GRAPEVINE with 長田進(From Dr.Strange Love) @ SHIBUYA-AX

GRAPEVINE with 長田進(From Dr.Strange Love) @ SHIBUYA-AX - GRAPEVINEGRAPEVINE
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GRAPEVINEの09年ライブ始めは、アルバム『deracine』以降、バインのプロデューサーとして係わっているDr.Strange Loveのギタリスト長田進氏とともにステージに立つ東名阪ツアー。田中、西川、長田によるトリプル・ギター編成でのライブは彼らにとって初の試みだ。プロデューサーという立場の人間とともに作品だけでなく、ライブステージも作り出していく。凄まじいセッション・バトルが繰り広げられ圧倒されっぱなしの一夜だった。スペシャル・ゲストとして登場したNICO Touches the Wallsも含めて実に4時間!超濃密なパフォーマンスを堪能することができた。

まずは、本日の公演のみのスペシャル・ゲストとして、田中に「若き天才」と言わしめたバインの弟分、NICO Touches the Wallsが登場! 以前、ロッキング・オン主催イベントJAPAN CIRCUITで共演、その後昨年の2月に行われたGRAPEVINEのCLUB CIRCUITでも再び共演したNICO Touches the Walls。ライブを観るたびにアッと驚かされるような成長を遂げていて本当に素晴らしい。“image training”で幕を開け、“THE BUNGY”へと雪崩れ込み攻撃的に畳み掛けていく。「バイン兄さんとのライブは気が引き締まりますよ」と今年東京では初となるライブもバインとの共演で心地よい緊張感とともに展開していく。

そして、先ごろ発表された5月に発売が決まったシングルから“ビッグフット”を披露。突き抜けるようなサビメロが爽快なロックンロール・ナンバーで、間奏部分では光村と古村がギターで掛け合いを繰り広げたり、昂揚感を煽るような光村のシャウトも最高だった。さらにそのシングルから、先ほどとは打って変わってミディアム・ナンバーの“トマト”も披露。美しいメロディーラインと1曲の中になだらかな穏急のある曲展開が涙腺を緩ませる名曲だった。JAPAN CIRCUITでのバインとの初共演の際に1曲目に演奏したという“行方”の後に、再び嬉しい新曲を投入! 本日初披露となった映画『蟹工船』の主題歌“風人”(ふうじん)だ。「映画音楽をずっとやりたくて。欲を言えば映画の始めから最後までやりたいくらい」と意欲満々で披露されたこの楽曲は、ソリッドなギターと図太いリズムが織り成す、この後続いた“武家諸法度”と並んでライブ映えする激しいロック・チューンだった。思う存分新曲も演奏し、それぞれのソロ・パートも見せ、ゲストとはいえど1時間に及ぶ濃厚な、今年初の東京ライブとしては幸先の良いパフォーマンスを見せてくれた。

そしてステージ転換後、19:20頃にいよいよGRAPEVINEが登場!まずはベースに金戸 覚、キーボードに高野 勲を迎えたいつもの5人編成で、“Glare”でスタート。亀井の重みのあるドラムが鳴り響き、徐々に音が重なっていくと会場はバイン特有の張り詰めた緊張感に包まれていく。これに続く“COME ON”の後半で繰り出された5人のうねるような躍動感溢れる演奏で完全にセッション・モードはスイッチオン。まだ2曲目なのにすでに田中は恍惚の表情を浮かべて入り込んでいた。しかし、これはまだ序の口に過ぎない。

「夏くらいにアルバムを出そうかなと思っています」といって、現在レコーディング中の、そのアルバムの中にも入るであろう新曲を2曲披露した。1曲目はザクザクとかき鳴らされるギターと繊細に刻まれたリズムに耳なじみのよいメロディーが乗った激しいナンバー。そして、もう1曲は田中がアコギを抱え、緩やかな8ビートが繰り出すバインらしい脱力系ロック・ナンバーで、どちらもアルバムへの期待を煽るに充分の楽曲だった。

久々に演奏された“Sabbath”、バイン屈指の泣きのメロディーがとめどなく溢れる“アナザーワールド”に続いて、いよいよプロデューサー長田進が登場。「みんなで『監督!』と言ってください」という田中の呼び込みに鬼監督こと長田進がアコギ片手にステージに現れると、一旦メンバーははけて長田一人による弾き語りでDr.Strange Loveの“Midnight Blues”を演奏。そのまま、長田の呼び込みで「グレートドラマー亀ちゃん」「グレートキーボディスト、またの名は助教授・高野」「グレートギタリスト西川」の3人が加わり牧歌的なブルースナンバー“The Apple Tree Song”をまったりと演奏し、すっかり会場はリラックスムードに。その後、田中と金戸も加わり6人編成で“アメリカのアリゾナ”へと続き、いよいよトリプルギターの猛攻勢がここに実現! 特に“風-Lun”では浮遊感たっぷりの轟音ノイズギターがバンドのダイナミズムを生み出していた。

そして、ここからは再びバインの楽曲で攻めていく。長田もそのまま参加し、幾重にも重なる濃厚なギターサウンドで、激しく、しかし繊細さを損なわずにアルバムの音を完全再現していく。いや、再現するというよりかはいちから構築していくと言った方が良いかもしれない。プロデューサーである長田のプレイが加わることで、いちから新しいGRAPEVINEの音像を創り上げ、徐々に立体感を帯びるように形になっていく様がライブで体感できるというのは本当に貴重なことだと思う。“Sing”での長田による哀愁漂うペダルギターの演奏も、“KINGDOM COME”で繰り広げた長田、西川、田中による怒涛のギターバトルも鬼気迫るものがあったし、熟練した貫禄のパフォーマンスを叩きつけてくれた。しかし、どこか新鮮な風を吹き込ませていたようにも思うのは、やはり長田とともにステージに立っているということが大きいのだろう。

「行くぞー!」という田中のシャウトとともに始まった“FLY”で会場は一気にテンションアップ! なんと、高野もギターを抱えて驚異のクワドラプル・ギターが炸裂! これには参りました。凄まじい音圧にすっかり痺れきった後は、一気にトーンダウンして“CORE”に突入。“FLY”とは両極にある徐々に熱を帯びていくようなロックナンバーに再び酔いしれ、本編ラストは会場を大きく揺るがすようなアウトロが感動的な“B.D.S.”で締めくくられ終了。

アンコールでは、NICO Touches the Wallsから光村と古村がGRAPEVINEのメンバーに混ざって登場。田中はニコのTシャツを、光村はバインのTシャツを互いに着合って、良い兄弟関係をアピール。そして、ローリング・ストーンズのダンス・ナンバー“Undercover of the Night”をカバーした。光村はボーカル&タンバリンで会場を派手に盛り上げ、古村はギターで参加。間奏部分ではやりたい放題で、光村はドラムの方へ回りシンバルを叩いたり、古村は長田が鳴らすギターのエフェクターを操ったり、田中は光村にギターを託して弾かせたり…と楽しいセッションタイムを繰り広げた。そして、「もう1曲やらせてもらうね」といって始まったラストの曲は“Everyman,everywhere”。光を求めるように優しく力強く鳴り響くアンセムに場内はじっと耳を傾け、終わった後はその微熱が残り香のように漂いいつまでも拍手に包まれていた。

会場の外で配られていたチラシには5月にニュー・シングルの発売も決定したとの告知もあり、夏に発売予定のアルバムを待たずにGRAPEVINEの新展開を味わうことができそうだ。(阿部英理子)

NICO Touches the Walls

1.image training
2.THE BUNGY
3.ビッグフット
4.トマト
5.April
6.行方
7.風人
8.武家諸法度
9.Broken Youth

GRAPEVINE

1.Glare
2.COME ON
3.超える
4.新曲
5.新曲
6.Sabbath
7.アナザーワールド
8.Midnight Blues(Dr.Strange Love)
9.The Apple Tree Song(Dr.Strange Love)
10.アメリカのアリゾナ(Dr.Strange Love)
11.風-Lun(Dr.Strange Love)
12.エレウテリア
13.VIRUS
14.Sing
15.KINGDOM COME
16.フラニーと同意
17.FLY
18.CORE
19.B.D.S.

アンコール
20.Undercover of the Night(The Rolling Stonesカバー)
21.Everyman, everywhere
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