エリオット・スミス、ビキニ・キル、スリーター・キニーなど、エッジーかつ良質なアーティストを輩出してきたアメリカはワシントンのインディ・レーベル、Kill Rock Stars。今回のショウケース・ライヴは現在在籍しているディアフーフ、シュ・シュ、ミカ・ミコ、パンサーの4バンドが集結。
1番手はドラムのジョー(元31ノッツ)、ギターのチャーリー(元ザ・プラネット・ザ)の2人編成によるパンサーが登場。ラタタットやゴシップのオープニング・アクトを務めたのも納得の、ぶっ飛んだダンス&ロックンロール。くねくねと踊りながら荒いシャウトを効かせ、ギターを持てばザクザクしたリフを刻みながらファルセットを響かせ、再びへんてこりんな踊りを始めるチャーリーのキテレツ具合とバンドの肉感的なグルーヴにフロアは興味津々。
続いてはロサンゼルスを拠点に活動する5人組のガールズ・パンク・バンド、ミカ・ミコ。セットの陰から“Boo!”といってメンバー全員が飛び出した登場パフォーマンスとヴォーカルのヴィクターが持っていた電話の受話器型をしたマイク(!)に全てが集約されていたと言ってもいいくらい、はちゃめちゃにキュートでやぶれかぶれでパンキッシュなパフォーマンス。アングラ・ユース・パンクスの瞬発力と攻撃力と女子力が束になって飛び掛ってくる、このインパクトには脱帽した。
鬼才ジェイミー・スチュワート率いるシュ・シュのパフォーマンスもすごかった。まず彼の小刻みにビブラートのかかった、心臓を鷲摑みにしてくるようなボーカルに圧倒され、超絶フリースタイルなドラムに圧倒され、キーボードと弦楽器が畳み掛けるように重なり合って生まれる音のレイヤーに圧倒された。緻密に築かれたサウンドスケープに憂いのある感情を込めたシュ・シュのサウンドは、4人編成になったことでより有機的な匂いを纏い、オーディエンスに深く突き刺さるものになっていた。
ラストは今やレーベルの看板的存在となったディアフーフ。もう一人のギターが加入したことでよりサウンドのフリーキーさに磨きがかかり、音の厚みも増して迫力満点。相変わらずサトミさんはちっちゃくて、あのあどけないヴォーカルとぶっといベースのアンバランスな魅力が冴え渡っており、絶妙な間合いでサウンドを掻き回してくれるグレッグの痙攣寸前ドラミングも素晴らしかった。結成してもうすぐ15年となるベテランのアヴァンロック・バンドがはじき出すグルーヴはかつてないほど活き活きとフロアを駆け巡り、約1時間のセットはあっという間に過ぎていた。
パンクあり、ガレージあり、ダンスありのバラエティに富んだ布陣となったが、4バンドに共通して見られたのは徹底的してオルタナティヴなアティチュード。そのアクの強さはオーディエンスにもばっちり伝播し、未曾有のグルーヴを生み出していた。(林敦子)
KILL ROCK STARS Showcase @ 恵比寿リキッドルーム
2008.06.14