Caravan@川崎クラブチッタ

Caravan@川崎クラブチッタ - pic by Taro Mizutanipic by Taro Mizutani
『Caravan LIVE EXTRA 2009 with Hirohisa Horie The folky smoky reviue』と題して、堀江博久と2人きりでステージに上がる、川崎クラブチッタ・名古屋クラブダイアモンドホール・大阪AKASOの3公演の、アコースティック形式のライブ。その初日。
通常なら、9月30日に出たニュー・アルバム『Luck and Pluck』のリリース・ツアーを回る時期ですが、それは来年の4月から5月に行うそうです。内情は知らないけど、MCで、来年のそのツアーは、この2人とGREAT2(高桑圭と白根賢一)で回ることを告げていたのと、「今回2人で1週間練習してみて、いかに普段圭くんと賢ちゃんに甘えていたかがわかった」みたいなことを言っていたので、大忙しな2人のスケジュールを押さえられたのが来年春だったので、じゃあリリース・ツアーは春にしよう、でもそれまで何にもやらないのもあれだから、こういうちょっと特別なことをやってみよう、というような事情だったのではないか、と推測します。
って、堀江くんもすさまじく忙しいはずだけど、ちょうどthe HIATUSのツアーとツアーの谷間の時期なので、可能だったのだと思われます。

で。ここからが、困った。
2人きりのライブ、といっても、Caravanが歌とギターとハープ、堀江博久がキーボード、というだけではなく、2人それぞれがいろんな楽器を使ったりいろんなリズムを用いたりする、バラエティに富んだ楽しい内容だったんだけど、詳しく書くとネタバレになってしまう。
もうひとつ。この日のステージは、というかステージも客席も含めたホール内のデザインは、ちょっと特別なことになっていた。が、これも、名古屋・大阪でもやるだろうから、書けません。うー。
まあ、要は、そのステージセットやデザインまで含めてCaravanと堀江博久の表現になっており、演出になっており、ゆえに我々はホールのドアを開けた段階で既に「うわあ」ってちょっとびっくりして、楽しくなる、というようなことです。
ハナレグミや100sのライブもそうだけど、こういうふうに「ステージのデザインまで含めて表現です」みたいなアーティストか、逆にフラカンや曽我部恵一バンドみたいに「デザインもクソもありません」みたいな、演出ゼロでむきだしなステージに立つバンドか、そのどっちかに振りきれている人が、これから残っていくんじゃないか。
とか、ちょっと思った。

で。当然ながらセットリストも書けませんが、ニュー・アルバムの曲と、過去の代表曲が絶妙に配分された並び。イントロが始まる度に「おおっ!」とうれしくなる。フロアもそういう反応。過去の曲だけじゃなく、ニュー・アルバムの曲でもそうなるのが、ファンの真剣さを表している。

で。そもそもこういうライブをやった理由として、リズム隊のスケジュールが合わなかったというのもあるだろうけど、自宅録音&自分以外のミュージシャンとしては堀江博久のみがお手伝い、という、とてもプライベートなやりかたで作られた、ニュー・アルバム『Luck&Pluck』を再現する方法として、これが最もふさわしかった、というのもあるのではないか。
ということに、観ていて、途中で気づいた。曲によっていろんな楽器やリズムを使いながら、いろいろ、あれこれプレイしていく2人のさまは、そのまま自宅録音の現場を公開しているような、濃密さと親密さに満ちていた。で、その濃密さと親密さが、満員のチッタいっぱいに広がっている感じだった。堪能しました。



ここから蛇足です。ライブレポートの範疇から外れるので、レポートだけでよい人は、ここで読むのをやめていただければと思います。


終始、そんなふうに濃密で親密で、あったかくてフレンドリーで、友達の部屋に招かれているみたいなライブだったんだけど(2人のMCもやたら長かったし)、途中で一瞬、そのあったかさが崩れた瞬間があった。
フロアから「がんばれー」と声をかけられたCaravanが、「がんばれってなんだよ」と言ったのだ。

僕も、「がんばれ」って、言うのも言われるのもとても抵抗を覚えるタチなので、単にすごく共感した、というのもある。
ただ、この場の空気を壊してまで、そう返した、そこに、普段あんまり見せない、この人の本質みたいなものが見えた気がしたのだ。
気がしただけです。なので、以下はかなり僕の想像や妄想も入っています。というか、ほぼそれかもしれません。

この瞬間以外は、Caravanはこの日も、フレンドリーで優しくて、人なつこかった。これもネタバレにつながるので詳しく書けないけど、MCで思わず「ジンとしました」と口にして、場にあったかい感動が広がった瞬間もあった。
ただ、こうした、ライブでのCaravan本人と、彼の音楽が持っているあたたかさや人あたりのよさは、ある意味、何かをあきらめているからだと僕は思っている。
言葉が足りないな。より正しく言うと、何かを得るために、何かをあきらめているということだ。わかりやすく言うと、自由を得るために、孤独から逃れることをあきらめるとか、そういうことです。

Caravanの歌には、旅がテーマになっているものがとても多い。というか、アーティスト名からしてそうなので、旅が音楽のテーマそのものになっている、とも言える。
常に旅をする、ということは、いいもののようにも思えるけど、つまり「居場所がない」ということでもある。その「居場所のなさ」と向き合うこと。逃げないこと。同じく、孤独から、所在なさから、悲しさやつらさやむなしさから、大げさに言うと絶望から、逃れずに向き合うということ。
それが、この人の音楽の基本スタンスであり、だからこそあんなにフレンドリーで優しくてあたたかいのだと、僕は思っている。他人に何にも期待していないから、他人に優しく、他人に近しくできるというか。
つまり、強くて、シビアなのだ。というか、強くて、シビアであろうとしているということだ。
そのシビアさを思わず見せてしまったのが、前述の「がんばれってなんだよ」と言ってしまった瞬間だった、と、僕は感じたのでした。

『Luck&Pluck』収録の“ほんのすこしだけ”という曲に、こんなフレーズがある。
「ほんのすこしだけボクラに 勇気があったら 怒りや不安や苛立ちに立ち向かっていけるかな」
つまり、この人は、怒りや不安や苛立ちが、外界から与えられるものだと捉えていない。自分の問題だと捉えていて、だから外界の何かや誰かにその責任を負わせるのではなく、自分自身で立ち向かって、なんとかすべきだと考えている。
そういう人が作っている、そういう音楽である、ということです。(兵庫慎司)
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