●セットリスト
1. M&W
2. すばらしい日々
3. おかしな2人
4. That's Life
5. GoodTimeバレンタイン
6. Lake Placid Blue
7. 7th Ave.
8. でんでん
9. 服部メドレー
10. BLUES
11. 4EAE
12. 55
13. 半世紀少年
14. チラーRhythm
15. Boys & Girls
16. Feel So Moon
17. ZERO
(アンコール)
EN01. HELLO
解散から16年、再始動してから10周年。ABEDONが加入し現メンバーになってから(つまりアルバム『服部』リリースから)30周年。川西幸一が還暦で60周年。以上を足すと、100周年。
というわけで、2019年を「100周年」と定め、「働き方改楽 なぜ俺たちは楽しいんだろう」というスローガンを掲げ、ニューアルバム『UC100V』をリリースしたり、それを携えて全50本のツアー「百が如く」をスタートしたり、と思ったらそのツアーの前半の日程が終わるところで「これからアルバムもう1作作って、それをリリースしてから後半のツアーを回ります」と宣言したり、そして本当にもう1作『UC100W』を作ってからツアーを再開したり──と、稼働しまくりだった2019年のユニコーン。
この中野サンプラザ2デイズの1日目は、その後半の日程のヤマ場であったわけだが──「全50本のツアー『百が如く』」とさっき書いたが、前半と後半では、実質的に別のツアーになっている。携えて回るニューアルバムが『UC100V』から『UC100W』に変わっているので、そこの選曲が変わるのは当然としても、それ以外のセットリストも、前半とはまったく違う。
たとえば、セットリストの最初の方で演奏する解散前の時代の曲、前半では“働く男”だったのが、後半では“すばらしい日々”になったり。本編ラストのピークタイム、前半では“すばやくなりたい”、“SAMURAI5”、“ヒゲとボイン”だったのが、後半は“チラーRhythm”、“Boys & Girls”、“Feel So Moon”、だったり。
セットリスト以外の部分、ステージセットや衣装や効果映像なども、後半から一新された。『服部』から30年である点は、前半も後半も同じだが、それを記念して『服部』の曲たちを9分くらいの尺で次々と披露していく「服部メドレー」のコーナーも、後半ではまったく新しく作り変えられている。
特に後半の“珍しく寝覚めの良い木曜日”にのっけて“デーゲーム”を歌うという技、大ウケ。僕はこのツアーの後半日程、各地で5本観たのだが、どこでも爆笑をとっていた。
あと、このツアーを観た方なら同意していただけると思うが、全体的にいちばん大事なのは「30周年」でも「60周年」でもなくて「10周年」なんだなあ、ということがアンコールでわかる、そしてそこで怒濤のごとき感動が押し寄せてくる、というツアーでもある、この「百が如く」は。
そこで10年前の再始動アルバム『シャンブル』からの曲をやるのだ。10年続いた、というのはデビューから解散までの6年半を軽く超えているわけで、曲を聴いていると、「ああ、復活してくれてよかった」、「そして、川西幸一が倒れたりとかいろいろありながらも、今もこうして続いていてよかった」という気持ちになるのだった、どうしたって。
ちなみに、その川西幸一のドラムセットと衣装は、誕生日の10月20日を境に、真っ赤にチェンジされた。
なお、そのアンコールの『シャンブル』からの曲は、前半日程は“ひまわり”、後半日程では“HELLO”である。後半では、復活以降にライブで“HELLO”をやった時の映像(2009年以降のライブから瞬間瞬間を選りすぐって編集したもの)が、曲とぴったりリンクした形で画面に映し出される、という演出が加わり、さらに感動が大きくなった。
それからもうひとつ、大きな感動ポイントがある。“55”だ。奥田民生が広島カープの助っ人外国人エルドレッドに捧げたこの曲が、前半でも後半でも同じ12曲目で演奏されることは、このツアーにおいて、とても大きな意味を持っていた。というか、とても効いていた、全体の流れの中で。
唯一、前半も後半も一緒だったのは、「100周年だから尺は100分」というわけで、ライブ開始から100分が経つと“ハッタリ”が鳴り響いて強制終了、というルール。
前半の頃は、ちょっとMCを長くとったりするとすぐ100分を超えてしまうので、メンバーがバタバタと悪戦苦闘したりしていたが、回を重ねてきただけあって、中野サンプラザでは、もうすっかり余裕。オーディエンスも、このツアー、ただ短いんじゃなくてムダがないんだ、密度がすさまじく濃いんだ、ということをもう把握しており、中野サンプラザを何度も熱狂が包む100分間になった。
ベテランだし、凄腕だし、言ってしまえば大物だけど、ユニコーンというバンドは(奥田民生だけでなくメンバー全員が)偉そうに見えることや、シリアスに見えることや、真顔に見えることを、とにかく嫌う。MCで熱いことなんか死んでも言わない。常にヘラヘラと、フニャフニャと、淡々とふるまう。しかし、そうは言っても楽器を持つと本性が出てしまうというか、70年代の英米のハードロックバンドのようなすさまじいグルーヴの音が、ステージから放たれる瞬間が何度もある。
この中野サンプラザでは、それ、特に14曲目以降とアンコールで、顕著だった。すごいバンドなんだよなあ、と、改めて思った。(兵庫慎司)
※写真は12/17 大阪フェスティバルホール公演のものです