「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!

「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート! - All Photo by ヨシハラミズホAll Photo by ヨシハラミズホ

●セットリスト
01. 鳴らせ BAD BIRTHDAY
02. YELLOW
03. NOT ANGEL
04. 革命前夜にキスして
05. dreaming addict baby
06. スローモーション
07. 私を取り戻す為のうた
08. へいへいらぶらぶばいばい
09. ラブ・ユー・テンダー!
10. KICKS!KICKS!KICKS!
11. ふらんけんだんす
12. ドア
13. 僕等讃歌
14. TEDDY

Encore
15. LOVE TRIP(弾き語り)
16. TEDDY(弾き語り)


「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!

北澤ゆうほのソロプロジェクトとして2023年8月に始動したQ.I.S.のワンマンライブは、今回が初。ものすごい期待感で溢れ返っていた渋谷WWW Xは、スタートを告げるSEが流れ始めるや否や爆発的な手拍子に包まれた。4人のバンドメンバーに続いてステージに現れた北澤は両手を高々と広げて笑顔を輝かせ、深々とお辞儀。そして“鳴らせ BAD BIRTHDAY”の冒頭の一節を歌い上げた彼女にバンド演奏が合流して、力強いサウンドが高鳴っていった。続いて“YELLOW”“NOT ANGEL”“⾰命前夜にキスして”を一気に披露。セミホロウボディの黒いエレキギターを弾きながらビートを刻み、時にはソロをダイナミックに奏でながら歌ったライブ序盤の時点で、猛烈に楽しくて仕方なかったのだろう。「頑張って準備をしてきたので悔いが残らないようにめちゃめちゃ楽しみたいと思います! みんなも私たちに置いていかれないように最後までついてきてください!」という最初の小休止での彼女の言葉には、活き活きとしたエネルギーが漲っていた。

「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!
「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!

「次は少し落ち着いた感じで、いろんな思い出を浮かべながら書いた曲たちを演奏したいと思います」と言ってから突入したブロックでは、彼女の歌とじっくり向き合うことができた。“dreaming addict baby”と“スローモーション”は、公式YouTubeチャンネルで公開されているデモ音源もとてもいい。楽しいことばかりでもなく、自分の脆さや醜い感情とも直面することになるのが恋愛だが、このような部分を表現するのも北澤の創作の大きなテーマとなりつつあることを感じさせてくれる2曲だ。ピアノ伴奏と歌から始まり、激しいバンドサウンドも交えながら展開した“私を取り戻す為のうた”も、痛みを滲ませた歌声が徐々に力強さを増す様に引き込まれずにはいられなかった。

「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!
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「髪の毛切りました! こんなに短くしたのは久しぶり。不安だから鏡でチェックする……意外といけてた(笑)」――突然ヘアスタイルを気にし始めたのが微笑ましかったMCタイム。「Q.I.S.が8月に始動して、今日が初めてのワンマンライブです。自分の気持ち的にはみんなとこうやって直接会える今日が本当の意味で始まる瞬間だなと思っています。今後音楽を続けていく中でも、今日という日はずっと忘れないと思います」という言葉には強い実感がこもっていた。そして「ここからがQ.I.S.の本領発揮という感じです。ハンドマイクで踊ったりしながら歌いたいとずっと思ってたんです」と言い、観客とのコール&レスポンスを楽しんだ彼女が歌い始めたのは“へいへいらぶらぶばいばい”。身軽なハンドマイクスタイルでステージ上を巡り、三日月形のタンバリンを振り、飛び跳ねたりもしながら歌う姿は無邪気そのもの。観客も明るく飛び跳ねていた。内田真礼への提供曲のセルフカバー“ラブ・ユー・テンダー!”。撮影がOKである旨が告げられ、観客が一斉に掲げたスマホの液晶画面が、曲を彩る絶妙な演出にもなっていた“KICKS!KICKS!KICKS!”。手拍子の嵐を巻き起こした“ふらんけんだんす”……躍動する音に身を任せながら開放的に盛り上がれる4曲が続いた。

「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!
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中盤のMCタイムで、彼女はthe peggiesが活動を休止してからの約1年間を振り返った。「この1年はとても大きな1年でした。たくさんのものを失った気持ちで、自分のアイデンティティになってたものが突然いくつも自分の手元からなくなっていって、『一体自分は誰なんだろう?』というところからこの1年が始まりました。『表に立って自分の曲を歌うことはもうやらなくてもいいのかな』と思ってた期間も結構長かったんですけど、私がたった一歩進むためだけにたくさんの方々が背中を押してくれました。たくさん泣いたりしたんですけど、やめたいと思った時期を乗り越えて、今ここでこんなに大きな声でみんなの前で歌ってる自分を私は本当に誇らしく思います。痛みを知ったことで、みんなが挫けそうになった時にみんなの痛みにさらに寄り添えるような人になれたような気がして……。みんなの傷に、より温かい手で触れられる自分でここに立っていることも嬉しく思います」――この言葉を噛み締めると、彼女がステージで歌っていることが改めて嬉しくなった。

「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!
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「ワンマンに向けていっぱい曲を作ったんですけど、次はバンドの時の曲をやりたいと思います。バンドの時の曲は本当に大切で、簡単にやりたくないし、それに甘えたくないとも思うんですけど、いちばん自分の心を深く抉った曲を、またひとつ大人になった私に歌わせてあげたいなと思って持ってきました」と語ったあとに届けられたthe peggiesの楽曲“ドア”。ピンスポットを浴びながら歌い始めた彼女にバンドが音色を重ね、Q.I.S.として曲を輝かせる様が素敵だった。続いて披露された“僕等讃歌”は、Q.I.S.の未発表デモ曲として公式YouTubeチャンネルに公開されたが、実はthe peggiesのライブでも演奏したことがあったらしい。晴れやかな気持ちでパレードするかのようなサウンドは、Q.I.S.の大切な門出であるこのライブにとてもふさわしく感じられた。

「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!

「私は音楽がこの世界に存在するものの中でいちばん好きなんですけど、好きなことをしていると、時にはとても苦しい気持ちになることがあります。そういう時間がすごく長かったこの1年なんですけど、たくさんの人たちのおかげで歌い続けたいと決意することができました。その選択が正しかったと今日思っています。笑ってここに立っていることを1年くらい前の自分に教えてあげたいです」と想いを語り、一緒に演奏をしてくれたメンバーを紹介。そして「これからも歌い続けるという自分の中の大事な気持ちを詰め込んだ曲です」という言葉を添えた“TEDDY”で本編を締めくくった。一時は表舞台から退くことも考えたという彼女の決意を刻んだこの曲は、リスナーに勇気を授けると同時に歌っている当人を鼓舞する曲でもあり続けるのだと思う。フロアから届けられる大合唱を浴びて心底嬉しそうな表情を浮かべた彼女は、ひと際力強く歌声を響かせていた。

「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!
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アンコールを求める声に応えてステージに戻って来た北澤はオリジナルグッズを紹介したあと、4月に東京と大阪で対バンライブを開催すること、モバイルファンクラブの開設を発表し会場は大きな歓声に包まれた。また、オリジナルファッションブランド「THIS IS MY JAM」と彼女が好きな「パワーパフガールズ」のコラボレーション商品の企画が進んでいるという告知も観客を沸かせた。そして赤色のアコースティックギターを手にした彼女は、観客に問いかけた。「北澤ゆうほがもう一度こうやって自分の歌を歌う、自分にとってもすごく大事な日なので、最後はみんなと1対1で歌いたいなと思って。候補を持ってきたので、どっちか選んでください」――用意されていた候補の2曲は、the peggiesの“LOVE TRIP”と“そうだ、僕らは”。観客の挙手の数で選ばれた“LOVE TRIP”を弾き語りで歌った声が、とても温かかった。

「今日という日を絶対に忘れない」――北澤ゆうほが溢れ出る創作意欲と歌う喜びを輝かせたQ.I.S.初ワンマンライブをレポート!

「たくさん頑張ったり頑張らなかったりしながら、私らしく音楽と一緒に歩んでいくので、これからもよろしくお願いします。本編ではずっとイヤモニをしてたんですけど、今は何もしていないので、ダイレクトにみんなの声が聞こえる状態です。最後にお願いなんですけど、この状態でもう一度みんなの歌声を聴きたいです。また歌ってくれますか?」――彼女の言葉に応えた大合唱が起こった“TEDDY”が、ライブのラストを飾った。本編の最後でも歌ったこの曲は、アコースティックギターの弾き語りでも爽やかなエネルギーを放っていた。歌い終わったあと、サポートメンバーの4人をステージに呼んだ彼女は、観客で埋め尽くされたフロアを背景に記念撮影。「この寂しさが次のライブへの爆発に繋がると思います。また必ず会いましょう。本当にありがとうございました!」と挨拶をしてステージをあとにした彼女を、大きな歓声と拍手が見送った。清々しい余韻を残して終演を迎えた初のワンマンライブ「Q.I.S. First ONEMAN LIVE "Queens In Sweaters"」。ステージで歌う北澤が心底楽しそうだったことも含めて、これからのQ.I.S.の活動への期待をとても高めてくれる公演だった。(田中大)

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