分達なりの解釈でアウトプットしているから現代のロックンロールとして新鮮に響き渡っている。4月にリリースが決定したニュー・アルバムにも収録予定の新曲“FORGIVE ME”はストーンズを彷彿とさせるダイナミックなロックナンバー。3月4日に発売されるシングルからの楽曲“EMOTION POTION”はモータウンビートに乗って最高に踊れる。今日披露された新曲群からは、THE BAWDIESが60年代サウンドを進化させながら現代で鳴らすことの楽しさをオーディエンスと共有していることがよく伝わってくる。こういうサウンドをリアルに体験してきた人も、ルーツとして辿ってきた若い世代も純粋に楽しむことができる生粋のパーティー・バンドだ。
2009年の音楽シーンを切り開いていくであろうロックバンド5組のショーケース的なライブイベント。気になるバンドは是非それぞれのワンマンでそのパフォーマンスを確かめてみてほしい。(阿部英理子)
おとぎ話
1.FESTIVAL EXPRESS
2.ネオンBOYS
3.青春
4.GALAXY
5.FUN CLUB
andymori
1.ナツメグ
2.FOLLOW ME
3.ベンガルトラとウィスキー
4.僕が白人だったら
5.モンゴロイドブルース
6.ビューティフルセレブリティ
7.バグダットのボディカウント
8.トランジット・イン・タイランド
9.everything is my guitar
10.すごい速さ
OGRE YOU ASSHOLE
1.コインランドリー
2.フラッグ
3.ピンホール
4.アドバンテージ
5.ラムダ・ラムダ・ラムダ
6.レール
7.ひとり乗り
つしまみれ
1.敵のテーマ
2.ハイパースイートパワー
3.タイムラグ
4.おじいちゃんのおズボン
5.バカ元カレー
6.脳みそショートケーキ
THE BAWDIES
1.STOP YOUR LYING
2.IT\'S A CRAZY FEELIN\'
3.I\'M IN LOVE WITH YOU
4.FORGIVE ME
5.MY LITTLE JOE
6.YOU GOTTA DANCE
7.EMOTION POTION
8.I BEG YOU
EN.1 WHAT\'D I SAY
EN.2 SHAKE YOUR HIPS