LUNKHEAD @ 渋谷C.C.Lemonホール

LUNKHEAD @ 渋谷C.C.Lemonホール
LUNKHEAD @ 渋谷C.C.Lemonホール
「LUNKHEADは今年で10年。まだ10歳です! まだまだ成長するLUNKHEADについてきてくれますか?」。Wアンコールの最後、“カナリア ボックス”直前のベース・合田の絶叫に、C.C.Lemonホールの客席から湧き上がる大歓声!……結成から10年、メジャー・デビューからもうすぐ6年。もっと快調に売れたバンドもいるし、トントン拍子にキャパを広げたバンドもいっぱいいる。それでも、苦悩も内省も衝動も歓喜もひっくるめた、決して耳触りがいいとは限らない自分たちの感情すべてを、鋭利でダイナミックなギター・ロックに乗せて撃ち放つ……というLUNKHEADの真摯な闘い方は、長い時間をかけてじりじりと熱い支持を集めてきた。そして、この日のライブのタイトルは『THE VERY BEST OF LUNKHEAD』。事前に流れた「東京では最初で最後のホール・ライブ」という情報と相俟って、「集大成!」という熱気に一抹の緊迫感が混じったような空気が、開演前の客席にも流れている。

 そんなオーディエンスの空気感を17:48の開演と同時に圧倒するかのように、いきなり“白い声”で響き渡る渾身の爆音! 最新アルバム『AT0M』から“花は生きることを迷わない”、そして初期の名曲“東京にて”の序盤戦であっさりトップ・ギアまで上げてみせる。チューニングの時、暗転したステージに、メンバーの誰かが鼻をすする音が響く。初のC.C.Lemonホール公演という晴れ舞台を迎えて、早くも4人の誰かが感極まって……?と思いきや、「最初のMCだけは気をつけろって言われてたのに……鼻すすってもうた」と申し訳なさそうな小高(Vo・G)。ほっとしたような笑いが場内に広がる。2月に「夢の実現のために」100%LUNKHEADの状態から離脱することを表明した石川(Dr)もこの日はもちろん参戦。その筋肉美のカタマリのような爆裂ドラミングを存分に披露している。

「今日は結構長くやるけん!」という小高の声の通り、この日は3時間に届こうかという大充実の内容。“呼吸”“闇を暴け”“スモールワールド”など『AT0M』の楽曲を要所要所に配しつつ、この10年で育んできた“インディゴ”“千川通りは夕風だった”“きらりいろ”のライブ・アンセム3連打を盛り込んだり……ハード・エッジなロック・ナンバーも4つ打ちビートのポップな楽曲も含め、10年間の結晶たる楽曲たちがLUNKHEADの「今」の熱量と乱反射してさらに眩しく光り輝くような、マジカルな時間が展開されていった。

 そして後半、「この曲ができた時、9年後にこんな広いところでやれると思ってなかったような、でもきっとこうなると信じてたような……自分たちにとってとても大切な曲です」と小高の言葉に導かれて鳴り響いたのは、珠玉のハード・バラード“僕と樹”。僕たちは骨になって忘れられていく、でもこの唄を君が思い出してくれる限り、僕はここに生き続ける……この10年間を支え続けた強固な決意が、改めて2009年の渋谷に高らかに響き渡る。感動的な瞬間だった。もっとも、「この曲のAメロを聴かせた段階で、壮(山下壮/G)が『これはバンドを代表する名曲になる』と言っていた」というせっかくのいい話を、「この曲を作ったあの六畳間に比べれば、ここかなり広いよね?」(小高) 「せっかく広いところなのに、話がミニマムですね」(合田)という脱力MCでぐだぐだにしてしまうあたりは、相変わらずのランク節、と言えるかもしれない。それでも、「ここまでこれたのは、何を隠そう、みんながおってくれたからです!」という小高の言葉には、場内から熱い拍手と歓声が湧いていた。

 小高が長い髪を振り乱しながらハンドマイクで叫び上げた“ぐるぐる”、そのカオティックな熱気をC.C.Lemonホール一丸の大合唱へと導いた“僕らは生きる”、“スモールワールド”で女性ダンサー多数登場&銀テープ発射!という祝祭感逆噴射的な本編ラストの展開も、“夏の匂い”“ラブ・ソング”などピアノ/ストリングスを擁して披露した、文字通り「ラブソング・サイド・オブ・LUNKHEAD」的な1回目のアンコールもよかった。が、何よりこの日最も印象に残ったのは、本編中盤の新曲“音のない部屋”で聴かせた壮麗かつ凄絶なギター・アンサンブル、そして2度目のアンコールで演奏したもう1つの新曲“WORLD IS MINE”の、これまでのLUNKHEAD像をも鮮やかに更新するような、赤黒く燃え上がるロック感だった。

1月20日にはその2曲を収録した6曲入り音源『V0X e.p.』をリリース、その直後には全国ツアー『ボックストリートボーイズ』(!)を実施、さらに3月28日にはそのツアー・ファイナルを兼ねて、LUNKHEAD主催の恒例ライブ・イベント・シリーズ『みかん祭り』を『絶体絶命のみかん祭り』と題して敢行!……という「2010年LUNKHEAD」のアクションが矢継ぎ早にアナウンスされ、会場の熱気がさらに高まったところへ、最後はやはり“カナリア ボックス”。《あなたに会えてよかった》というフレーズが、彼ら4人とオーディエンスの「その先」への凱歌のように、高らかに響いた。最高の一夜だった。(高橋智樹)


[SET LIST]
01 白い声
02 花は生きることを迷わない
03 東京にて
04 物思いに耽る庭
05 白濁
06 自分を愛すと決めたんだ
07 こころ
08 インディゴ
09 千川通りは夕風だった
10 きらりいろ
11 音のない部屋(新曲)
12 呼吸
13 僕と樹
14 闇を暴け
15 体温
16 ぐるぐる
17 僕らは生きる
18 スモールワールド

EC1-1 プルケリマ
EC1-2 夏の匂い
EC1-3 ラブ・ソング
EC1-4 桜日和

EC2-1 WORLD IS MINE(新曲)
EC2-2 前身/僕/戦場へ
EC2-3 トライデント
EC2-4 カナリア ボックス
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