NANO-MUGEN CIRCUIT 2010(東京会場)@Zepp Tokyo

NANO-MUGEN CIRCUIT 2010(東京会場)@Zepp Tokyo
NANO-MUGEN CIRCUIT 2010(東京会場)@Zepp Tokyo
NANO-MUGEN CIRCUIT 2010(東京会場)@Zepp Tokyo
NANO-MUGEN CIRCUIT 2010(東京会場)@Zepp Tokyo - pics by TEPPEIpics by TEPPEI
「今日はほんとありがとうございます! なんか……あったかくって、いいっすね。はじめっから感無量って感じで」というゴッチの曲間MCに、Zepp Tokyo満員のオーディエンス、渾身の大歓声で応える! 「洋邦ロックの垣根を取り払う」「音楽をより自由に楽しめる環境を作る」という(それこそ自身の音楽とも直結した)目的を実現するために、日本における「バンド主催フェス」の草分け的なロック・イベントである『NANO-MUGEN FES.』を敢行してきたASIAN KUNG-FU GENERATION。今年は初の試みとして、NYから招聘したラ・ラ・ライオットとアジカンの2組に各地でゲスト・アーティストを加え、広島クラブクアトロ/横浜BLITZ/Zepp Tokyo/京都・KBSホール(2公演)を巡る、計5本のライブ・イベント・ツアー形式での開催となる。なので、フェスの時のようにフード・コーナーがずらりと設けられたりマッサージ・コーナーがあったりアジカン・キヨシのオーガナイズによるバーコーナー「ゲストリアム」があったり……という会場レイアウトがもたらすお祭り感こそないものの、各アクトの前にアジカンのメンバーが登場してアーティスト紹介の「前説」を繰り広げ拍手喝采!など、『NANO-MUGEN FES.』直系の一体感が会場の隅々にまで満ちているのがわかるし、冒頭のゴッチのMCもまさにそういう空気を感じてのものだろう。「『NANO-MUGEN』では欠かせないものがありまして……それは僕らのMCです!」と、開演前の前説でもキヨシが語ってフロアから微妙な笑いが沸き起こっていたが、あれもあながち冗談ではないのである。

■テルスター
結成こそアジカンと同時期ではあるが、キヨシが「兄貴ですよ!」と前説で紹介した通り、アジカンよりも一足早くインディー・ギター・ロック・シーンに飛び出したテルスター。「理解者はいないが、後戻りはできないのだ!」(“理解者”)、「熱くなれない魂を持つ者はかわいそうですね!」(“ホントのところ”)、「楽しむっていうことにも決意がいると思うんですよ!」(“決意はあるのか”)……という横山(Vo・B)の曲ごとのイントロダクション的な語り、そして何よりもひりひりと胸焦がすような真摯なテルスターの楽曲が、Zeppのオーディエンスをじりじりと揺さぶっていく。そんなシリアスなロックのムードを、「アジアン・チョンフー・カネレーションさん、ありがとうございました!」とわざと言い間違ってみせたり「僕、この後は仕事で帰らないといけないんだけど! 仕事やっててもZeppには出れる!(笑)」とぶっちゃける増沢(G・Key)の悪戯っぽいMCが異次元のカオスへと叩き込んでいく。“We Love You! You Love Us!”では珠玉のコール&レスポンス! 30分ほどのアクトながら、がっちりと魂のギアが合った手応えを残してテルスターの4人だった。

■環ROY
「今日は、僕たちのフェスに初めてヒップホップの人を呼んだんで、すげえ楽しみで……」とゴッチも前説で話していたように、ZeppのステージにはDJセットとマイクだけがセットされ、そこに環ROYがすたすたと登場! 満場のフロアを見回し「超ありがてえっす!」と思わず一言。そして、DJセットを操作しながらぐいぐいラップをかます1人DJ&MCスタイルで、まずは“vanishing point”“FRAGMENT”と、ミクスチャーとヘヴィ・ロックとエレクトロを融合したような楽曲を畳み掛け、フロアを圧倒する。強気で挑発的なラップをかましては「すみません、口悪くて……」と申し訳なさそうに語る環ROY。だが、ロック系のトラックもエレクトロもコワモテなヒップホップ・アレンジも自在に乗りこなしつつ、彼自身の「表現」世界の一部にしてみせるあたりに、彼の非凡なセンスが窺える。後半、小学生が不良ラップをやったらどうなるのか?をそのまま形にして、「牛乳吐かせる」とか「掃除当番さぼる」とかいうフレーズを硬派なトラックに乗っけてフロアの笑いを誘ったりする頃には、すっかりZeppを環ROY時空に巻き込んでいた。最新アルバム『BREAK BOY』のリード曲にして七尾旅人とのコラボ曲=“Break Boy In The Dream”を最後に披露。一見草食系な佇まいに宿る獰猛なスピリットを感じさせた。

■ラ・ラ・ライオット
山田「そしてこの後は、唯一の海外のバンド、ラ・ラ・ライオット!」 喜多「フロム、ニューヨーク!」 山田「今回が初来日なんですけど、本当に日本に来るのを楽しみに……というか、目標にしてたみたいなので」という2人の紹介MCを実証するように、最初から「イラッシャイマセ! AKGアリガトウゴザイマシタ! ワタシタチガ、ラ・ラ・ライオット、デス!」と思いっきり日本語MCを畳み掛けるウェス(Vo/学生時代に大阪への留学経験あり)。彼らは京都の2公演にも登場するのでセットリスト掲載は割愛するが、バイオリン&チェロを擁したそのバンド・アンサンブルは「ギター・ロック+ストリングス」という通常の構造とはまるで異なり、バイオリン&チェロがギター/ベースとともにまったく新しい弦楽四重奏を描き出していくような画期的なものだ。時に豊潤な収穫祭のような高揚感を鳴らし、時にタイトなビートとともにメランコリックな情感があふれ出し……という多彩な音像を、高々とジャンプしながらアグレッシブにさらに熱く煽っていくウェス。ステージ上に吹き荒れるエネルギーが、終始会場一丸のクラップへと導いていたのが印象的だった。2007年のドラマー=ジョンの不慮の死を乗り越え、唯一無二のサウンドを鳴らし続けるラ・ラ・ライオットーー全10曲、そのアートフォームの真髄を垣間見せてくれたアクトだった。「コレハ、ワタシタチノ、イチバンノ、トキオ・ショウ、デス! We'll Come Again! You'll Come Back!」というメッセージを残し、最後の曲ではウェスは柵前に降りてオーディエンスとハイタッチ! 

■ASIAN KUNG-FU GENERATION
そして、オーガナイザーにしてヘッドライナーのアジカン。こちらも曲順掲載は控えるが、今回の大きな特徴は2つ。過去曲も交えてはいるが、『マジックディスク』からの楽曲を本格的にセットリストに組み込んでいて、それがかつてないほどのスケール感と、「時代に作用するロック」としての鮮烈な攻撃性を生んでいること。そして……この日のアクトの間中、サポート・キーボード(ex.オトナモードの山本健太!)を加えた5人編成でステージに臨んだこと。これまでにもストリングス・チームと共演したり、ゲスト・ミュージシャンを迎えたことはあったが、1ツアー通してサポート・キーボードと一緒に演奏したのはおそらく初めてのことだと思う。しかもそれを、たとえば“迷子犬と雨のビート”のホーン・セクションを「代わりに弾いてもらう」というようなスタンスで、大胆に鍵盤の音色を盛り込んだ『マジックディスク』の楽曲を再現するために導入したのではなく、ピアノやオルガンなど多種多様なサウンドとパワフルなプレイでもって、初期曲含め過去の楽曲を「再構築」するために自らの音楽に投入したことがわかる。

「ありがとうございます! 嬉しいっすね!」と、Zeppを揺らすほどのジャンプと大合唱で熱狂するフロアを見回してゴッチが語る。「今歌ったの“ロードムービー”って曲なんだけど。あんまりみんな知らなそうだけど(笑)。夏になると、高校野球を思い出すんだよなあ……自分の高校野球はほとんどベンチで終わったんだけど。3年で最後に負けた時、くやしくなかったんだよなあ……もう『終わってた』から(笑)。『泣いていいのは、頑張ったやつだけだ』と思ったの。それは親父に言われたんだけど(笑)。でも、今はそう思って生きてます。ちゃんと悔しがれるように……」。ロック・シーンの最前線で、いち早く「00年代的なるもの」に(自分の足跡含め)別れを告げて、新しい言葉と音とアルバムでもって「その先」の時代へと歩み出したアジカン。そんな彼らの戦闘態勢の核心を覗いたような気がした。あたたかい拍手喝采がZepp中に広がっていく。

「テルスターに触発されたんで、懐かしいのをやります!」と“フラッシュバック”を演奏したり、ゴッチが高いアンプによじのぼって勢いよくジャンプ!という珍しい場面が見れたり……と、本編12曲のどこを切っても見せ場のカタマリのような時間だった。アンコールの最後には、ラ・ラ・ライオットのメンバーとテルスター(増沢以外)と環ROYが全員登場してセッション! ホスト=アジカンよりも、全会場をともに巡るラ・ラ・ライオットよりも、フリースタイルでラップをキメてみせる環ROYが美味しいところをかっさらっていた観もあったが、間違いなくこの一夜の充実ぶりをリアルに象徴する幸せな瞬間だった。次は27日、ゲストに石橋英子×アチコを迎えて京都KBSホールで!(高橋智樹)
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