●セットリスト
01. じゃあどうやったら愛してくれんだよ
02. un-speakable
03. 炎上Enjoy
04. 鋲心全壊ガール
05. バンドマン
06. 民放709条
07. 消エナイ
08. 死にDIE
09. ノイズ
10. ふたりぼっち
11. 季節と雨と涙と
12. FREEDOM
13. 溺死
14. DV
15. 愛されたいよ。
16. 超ヤバイ(feat. t-Ace)
17. 今夜も誰かと(feat. t-Ace)
18. Singing
19. CinDie
20. 女子高生
21. 斉藤さん
22. Que sera, sera
23. 正義の歌
24. メンヘラ
47都道府県完全無料ワンマンツアー「2020年1月11日ミオヤマザキ横浜アリーナやるってよ。」、そしてZeppツアー「ミオヤマザキZeppツアーやるってよ」という怒涛のロングツアーを経て、ニューアルバム『じゃあどうやったら愛してくれんだよ』をリリースし2019年を駆け抜けたミオヤマザキが、自身最大キャパとなる横浜アリーナのステージに立った。「私を愛してくれないなら死んで」と題されたこのステージはデビュー5周年記念のワンマンで、またチャレンジを続けてきた2019年のひとつの集大成と言えるステージとなった。
ステージには開演へのカウントダウンが表示され、ラストの10カウントでは観客の大きな声が重なった。会場が高揚感で包まれるなかオープニング映像が流れ、そしてニューアルバムのタイトル曲“じゃあどうやったら愛してくれんだよ”のダイナミックなアンサンブルがスタートした。ステージにシルエットが浮かんでいるのはtaka(G)、Shunkichi(B)、Hang-Chang(Dr)の3人。歌がはじまりパッとスポットライトが当たったmio(Vo)がいたのは、アリーナ席を目一杯に伸びた十字の花道の先端だ。この登場に観客のボルテージが高まる。スラップベースが映える“炎上Enjoy”や、手拍子とともに大合唱が起こる“バンドマン”など、序盤からヒリヒリとラウドな曲が連投されバンドは爆走モード。その音に食らいついていく観客に向けてmioは「元気ですか?」と語りかけ、集まった人に感謝を述べた。横浜出身だというmioは、この日会場入りしたときに多くの人が並んでいてくれたことや、横浜アリーナに人が溢れているのを見るのは成人式のとき以来だと語り、このステージに立つことに現実感が湧かなかったと正直にMCをした。そして「でも、最初の5曲を歌って、嘘じゃないんだと思えてきました」という。
メジャーデビュー曲“民法第709条”から最新アルバム曲まで新旧織り交ぜた内容だが、いずれも徹底してディープな一対一の愛憎を描き、濃密すぎて平衡感覚を失うような歪んだ関係や、その叫びが激しい音や、カロリーの高い歌やポツリと寂しい歌となる。このミオヤマザキの歌の世界をより視覚的に表現したのが、中盤に据えた“季節と雨と涙と”、“FREEDOM”、“溺死”、“DV”、“愛されたいよ。”の5曲。歪んだ愛のサーガとも言える曲を、ダンサーによる身体表現で劇的に彩った。とくにセンセーショナルな“DV”から、mioのささやくような独唱ではじまる“愛されたいよ。”への流れは、その切実な痛みが鋭さを増して響き、複雑な想いが湧く。
「デビューした1年目は、誰にも相手にされなくて。また変なバンドが出てきた、メンヘラ、ヤバいっていう感じだった。どう言われながらも続けてきて、昨年くらいからようやくミオヤマザキかっこいいじゃん、普通のバンドじゃんって世間が受け入れてくれた感覚があったんだよ」とmioは観客に語りかける。そして「ずっと『普通』が怖かった。でも『普通』は大事な価値観だと思う」と、心境の変化をも語った。しかしそんな矢先に、普通じゃない面白い人に出会ったということでステージに招き入れられたのが、この日のコラボゲストでラッパーのt-Aceだ。t-Aceの“超ヤバい”と、2組で作り上げた“今夜も誰かと”を披露し、それまでのシーンとは一転した賑やかなステージを見せた。
ニューアルバムの1曲目を飾るアンセミックな“Singing”からの後半は、再びド派手でラウドなサウンドで、観客のヘッドバングを指揮する。“女子高生”では、総勢350人の女子高生ダンサーがステージと花道を埋め尽くし、バキバキのEDMチューンに乗せてダンス! 彼女たちのエネルギーを得て“斉藤さん”、“Que sera, sera”とスピードを上げていき、畳み掛けるように“正義の歌”を放つ。そしてラストに演奏したのは、“メンヘラ”。今回のライブのタイトルに冠したフレーズが入った曲である。ライブ中mioは、ミオヤマザキはこの横浜アリーナに立つアーティストの中でも特にファンとの距離が近いバンドだと思うと語っていたが、改めてこの日この場所まで連れてきてくれた観客と、深い絆を不器用に結び合うように叫び、観客もまたその声に応えて声を上げ続けた。互いを確認しあって、またこうしてライブという最高の場で会うことを約束する、そんな大事な一夜を築く日となった。(吉羽さおり)