JAPAN ONLINE FESTIVAL 2021 Spring/DAY1・DAY2

優里
昨年11月に続き2回目の開催を迎えたJAPAN ONLINE FESTIVAL。そのトップバッターを飾ったのはTikTok発で注目を集めるシンガーソングライター・優里だ。1曲目“ピーターパン”からいきなり力のこもった歌声が耳を襲う。LEDスクリーンに映し出されたミュージックビデオの映像を背負いながら、まっすぐに前を見つめて、声を絞り出すようにして歌う彼の姿が、まるで自分一人に語りかけてくるようだ。続けて“かごめ”に込めた切実な思いをそのまま形にしたような歌を届けると、「今こういう時期なのであんまり歌を歌う機会がないんですけど……必死に、必死に、大好きな歌を歌って、画面の前の皆さんにも生のライブと変わらないくらい届けたいと思います」と真摯な姿勢を言葉にしてみせ、2月にリリースしたばかりの卒業ソング“桜晴”をライブ初披露。背景に映る桜の映像がそれを観ているこちらの心象風景と美しく重なり、あっという間に歌の世界に惹き込まれる感覚はオンラインライブならではのものだった。

さユり
前回に続いての出演となるさユりは、映像を駆使して歌のエモーションを何倍にも増幅させていく。代表曲“ミカヅキ”ではスクリーンにポッと満月が浮かび、そこからドラマティックなアニメーション映像が展開、圧倒的な世界が広がる。「画面越しで演奏しています。この街のどこかにいる君に祈りをこめて歌います」という言葉から “オッドアイ”を響かせると、背景に浮かび上がる歌詞が切ない感情を呼び起こす“フラレガイガール”へ。 “ちよこれいと”ではかき鳴らすギターに合わせて動く映像によって切迫した感情を表現し、最後の曲“航海の唄”ではミュージックビデオをバックに背負ってクライマックスを描き出す。まるで映像の中にいるようなバーチャルな感覚と、どこまでも生々しい叫びのような歌の温度感。目から入ってくる情報と耳に飛び込んでくる音のコントラストが、どこか不思議な感覚を呼び起こした。

ReoNa
3組目としてステージに立ったのは「絶望系アニソンシンガー」ReoNa。“Untitled world”からライブをスタート。バックバンドの鳴らすヘビーなロックサウンドを背負いながら、透明さと力感の同居した歌を届けていく。続けて“Scar/let”。楽曲の巨大なスケールをさらに押し広げるようなダイナミックな映像とともに、ますますエモーションを解放してみせる。「今日は画面の向こうのあなたと1対1、届くように心をこめてお歌、つむぎます」。そんな言葉通り、彼女の歌はまるで自分ひとりに歌いかけられるようにして心の深い部分に爪痕を残していく。アコースティックギターとピアノの音色に乗せて切ない感情を歌い上げる“雨に唄えば”を経て、どこか懐かしいメロディが印象的なバラード“ミミック”へ。ラスト“SWEET HURT”を歌い終えると「じゃあな!」と一言。数々のアニメ作品にその歌声で寄り添ってきた彼女らしく、その説得力は画面越しでも全く揺るがなかった。

-真天地開闢集団-ジグザグ
眩い光が蠢くような神秘的な映像とともに“Promise”でJAPAN ONLINE FESTIVALでの「禊」を開始したのは-真天地開闢集団-ジグザグ。“コノハ”では激しいギターのストロークが命(Vo・G)のエモーショナルな歌を加速させ、ここでも宇宙的な映像がその楽曲の世界をヴィヴィッドに彩る。この日の映像は命自身の手によるもの。楽曲ごとに色を変え、形を変えるその光の芸術のような映像に目が釘付けになる。“愛シ貴女狂怪性”での命のシャウトやデスボイス、影丸(Dr)のスティックアクション、そして龍矢(B)のアグレッシブなプレイをドアップで堪能できるのもオンラインフェスだからこそだ。ダークな世界を描きながら、そこから急ハンドルを切って“夢に出てきた島田”や“きちゅねのよめいり”といった楽曲をぶちかます、その落差に衝撃を受けた人も多いだろうが、これが-真天地開闢集団-ジグザグである。ライブ後の爆笑インタビューも含めて、衝撃だらけの初出演、強烈だった。

ゲスの極み乙女。
そして初日のトリは2021年初のライブとなったゲスの極み乙女。だ。1曲目は“人生の針”で一瞬にして空気を変えてみせると、続けて“ロマンスがありあまる”へ。スクリーンにはでかでかとバンドロゴが映り、彼ら一流の洗練されたアンサンブルが怒涛の勢いで展開していく。川谷絵音(Vo・G)の無茶振りに応えて休日課長(B)、ちゃんMARI(key)、ほな・いこか(Dr)がソロを披露する流れからファンキーなグルーヴが炸裂する“パラレルスペック”へ。派手な映像演出などを使わず、そのぶん彼らの音楽的な奥深さがダイレクトに伝わってくるこの中盤の展開が、ゲスの凄みを物語っていた。かと思えばラスト“キラーボール”ではスクリーンにドット画になったメンバー4人が登場、どこかで見たようなゲーム画面でアクションを繰り広げるというファニーな演出も。間奏ではベースを弾き倒す課長にひたすら「親知らず痛え〜」と話しかける川谷。何のこっちゃと思ったら、この日課長は親知らずが痛かったらしい(とバックステージトークで明かしていた)。そんなユルさも含めて彼らにしか出せない空気が最初から最後まで溢れかえっていた。


おいしくるメロンパン
明けて2日目を迎え、まず登場したのはおいしくるメロンパン。アブストラクトな映像の前で“色水”から走り出すと、エメラルドグリーンの水面が蠢く映像が楽曲とマッチしていた“look at the sea”、弾むようなリズムと連動するように動くCGが楽曲をダイナミックに後押しする“5月の呪い”と、原駿太郎(Dr)の躍動するドラム、いつも通り体を激しく動かしながらベースを弾き倒す峯岸翔雪(B)、そしてグッと表情が豊かになったナカシマ(Vo・G)の歌が背景映像とひとつになってどこまでも広がっていく。開催中のツアーで得た手応えを証明していたのが、終盤に披露された最新作『theory』からの楽曲たちだった。“亡き王女のための水域”“架空船”そして最後はシンプルにバンドロゴだけを背負って“斜陽”へ。大きな振れ幅のなかで彼らにしか描けない風景を音にしてみせる、おいしくるメロンパンの底力を体感するようなライブだった。

Saucy Dog
続いてはSaucy Dogの出番だ。3人で拳を合わせて突入したのは“シーグラス”。鮮烈なバンドサウンドが、切なくも色鮮やかな風景を描き出していく。 “真昼の月”では笑顔でカメラに近づいてギターをかき鳴らす石原慎也(Vo・G)の表情が眩しい。 “雀ノ欠伸”ではせとゆいか(Dr・Cho)と秋澤和貴(B)のコーラスも楽曲に彩りを添え、3人それぞれの人柄をも伝えてくる。前回の本フェスはメンバーがコロナに感染してしまったため直前でキャンセルとなってしまった彼ら。そのぶんこの日に懸ける彼らの思いは強かった。「めちゃめちゃ楽しませてもらってます」という石原の言葉どおり、音を鳴らす喜びが画面を通して溢れてくるようなライブ。ラストの“猫の背”まで笑顔の絶えない、サウシーらしいパフォーマンスが続いた。

フレデリック
前回よりもさらにパワーアップした「遊び場」を見せてくれたのはフレデリック。“KITAKU BEATS”でいきなり踊らせると、三原健司(Vo・G)がハンドマイクでカメラにぐいぐい寄って歌いかける“Wake Me Up”へ。背景で展開する映像がサイバーなムードを演出し、観る者をどっぷりとフレデリックの世界に没入させていく。フラミンゴが公園で遊んだり踊ったりする“ふしだらフラミンゴ”、ワイヤーフレームのピラニアが泳ぎ回る“他所のピラニア”……曲ごとに目まぐるしく切り替わる映像に次々と目を奪われる。シンセビートにシリアスなメッセージを込めた“正偽”を終え、健司は「このLEDを使ってどんなおもしろいことができるか考えた」と語っていたが、まさにそのとおり、このフェスならではのインフラをフル活用してライブは展開していく。新曲“サーチライトランナー”を経て「やったら100%盛り上がる曲、やります」と“オドループ”を投下すると、最後にはもうひとつの新曲“名悪役”も披露。武道館を経てさらにタフになった今のフレデリックを表現しきるライブだった。

go!go!vanillas
go!go!vanillasはケミカル・ブラザーズを参考にした(とバックステージトークで語っていた)CG映像をバックに牧達弥(Vo・G)の深みのある歌が印象的に響く“鏡”からスタート。ニューアルバム『PANDORA』でたどり着いた新境地を存分に見せつけてみせた。スクリーンに歌詞を映し出しながら大胆に進化したサウンドを聞かせた “アダムとイヴ”をはじめ、過去曲も交えながらぐんと増えた引き出しを次々と開けていくようなパフォーマンス。カラフルでポップな映像が盛り上げるなか、メンバーそれぞれの熱いプレイも炸裂した“お子さまプレート”から長谷川プリティ敬祐(B)のシャウトに柳沢進太郎(G)のソロも響き渡り、ジェットセイヤ(Dr)のシンバル投げも決まった“No.999”への流れで徹底的にアゲきると、最後は“ロールプレイ”のアニメーション映像が切ない余韻を残した。

フジファブリック
2日目もいよいよ最後のアクト。トリを飾るのはフジファブリックだ。のっけからメンバーそれぞれの見せ場を作る濃厚なセッションを繰り出し、大人なファンクネスを炸裂させる。「行き詰まったところが始まりだと思います」という山内総一郎(Vo・G)の言葉から“徒然モノクローム”をみずみずしく放つと、激情をそのまま映像化したようなミュージックビデオが大迫力で投影された“楽園”では金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)のコーラスも生々しく響き渡る。「みんなと顔を合わせてまた一緒に音楽を楽しめる日が来たらいいなという願いを込めて」演奏された大名曲“若者のすべて”に続いて、最後は「大変なことはたくさんあると思うんですけど、光輝く未来がすぐそこまで来ていることを信じて」という山内の言葉から“光あれ”。若いクリエイターたちの生活を切り取ったMVとともに届けられたこの曲のブライトで美しい言葉とメロディが希望そのもののように鳴り響いた。(小川智宏)



●セットリスト

優里
1. ピーターパン
2. かごめ
3. 花鳥風月
4. 桜晴
5. かくれんぼ
6. インフィニティ
7. ドライフラワー

さユり
1. 十億年
2. ミカヅキ
3. オッドアイ
4. フラレガイガール
5. ちよこれいと
6. 航海の唄

ReoNa
1. Untitled world
2. Scar/let
3. 雨に唄えば
4. ミミック
5. ANIMA
6. unknown
7. SWEET HURT

-真天地開闢集団-ジグザグ
1. Promise
2. コノハ
3. 愛シ貴女狂怪性
4. 忘却の彼方
5. Requiem
6. 夢に出てきた島田
7. 復讐は正義
8. きちゅねのよめいり

ゲスの極み乙女。
1. 人生の針
2. ロマンスがありあまる
3. パラレルスペック
4. 蜜と遠吠え
5. 猟奇的なキスを私にして
6. はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした
7. キラーボール

おいしくるメロンパン
1. 色水
2. look at the sea
3. 5月の呪い
4. シュガーサーフ
5. caramel city
6. epilogue
7. 亡き王女のための水域
8. 架空船
9. 斜陽

Saucy Dog
1. シーグラス
2. 真昼の月
3. 雀ノ欠伸
4. BLUE
5. ゴーストバスター
6. バンドワゴンに乗って
7. sugar
8. 猫の背

フレデリック
1. KITAKU BEATS
2. Wake Me Up
3. ふしだらフラミンゴ
4. 他所のピラニア
5. 正偽
6. サーチライトランナー
7. オドループ
8. 名悪役

go!go!vanillas
1. 鏡
2. 平成ペイン
3. アメイジングレース
4. アダムとイヴ
5. お子さまプレート
6. No.999
7. ロールプレイ

フジファブリック
1. LOVE YOU
2. 赤い果実 feat.JUJU
3. 徒然モノクローム
4. Green Bird
5. 楽園
6. 若者のすべて
7. 光あれ


もう一度見たい方や当日ご覧になれなかった方に向けて、4月10日(土)15:00までアーカイブ配信を行っています。期間中何度でも視聴可能です。アーカイブ配信のみのご視聴でもチケットをご購入いただけます。チケットの受付期間は4月10日(土)9:59までとなっています。

また、今週末の4月10日(土)、11日(日)も引き続きJAPAN ONLINE FESTIVAL 2021 Springを開催します。
2枚目以降はチケットが¥1,600になる割引も適用されますので、ぜひご利用ください。