星野源 @ 渋谷クラブクアトロ

星野源 @ 渋谷クラブクアトロ
星野源 @ 渋谷クラブクアトロ
7月12日(月)星野源 @ 渋谷クラブクアトロ

星野源、ソロとして人生初のワンマン、12日渋谷・13日心斎橋のクラブクアトロ行脚、の1日目。無論、ソロアルバム『ばかのうた』のリリース・ライブです。なので、2日目=心斎橋が終わってからアップしました。ご了承ください。

チケットは即日完売、超満員。ただ、超満員といっても、いろいろありますよね。安全面とか、混むことによる息苦しさとかを考える基準が、イベンター各社によって違うし、アーティストによっても違うので。同じハコでも、たとえばイベンターがA社の時の超満員は、ちょっと余裕があるところでチケットを止めているけど、B社の時の超満員は、ほんとにもうギュウギュウで立錐の余地もなし、みたいなこと、あるでしょ? 
っていう点でいうと、この日はもう本当に、「何もそこまで入れなくても」みたいな、「パンク系のバンドだったら絶対ここまでは入れないよな、酸欠になっちゃうから」と思うほどの、おっそろしい超満員でした。ライブ中盤で、ホールのドアが閉まらなくなってしまい、星野くんがステージから「すみません、みなさん、少しずつ前に詰めていただけますか」とお願いするほどの状態。で、「入れすぎだって話もありますけど……」と自らつぶやくほどの状態。まあ、静かめな音楽性のアーティストだからこそ可能なことだろうとは思うが、それにしてもおそるべし、大人計画(SAKEROCKはカクバリズム仕切りだけど、今回のこの星野くんのソロは大人計画仕切りなのです)。ここまで死ぬほど満員のクアトロを体験したのは、1991年、THE LA’Sの初来日の時以来でした。例が古すぎるが。

開演予定時刻を5分くらいあたりで、そんな超満員の、しかしアーティストのカラーのせいか「ものすごい熱気で」とか「はちきれんばかりの期待で」っていう感じではなく、わりと淡々と開演を待つ(だから混んでいてもあんまり息苦しくなかった)、そんなオーディエンスの前に、星野源、まずひとりで登場。
SAKEROCKの“インストバンドの唄”の弾き語りでスタート。続いてこれも弾き語りで、「ソロではじめてワンマンライブをやるので作った」という新曲“歌を歌うときは”を披露。ここでバンド(ベースは伊賀航、ドラムとキーボードは伊藤大地と野村卓史のグッドラックヘイワコンビ)が加わり、アルバム『ばかのうた』から“ばらばら”“キッチン”をプレイしてはちょっとしゃべり、続いて“夜中唄”“子供”を歌ってはまたちょっとしゃべり、次は“グー”“茶碗”“ひらめき”をやってはまたちょっとしゃべり……という、ゆったりとしたテンポでライブが進んでいく。
頭から最後まで自分が歌って成立させるソロ・ライブというのは、普段のSAKEROCKのライブとも、芝居の舞台とも、どうやらまったく違うらしく、1曲目の段階では「小学校の時、PCエンジンを買ってもらった時以来のドキドキです!」と喜びとテンパリが脳内でダブルスパークしている面持ちの星野源だったが、中盤あたりでは落ち着きを取り戻し、「えーと、何しゃべろうかなあ……」と考えたりしている。そんなちょいちょいしゃべりを入れなくてもいいじゃん、どんどん曲やればいいじゃん、と思ったが、どんどんやるとすぐ終わっちゃうんですね。本編14曲、アンコール4曲だし。ということに、途中で気づきました。

というわけで、とにかくマメにしゃべることに腐心するがあまり、やたらとお客さんに話しかける。「僕のソロ聴くの、今日が初めての人」「CD買った人」などとやたら質問したり、「そこの人、どこから来ました?」と問うた相手が「三重」と答えたところから「誰が一番遠くから来たか」「そして誰が一番近くから来たか」大会が始まったり(ちなみに、前者は台湾、後者は恵比寿でした)、「私、今日誕生日!」と叫んだお客さんがとっかかりになって、「昨日結婚しました」というお客さんや、「離婚しました」というお客さんがいたり……なんかもう、昔のフォークシンガーのコンサートみたいなことになっていた。

あ。それで思い出した。「昔のフォークシンガー」の日本代表:高田渡を父に持つ男、高田漣が10曲目から13曲目まで登場し、スチールギターを弾いたんだけど、彼のこともネタにしてました。星野くん、今、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』に出てますよね。そこで共演している大杉漣に、「いいお名前ですよね」と言ったところ、「そう、若い頃、高田渡さんの家におじゃました時に、まだ赤ちゃんだった息子さんが漣って名前だって知って、いい名前だなあ、俺の芸名それにしようって決めたんだ」と言われたそうです。すごくない? この話。すごいからってそのまんま書く自分もどうかと思うが。

高田漣が下がったあと、4人でアルバムのハイライト“くせのうた”をやり、本編終了。アンコールはまず弾き語りで、イースタンユースの吉野寿と作ったという“たいやき”を歌う(吉野の公式サイトでダウンロードできるそうです)。確かに吉野テイスト入った、しみじみとしつつも凛とした名曲。続いて、バナナマンのラジオ番組で、日村の誕生日に曲を贈る、という企画のために作った“日村さん38才の歌”を披露。大ウケ。この曲に関しては、言いたいこといっぱいあるけど、長くなるので明日ブログで書くことにします。で、次は SAKEROCK“選手”をやって、最後はバンドでアルバムのタイトル・チューン“ばかのうた”。気がつけば1時間半以上のステージとなって、大団円を迎えたのでした。

とにかく、総じて、本当にすばらしかった。誰をも疎外しない、すべてに対してあたたかくやわらかく人懐っこい、いい演奏、いい歌、いいメロディ。そして、「愛」や「信頼」や「情」もあるけど、それよりもはるかに強く「死」や「別れ」や「終わり」が匂う、それぞれの詞。あと、「どうしようもない不幸」や「妄想」や「断絶」を描くことにやえらく執着している、それぞれの詞。という言い方も、できると思う。
たとえば1曲目の“インストバンドの唄”、数年前、この曲の歌いだしを初めて聴いた時のショックは今も忘れない。そういう歌詞なのです。引用したいけど、これ、カクバリズムだから出せたんであってメジャーだったらアウトかも、というレベルなので、やめときます。
で。なんで星野源という人は、そういうことばかり歌うのかというと、それが、本当のことだから、だと思う。本当のことだから、ことさら声を荒げて歌ったり、暗く沈みこむようなメロディにするのではなく、淡々と、平熱で、ていねいに、音楽にしていくのだと思う。つまり、そういう人生観であり、そういう世界観の人なのだと思う。
すべてを見てしまった人。僕より一回り以上若いけど、何か、そういうイメージがあります、このアーティストには。

「幸せなものを見ると、すんごい切なくなるんです。だからこの曲とかは、自分にとってはホラーです」。“子供”を歌う前に、星野源はそう前置きした。なんで切なくなるのかというと、終わってしまうものだからだ。ずっと続かないからだ。つまり、嘘だからだ。というのは言いすぎだけど、昔々、SUPER BUTTER DOGしかやっていなかった頃の永積崇(という表記だった、当時は)にインタビューした時、「楽しいことよりも悲しいことの方が信頼がおける。だって、楽しいことってすぐ終わるじゃないですか」って言っていたのを、思い出した。
そういえば、永積くんは星野くんの学校の先輩です。自由の森学園。後輩に、小田晃生がいます。で、上に書いたような星野くんの音楽の特徴、この3人みんなに言える気がします。(兵庫慎司)


セットリスト

1.インストバンドの唄
2.歌を歌うときは
3.ばらばら
4.キッチン
5.夜中唄
6.子供
7.グー
8.茶碗
9.ひらめき
10.老夫婦
11.穴を掘る
12.兄妹
13,ただいま
14.くせのうた

アンコール
15.たいやき
16.日村さん38才の歌
17.選手
18.ばかのうた
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