平井堅 @ 日本武道館

平井堅がブレイク以前から長年続けている、アンプラグド編成による歌と演奏を、座ってお酒を飲んだり食事をしたりしながら楽しんでもらおうというシリーズ・ライヴがこの『Ken’s Bar』。数年前にCD版も出てますね。最近は夏の恒例ツアーと化していて、今年は香川・仙台・宮崎・東京・和歌山で開催。

カヴァー曲、自身の代表曲、マニアックな曲の3つを取り混ぜながらライヴは進むんだけど、そして歌がもういちいちすばらしいのは今さら言うまでもないんだけど、改めて強く印象に残ったこと。というかこれ、今回に限らずライヴを観る度に思うんだけど、この人ほどステージの上で無防備な人はいない。特にMC。ほんとに素でしゃべっている、ようにしか見えない。

人前に立って歌う人って、たとえどんなに素に見えたって自己演出入っているわけで、というかそういう自己顕示欲とか自己演出欲のない奴じゃないと人前に立って歌うなんて職業は選ばないわけで、それこそライヴハウスで歌ってるロック・バンドだってみんなそうだと思うんだけど、平井堅の場合、ただ思ったことや感じたことを口にしたり態度に表したりしてるようにしか見えないのだ。しかも、ミュージシャンの中ではテレビによく出たりするような芸能寄りの人であることを考えると(この日のMCでも「僕って芸能人じゃん?」とやや自嘲気味に言っていた)、それって驚異的なことだと思う。奥田民生と張るのではないか、その「武装せずにステージに立つ感じ」は。もしかしてそこまで計算の上での自己演出だったら、「まいりました」と言うほかないが、たぶん違うと思う。(兵庫慎司)