Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂

Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂 - All photo by 白石達也All photo by 白石達也

●セットリスト
01.真昼の月
02.ナイトクロージング
03.ジオラマ
04.あとの話
05.曇りのち
06.マザーロード
07.Wake
08.新曲
09.いつか
10.コンタクトケース
11.へっぽこまん
12.世界の果て
13.煙
14.メトロノウム
15.バンドワゴンに乗って
16.ゴーストバスター

(アンコール)
EN01.新曲
EN02.グッバイ


Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂

Saucy Dogのワンマンライブ「YAON de WAOOON in Tokyo」が、4月30日に日比谷野外大音楽堂にて行われた。4月13日に開催された、バンド結成の地である大阪の大阪城野外音楽堂公演の追加公演として行われた今回のライブは、見事ソールドアウト。会場を埋め尽くす多くの人に待ち望まれながら迎えられたこの日の天候は生憎の雨となったが、しとしとと優しく降り注ぐ雨粒は、彼らのライブをより一層煌めいたものにしてくれていた。

ステージに石原慎也(Vo・G)、秋澤和貴(B)、せとゆいか(Dr・Cho)の3人が登場すると、着席していたオーディエンスはわっと一斉に立ち上がった。そして「Saucy Dog始めます!」との石原の言葉をきっかけに“真昼の月”でライブがスタート! 煽りを受けることなく自然と起こったハンズアップが壮観だった“ナイトクロージング”やシャボン玉の演出が彩った“あとの話”、「こんな雨の中来てくれたみんなにプレゼントします!」と新曲を披露するなど、悪天候なことを感じさせない清々しくて瑞々しいアクトで会場を盛り上げていった。

Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂
Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂
Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂

2019年4月30日、この日は平成の終わりの日。時代の移り変わりだけではなく、人との出会いと別れが繰り返される春の盛り。「別れ」の方にばかり目がいく中でも自分は「出会い」をより大切にしていきたいと語った石原は、「許せない別れがあったので」という言葉と共に、無音の会場に力強い足踏みを二度響かせ、珠玉のラブバラード“いつか”へと続けた。日が暮れてきたことに加え、絶えず降り注ぐ雨の影響で外気温はかなり下がっており、はぁっと吐く息は白くなっていた。4月の終わりとは思えない寒さではあったが、その冷たく凛とした空気が楽曲の雰囲気をより一層引き立てていた。続くラブソング“コンタクトケース”も、ひとつの恋愛の終わりを描写した歌詞の世界観と雨が醸し出す切なさがマッチしていて、音楽だけではなく周りの環境をもまるごと味方にし、オーディエンスの心をグッと惹きつけているようだった。そして曲が終わると、ドラムセットから離れたせとが、ステージの前方に準備されたキーボードの前にセット。3人横並びになって行われたアコースティックでは、大阪城野外音楽堂でのこぼれ話をまったりと話して会場を和ませつつ、せとがボーカルを務める“へっぽこまん”をプレイ。その穏やかな余韻の中続けられたバラード“世界の果て”では、ステージの上下に配置された丸いライトが光り、雨に濡れたステージに水面反射しながら輝いていた。

Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂
Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂

この日の衣装について、バンドを組んだ時と同じ白い半袖Tシャツとシーパン、さらには靴や靴下まで同じもので揃えてきたという石原。「この場所は、バンドマンにとっての聖地なんです」とこのステージに立てた想いを感慨深く語りながら、「着る衣装は変わっても、中身は変わりたくないと思っています。今って、変わらないまま生き残っていくって難しいらしいんだよね。でも、俺ららしさを残しながら、それでもちょっとずつ変わりながら、みんなの毎日を少しずつ彩れる曲を書いていきたいと思っています。これからもついてきてね! みんなでずっと、どこまでも走り続けられる曲!」と“バンドワゴンに乗って”へと突入!……が、序盤で石原が歌詞をド忘れして演奏が中断。オーディエンスに謝りながら秋澤とせとに歌詞を尋ねるも思い出せず「……ってふたりとも覚えてねぇじゃん!」となり、さらには「1番から全部歌えるよって人いる?」と観客に歌詞を訊くというまさかの展開に! 想いが込められた渾身のアクトに圧倒された会場はついさっきまでしんと静まっていたけれど、この頃には会場はすっかり明るい笑い声に包まれていた。そんな状況を見ながらせとも話していたが、頑張って緊張の糸をきっちり締めたと思っても結局ゆるりと解けてしまう。楽曲の良さはもちろんのこと、そうした「3人が持つ愛嬌」もSaucy Dogの魅力の大きなひとつだし、愛される理由だよなぁと思う。牽引力や気概の強さで聴衆を引っ張っていくのではなく、持ちつ持たれつの関係を崩さずに前に進んでいく方がずっと彼らしい。ラストに届けられた新曲“ゴーストバスター”に至るまで、そんな心温まる関係性が伝わってきた。

Saucy Dog/日比谷野外大音楽堂

アンコールでは新曲に加えて、テープ砲が華やかに会場を彩った“グッバイ”が届けられ、ふと気付けば雨は止んでいた。演奏後に設けられた記念撮影タイムでは「これから武道館とかでもやっていきたい」という言葉も飛び出したが、今日のライブを観たら夢でもないように思えた。Saucy Dogが持つ純真さや温かさに惹かれていく人はこれからもっと増えていくだろうし、自分たちを支え応援してくれている人たちが目に見えて増えているという事実が彼らの集中力をぐっと強めているように思う。その相乗効果は、彼らをもっと大きな会場に導くエネルギーになっていくだろう。翌日から新しい時代を迎えるという特別な日にぴったりな、未来への希望と温もりに溢れる晴れやかなライブだった。(峯岸利恵)

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