the telephones × MiChi @ 代官山UNIT

2008年6月、インディーズでリリースした楽曲がiTunes Storeダンスチャートで史上初のトップ3独占というとんでもない偉業を成し遂げ、颯爽とメジャーシーンに飛び込んだイギリス育ちの女性ボーカリストMiChiと、洋と邦が奇跡的なバランスで溶け合ったダンサブルな楽曲で、間違いなく10年代のダンス・ロックシーンを牽引していくであろうthe telephones。この両者の幸せなコラボレーションから生まれた6月23日発売のシングル『WoNdeR WomaN』。そのリリースパーティが、代官山UNITで行われた。着いた時には会場は既に超満員。ライブスペースだけではとても収まりきらないほどの人数で、隣接しているバースペースにも人が溢れかえっていた。

開演時間になり、客電が落ち、ステージ上のミラーボールが点灯した瞬間にオーディエンスの両手が天高く突き上げられる。そして大音量のハンド・クラップ。The telephonesの登場だ。一曲目の“Monkey Discooooooo”から会場はもはやカオス。石毛輝(Vo/G)が「踊れー!!」というコールで何度もフロアを大きく揺らしていたかと思えば、ステージ上ではノブこと岡本信明(Key)が演奏そっちのけでエキセントリックに踊り狂う。続く2曲目“Urban Disco”では、曲が始まった瞬間にノブがステージからダイブ。それにつられて客もダイブ。ライブ序盤からこの盛り上がりようは尋常じゃない。

MCでも前日のワールドカップの日本戦に触れて石毛が「日本勝ったね。勝ってライブするのと負けてライブするのでは全然違うね」とフロアを大いに盛り上げる。後ろの長島涼平(B)とノブの着ているTシャツはしっかりとブルーの日本代表応援仕様。なんというか、さすがだ。

「MiChiを観に来た人も、俺らを観に来た人もみんな一緒なんで、楽しんでいきましょう!!」という石毛のMCで、ステージ袖からMiChiが現れ、“WoNdeR WomaN”の演奏が始まった。この曲がとにかく本当にものすごい。ライブ中こんなにアップテンポな曲で鳥肌がたったことなんて今までになかったと思う。勢いだけでなく、圧倒的な情報量でもってオーディエンスを熱狂させてみせるthe telephonesの楽曲の威力と、気持ちの良い開放感に満ちたMiChiの力強い歌声の持つ迫力が混ざり合い、倍増されて迸る完全無欠のダンスロックチューン。石毛、ノブ、そしてMiChiがステージ上で暴れ回り、フロアも負けじと踊り狂う。ダンスロックが人を踊らせるための音楽であるとするならば、アーティストとオーディエンスが共に我を忘れて踊り狂うこの光景は、ダンスロックとして絶対的に正しい、一つの完成型だ。確信を持って言える。

その後もthe telephonesの勢いは止まらず、続いてハード・ロックチューンの新曲“I Hate DISCOOOOOOO!!!”をプレイ。石毛の重鋼なギターリフが印象的で、歪んだディスコへの愛に溢れたこの曲は、これからのライブの定番になりそうだ。そして「We Are DISCO!!!」、「We Are JAPAN!!!」というコールアンドレスポンスでより一層ひとつになった会場に、本編ラストはいつもこれ、というキラーチューン“LOVE&DISCO”が爆音で鳴り響いた。「ピースな空間にしよう」という石毛の言葉通り、バンド、オーディエンス共に、一人一人の動きはとてつもなくバラバラだけど、全体として見るとこれ以上ないほどまとまっていて美しいダンス・ステージを、文字通り全員で造り上げていた。

セットチェンジを挟んで、ステージ上のミラーボールから緑色のライトが真っ暗になった会場に向けて放射状に伸び、MiChiのサポートバンドの演奏が始まった。しばらくの後カウントダウンが始まり、ゼロと同時に照明が灯り、いきなりステージ中央にMiChiが現れた瞬間、再びオーディエンスの両手が突き上がる。インディーズ時代にiTunes Storeを席巻したダンスチューン“Fuck You And Your Money”、『WoNdeR WomaN』のカップリング曲であるロック・モードな”Strong MAN”が披露され、疲れ知らずのオーディエンスが面白いぐらいに上下左右に揺れまくる。

ライブ中盤、「ロックファンでこの曲を知らない人はいないはず」という前置きから披露されたNIRVANAの“Smells Like Teen Spirit”のカバー。今まで思い思いに踊り狂っていたオーディエンスがこの時ばかりは一斉に拳を突き上げて高くジャンプ。何年経とうが決して色褪せないこの曲が持つ底知れぬ力と、それに見合うだけの存在感を放つMiChiのシンガーとしての力のぶつかり合いに、体の芯から高揚感が沸き起こる。ギターソロの最中になんと、あまりの盛り上がりように抑えきれなくなってしまったのかノブがステージに乱入。そのままMiChiと壮絶なダンスバトルを繰り広げる。

「ところで、今日はMiChiも大好きだったマイケルジャクソンが亡くなった記念日で・・・」というMCで、会場が一瞬「ん?」という空気になる。どうやら、英語で命日というのは「Anniversary」というらしく、イギリス育ちのMiChiはそのニュアンスの違いがよくわからなかったらしい。前方の客に教えてもらい「マイケルジャクソンが亡くなった命日で・・・」と言い直し、「KOTAなんかやって」と、“Black Or White”のさわりをサポートギターのKOTAに演奏させて、惜しまれながらも逝ってしまった故人を偲んでいた。

最後に、MiChiは「the telephonesとMiChi、音楽が好きで、それに助けられている人たちが今日ここに集まって、それはすごいピースなことだと思う。」と言って、最後に底抜けに明るく前向きな“PROMiSE”と、“ChaNge the WoRLd”の2曲を爆音で歌いきり、「Keep on believing yourself! You can change the world!!」という希望に満ち満ちたメッセージを我々に投げかけてステージを後にした。日本のポップシーンでは既に使い古されて、信じることが難しくなってしまったこの言葉を、歌手になるという夢を追いイギリスでの進学を蹴って日本に飛び込み自らの力で夢を叶えたMiChiは誰よりも信じている、信じられるのであろう。そしてその真実を彼女が歌うとき、そこには彼女ならではの、彼女にしか発することのできない不思議な説得力が生まれるのだ。

全ての演奏が終わって、客電が点いてBGMが流れ始めたのにの関わらず、オーディエンスのハンド・クラップは鳴り止みそうにない。しばらくしてMiChiとthe telephonesのメンバーが再びステージに現れて、大歓声が起こった。ここでは演奏はせずに、挨拶ということだった。ノブの、「みっちゃんとテレフォンズが一緒になって、ガッ、ガッ、ガッ、となって楽しめる。それが日本の良いところ」というMCから、なぜか「日本!」「愛してる!!」というコールアンドレスポンス。ものすごいピースだ。

方法論こそ違えど、MiChiとthe telephones、音楽で「ピース」を体現しようとしている両者がひとつになった時に生まれる全能感を、これっきりにしてしまうのは本当にもったいない、心からそう思った。
(前島耕)

■ the telephones
1 Monkey Discooooooo
2 Urban Disco
3 A.B.C.DISCO
4 WoNdeR WomaN [with MiChi]
5 I Hate DISCOOOOOOO!!!
6 baby,baby,baby
7 HABANERO
8 Love&DISCO

■MiChi
1 Fuck You And Your Money
2 Strong MAN
3 dance DANCE!
4 Smells Like Teen Spirit
5 We Will Rock You
6 something Missing
7 PROMiSE
8 ChaNge the WoRLd
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