サニーデイ・サービス@恵比寿リキッドルーム

サニーデイ・サービス@恵比寿リキッドルーム
サニーデイ・サービス@恵比寿リキッドルーム - pic by Masafumi Sakamotopic by Masafumi Sakamoto
2008年の夏に復活してから、初の全国ツアー敢行。というより、フルサイズのワンマン・ライブ自体が実に10年ぶりとなる、『サニーデイ・サービス TOUR 2010』の初日公演。リキッドルームは当然の大盛況である。そしてさらにこの日は、ドラマーの丸山晴茂が今年5月に体調不良で戦線を離れてから、久々に本格現場復帰(先日のHMV渋谷店『おつかれサマーフェス』には登場していた)するための晴れ舞台でもあった。曽我部はステージの後半、「前回の、10年前のツアーの最後はリキッドルームの、2DAYSだったのかな? そのときは恵比寿じゃなくてまだ新宿だったんだけど、またこうしてリキッドルームからツアーを始められるということが、まあ自分たちでブッキングしてるから奇跡ってこともないんだけど、そういうような気持ちです」と語っていた。つまり、いろんな意味で「再開」という意味合いが込められたツアーということになる。さすがに初日ということで演奏曲についての詳細はまだ書き記すことができないため、以下、ライブレポートというより個人的な雑感が多く含まれる文章になることをご了承頂きたい。

さて、まずはメンバー編成についてである。丸山の療養に伴ってサニーデイをサポートしていた高野勲(Key.)と新井仁(G.)は今ツアーにも引き続き参加。曽我部は序盤のメンバー紹介でこの二人の名前をコールし、次いで田中を、そして自分を、最後に丸山の名前をコールして、ひときわ大きな歓声を誘っていた。気掛かりな丸山の様子についても先に書いてしまうと、病み上がりでいきなりそんなに飛ばして大丈夫か、と逆の意味で心配してしまうくらいのプレイを見せていた。曽我部が感情任せに歌ってテンポを走らせてしまうところにグイグイと乗っていく場面もあった。

そしてバンドの演奏全般について。オープニングは静謐でジェントルな滑り出し。この序盤の端正かつ奥行きのあるプレイが、とてもリッチでアダルトなロック・バンドとしてのサニーデイの印象を先に植え付けてくれた。曽我部と入れ替わり立ち代わりでメロディの交錯を立体的に描き上げてゆく新井も、各種パーカッションやスライド・ギターなどを効果的に披露しつつ鮮やかな鍵盤プレイで楽曲に厚みと彩りを加えていた高野も、さすがに90年代後半のサニーデイのライブ・キャリアを熟知しているだけの一体感を見せてくれていた。ただ、個人的に「ああ、サニーデイを観ているなあ」という既視感混じりの感慨に浸ることが出来たのは、ステージ中盤以降のダイナミックなバンド・アンサンブルがロックなハイライトを形作っていってからのことで、序盤に受け止めた印象はやはり、良質でリッチなポップ・ソングを届けてくれる、更に一回り大人びたかのようなサニーデイの姿だった。

新しいサニーデイを見せつけるライブ、ではなかったのだと思う。実際にセット・リストは往年の名曲群を次々に披露するもので、4月にリリースされたニュー・アルバム『本日は晴天なり』からの楽曲はほんの一部分に留まっていた。とにかくイントロを鳴らすたびに「おおっ」とか「わあっ」という控え目などよめきを巻きながら、曲また曲と演奏に没入してゆくのである。MCも少ない。まともなMCはほとんど冒頭に紹介したステージ後半での一回きりであった。そのときの曽我部は、先に触れたものと前後して「当時はまだ生まれてなかったお客さんもいるだろうし」とか「丸山くんは後ろに点滴を隠しています」とか言っていたのだが。

で、その曽我部のMCで最後にポロリと零れていたのが「(サニーデイが)復活したときは、また3人で、ってやってきたんだけど、俺は新しいアルバムがとても好きで、こうしてまた5人でやることができて、嬉しいです」という言葉だった。復活後の3人だけでの活動というのは、再び動き出したサニーデイの時間の中で言えば明白に「新しいこと」だったわけだ。そういう動機付けというか行き足が無ければ、復活/再結成は成立しなかったのだろう。そして新作が生まれ、丸山の療養が必要だったり曽我部のソロ作を挟んだりしつつもワンマン・ツアーの準備が進められる中で、改めて彼らは「サニーデイをもう一度動かす」こととは何ぞや? という思いと向き合ったのではないだろうか。3人だけで新たに行き足をつけ、新曲を作ってレコーディングして発表した。でもライブには昔からのファンも来る。「新しさ」だけでは折り合いがつかない部分もある。例えば高野や新井とともにリハーサルを進める中で、かつてのサニーデイの時間と今のサニーデイの時間が繋がるのを肌で感じながら、「復活/再結成ツアーとはいかなるべきか」を考えたのではないだろうか。

穿ち過ぎな話かも知れないが、こんな風にも思ってしまったのだ。一回り大人になって再結成したバンドのメンバーが、以前より人が丸くなって妙にMCが多くなって、同窓会ムードでユルく喋りまくるパターンとか、「あれって楽しいけど、でもどうなんだ?」とか、思っていたりしそうな気がするのだ。特にサニーデイのようなバンドの場合。いや、わからないけれども。単に集中していたりオーディエンスの反応を伺っていたり、或いはサニーデイという磁場の中では自然とMCが少なくなるように体が反応したりするのかも知れないけれども。ツアー日程が進むにつれて明らかになるだろうか。初日から、ダブルアンコールまで含めて全26曲、2時間超の大ボリューム。「アンコールだからもう喋ってもいいんだよ」と前置きして「もうすぐ40。もう死ぬよ。早くツアーやらないと」と告げられた曽我部の言葉も印象的であった。終演のSEが鳴り出すと同時に耳に飛び込んできた、あるオーディエンスの「うわあ、すごい良かったぁ」という漏れるような一言が、すべてを物語っていた気がする。間違いなく、素晴らしいツアーになるはずだ。(小池宏和)
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