【特集】[Alexandros]の軌跡とあらたな決意が交わった夜── 歴代ドラマーが集結し、川上が愛を叫んだ「15th Anniversary VIP PARTY '25」レポート!

[Alexandros]が12月13日(土)・14日(日)の2日間にわたりTOYOTA ARENA TOKYOで開催した「[Alexandros] 15th Anniversary VIP PARTY '25」。15th Anniversaryと冠してはいるものの、インディーズデビューから15周年というのは当人たちからすれば「気づけば」「そういえば」くらいのテンションだったようで、それよりも「VIP PARTY」と題したライブを7年ぶりに開催したことのほうが意味合いとして大きかったと思う。彼らの定義する「VIP」とは「VERY IMPORTANT PEOPLE」であり、単数系のPersonではなくPeople。要は会場を埋め尽くし、配信でもその様子を見守ったファン一人ひとりのことに他ならず、まさしく彼らへの感謝デーとも言うべきプレミアムな2日間となった。

筆者が観たのは初日。まだ完成して間もないTOYOTA ARENA TOKYOは、ステージとアリーナを構成する楕円形の空間を2階席と3階席が270°取り囲むような構造で、メインステージからアリーナ中央に向かって花道が、その先端にミニステージが設置されている。BGMとして流れていたPRIMAL SCREAMの“Kill All Hippies”(先日急逝したベーシスト・マニのプレイが印象的な曲であることにグッときたりも)の途中でステージ背後の巨大スクリーンがゆっくりとホワイトアウトしていき、ライブのスタートを告げるカウントダウンがはじまる。1まで進んだと思いきや「What the Fuck」の表示が出て10に戻って焦らす、そんな遊び心が彼ららしい。

ほどなくオープニング映像が流れ出すと、レーザーがバンバン照射される中をなんと川上洋平(Vo・G)、磯部寛之(B・Cho)、白井眞輝(G)がおもむろに花道へと現れたではないか。登場シーンも意外なら選曲も意外。いきなりの“Kick&Spin”でライブの火蓋は切られた。白井のフライングVが唸りをあげる上を雄大なメロディが躍り、ハンドマイクで歌う川上が煽るまでもなく大音量の歌声に包まれる会場。ひとりメインステージに鎮座したリアド偉武(Dr)の繰り出す跳ねたリズムを浴び、アリーナもスタンド席ものっけからバウンドしまくりだ。1サビ終わりから全員がステージに揃って残りの演奏を終え、ここで普段ならSEとして流れる“Burger Queen”の生演奏へ。さらには休む間もなく、シャープなカッティングと変則的展開、ダンス要素で味付けしつつ猛然とひた走るガレージパンク“クソッタレな貴様らへ”を投下する。

ライブに先駆けて投稿されたXのポストに「セトリが魔境の域です」と書かれていたので、そのつもりで挑んだのだが序盤から完全に予想の上をいく選曲が続いた。1stアルバムの収録曲なので本来なら十分レア曲扱いになるはずの“For Freedom”や“de Mexico”が、むしろ聴き慣れた印象で飛び込んでくるあたりが、この日のセットリストの異質さを物語る。上記2曲の間に挟まった“Dear Enemies”や6曲目の“You Drive Me Crazy Girl but I Don't Like You”なんて、10年単位でも数えるほどしか演奏されてないのではないだろうか。しかも後者に至ってはアルバム収録曲ではなく、カップリング曲である。「本当に知ってる人いるのかな、ついてこれてる?」なんて川上は笑っていたが、観客席に戸惑う様子は皆無。むしろ一曲始まるごとにそこら中から嬉しい悲鳴が聞こえてくる。

クリーントーンのアルペジオとうねるような磯部のベースラインでメランコリックな音像が立ち上がる“Kiss The Damage”、盛大なクラップに導かれてはじまった“FISH TACOS PARTY”あたりは、スクリーンに映像を映しながらのプレイでより没入感を高めていく。間奏でみんなが飛び跳ねるのに合わせてレーザーもバウンドさせたりと、大会場ならではでありながらライブの醍醐味は損なわない演出で掌握していく手腕は見事。“Swan”ではドラムンベース調のビートで貫くアレンジの妙に興奮すると同時に、川上の穏やかかつほろ苦い中低音域ボーカルにもしっかりヤラれた。

「今からやる3曲はもっともっとレアな曲です。⋯⋯と言えば聞こえはいいけど、あんまり人気ない曲かもしれない」(川上)
「おーおーおー(笑)。そんなことはないはずですけどね」(磯部)

なんてやりとりから披露されたのは、磯部が作曲を手がけたワイルドなビートとセクシーなベースラインが印象的な“Dance With the Alien”と、川上・白井作曲によるパンキッシュなアッパーチューン“Adam's Apple Pie”だ。さらにメドレーの形でもう一曲、“Onion Killing Party”が続く。ここで勘付いた人も少なくなかったのではないだろうか、この曲の作曲者は前ドラマーの庄村聡泰である。曲中、「登場していただきましょう、スペシャルゲストです!」(川上)と呼び込まれたその人に、割れんばかりの歓声が降り注ぐ。各メンバーとハグしたりグータッチしたりしたあと、花道を進んでいってうやうやしく一礼、ファーコートを脱ぎ捨てて上裸になると「TOYOTA ARENA、かかってこいよ!!」と叫ぶ──という一挙手一投足が、あまりにもサトヤスすぎて胸が熱くなる。そのままラストをリアドとのツインドラムで叩き切ってから、かつて庄村加入後に最初にリリースした“city”へ。激烈ながらとんでもなく粒揃いなビートと、華のあるフィルの数々。やたら高い位置にセットされたクラッシュシンバル。[Alexandros]がスターダムを駆け上がっていった時期を支えた彼のドラムプレイを、仮にリアルタイムでなくともみんな知っている。もう言葉はいらなかった。

ドラマはまだ終わらない。庄村が去ったあと「伝説のドラマーです」と紹介され登場したのは、「デビューするまでの10年を支えてくれた」初代ドラマーのイッシーこと石川博基だ。「ヤバい、これは泣くな」と興奮を隠し切れない川上。曲はインディーズ期より以前から存在する“温度差”だった。ミドルテンポを刻む堅実なビートに乗って、シンプルなアンサンブルが一際あたたかさを帯びて響く。磯部が、白井が、石川のほうを向きながら頷くようにリズムを取る姿は、15年の時間をじんわりと埋めるような音を通した会話に見えた。演奏を終えたところで、リアドと庄村も戻ってきてトリプルドラム編成で“Adventure”を演奏することに。スクリーンに3分割で大写しとなったドラマー3人へ向け、会場中からシンガロングが送られる。黎明期とブレイク期、そして現在。3人が背負ったそれぞれの時代が未来へと繋がれていく、そのことを象徴する不屈のアンセムとしての“Adventure”、なんて完璧な展開だろう。

「まだまだ歴史を作っていきますんで、よろしくです」

川上の頼もしい宣言とともに、折り返しを過ぎたライブはさらなる加速を見せた。地鳴りのようなリアドのドラムから突入した“金字塔”に続いては、跳ねるリズムと上空を旋回するようなピアノ&ギターリフが軽やかな“Run Away”へ。久々と言われて意外な気もした[Alexandros]印のギターポップ“明日、また”を経て、スリリングな疾走と壮大なスケールで大合唱を巻き起こした“閃光”に、憂いを帯びた前半からサビ、大サビへと視界が開けていく初期の名曲“Kids”。15年間⋯⋯いや、石川が在籍したデビュー前も含めれば20数年の間に彼らが見出し、磨き抜いてきた黄金律に彩られた新旧キラーチューンの数々を「これでもか」と浴びせかけていく。よくよく考えれば、ミドルテンポの曲は“温度差”とラスト前に披露された“PARTY IS OVER”くらいなので、レア曲揃いなだけでなくとんでもなくアグレッシブな内容である。トドメの一撃は“Claw”。紅蓮に染まるステージから放たれる、獰猛なジャングルビートにヘヴィなギターリフ、ドスの効いたベース。言葉遊びを散りばめたリリックを端正に、けれど雄々しく歌い上げるボーカル。演奏を終えるとノイズを撒き散らしたまま4人は悠然とステージをあとにしていった。

普段心に抱えているあれこれを全部投げつけてほしい、そのために自分たちは存在している──。アンコールで眼前の「VIP」たちへ思いの丈を語ってから、「ファンって言いたくありません。友達以上の何かです。本当に愛してます!」と言葉を添えたのは、“You're So Sweet & I Love You”。どデカいコール&レスポンスを巻き起こしたあとには、再び庄村と石川を呼び込んでの“ワタリドリ”で会場全体を波打たせ、震撼させる。曲が終わると6人で肩を組んでラインナップ。これで大団円かと思いきや、「彼らに胸を張れるように、我々はもっともっとデカくなります」と野心を滾らせ、最後に15年間の様々なライブ映像を背負いながら演奏されたのは“超える”だった。

All photo by 河本悠貴
紆余曲折ありながらも彼らがバンドを続けてきたからこそ、その姿に惚れ込んだ我々が追い続けてきたからこそ実現した、歴代ドラマー揃い踏みという絶景。そのあとを受けるのが本編では“金字塔”、アンコールでは“超える”と、最新アルバム収録曲かつ「未来」や「その先」へと進もうとする意志が明確に込められた楽曲だった点こそ、彼らのアティチュードそのものだった。インディーズデビュー15周年はあくまで通過点に、次なる一歩となる2026年のツアーと「THIS FES」も既にアナウンスされた。勇往邁進。[Alexandros]は飛び続ける。(風間大洋)



「[Alexandros] 15th Anniversary VIP PARTY '25」
2025.12.13 東京・TOYOTA ARENA TOKYO

●セットリスト
01 . Kick&Spin
SE Burger Queen 〜 生Burger Queen
02 . クソッタレな貴様らへ
03 . For Freedom
04 . Dear Enemies
05 . de Mexico
06 . You Drive Me Crazy Girl but I Don't Like You
07 . Kiss The Damage
08 . FISH TACOS PARTY
09 . Swan
10 . Dance With the Alien
Adam's Apple Pie
Onion Killing Party
11 . city
12 . 温度差
13 . Adventure
14 . 金字塔
15 . Run Away
16 . 明日、また
17 . 閃光
18 . Kids
19 . PARTY IS OVER
20 . Claw

Encore
21 . You're So Sweet & I Love You
22 . ワタリドリ
23 . 超える