先述したタイムカプセルは美しい伏線回収になるだろうし、このZeppワンマンが特別な夜になることは間違いない。しかし、“未完成婚姻論”のバイラルヒットという追い風を受ける今の彼らを見ていると、Dannie MayがZeppのステージに立つことは至極当然だと今は強く感じている。チケットは公演約1ヶ月半前にソールドアウト。ライブタイトルにもなっているEP『YOKAI』もリリースされ、あとはやるだけという状況の3人にどうしても話を訊きたかった。ロングインタビューになったが、来るべきZeppワンマンを迎える前に、ぜひじっくりと読み込んでほしい。インタビュー=有本早季
──“未完成婚姻論”がバイラルヒットした影響は、バンドにとってとても大きかったのではないですか?マサ(Vo・G) “未完成婚姻論”の曲の性質がこれまでのDannie Mayとは全然違うものだったのに、ああいうふうに受け入れてもらえたことは大きかったですね。今まではある程度「こういう曲を聴いてる人が好いてくれそうだな」みたいな曲の骨格があったんですけど、“未完成婚姻論”ってジャンル分けするのがむずいなと思ってて。でも、自分が聴いて楽しいなと思って作ったものをみんなに愛してもらえたのは、いちばん健全な伸び方をしたなという意識があります。だから今は、自分がどれだけ世の中に面白いものを届けられるか。「俺はめっちゃかっこいいと思うし、まだこれ世界にないと思うんだけど、どう?」っていう提示をどれだけしていけるかが、これからのDannie Mayを大きくしていくのかなと。制作のスタンスは明確に“未完成〜”以降で変わりましたね。田中タリラ(Vo・Key) 今までどうしても自分の中に「バンド」という枠があったので、ギターサウンドがいいのか、電子音ってどこまで使っていいんだろうって考えていた部分がありました。でも“未完成婚姻論”はかなり振り切って電子音を使っていて。スマホから流れてきて絶対に耳につくのって電子音の帯域なんですよね。だから絶対に必要だと思いつつ、少し「大丈夫かな?」と思いながら作ったんですが、それがしっかり受け入れられて、今までのファンの人も違和感なく聴いてくれた。自分が楽しみながら作ったもので心の中のつっかかりが取れて、自分の中で心の自由度もすごく広がりました。──“未完成婚姻論”はDannie Mayの楽曲として素直に聴くことができる曲だったので、「大丈夫かな?」と思っていたというのは意外でした。ただ、違和感なく届いたのは、Dannie Mayが7年半ジャンルにとらわれない幅広い楽曲を作り続けてきた、その土台があってこそなのかなと。マサ 面白いのが、あれって実は結婚から逃げてる男の曲なんですよ(笑)。でも世間では推し活や結婚ソングとして使われているのが現代っぽいなと思ってます。ショート動画をきっかけに、フル尺までちゃんと聴いてくれたのは、僕らが今までやってきたDannie Mayらしいメロディの感じがあったからだと思うので、今までやってきてよかったなと思います。タリラ 歌詞も、《結婚しましょうそうしましょう》って、なんと言うか──。マサ 詩的なのか?って言われるとね。タリラ そう。「おまえら流行りにいったんだろ?」的な歌詞に捉えられていてもおかしくない。でも、既存ファンも新しいファンにも「クソダセえな」って言われないのは⋯⋯「おお、ええー?」ってなりました。マサ・Yuno (笑)。タリラ まったくアンチいないもんね、あの曲。Yuno(Vo・Kantoku) 僕はちょっと違った視点で言うと、最低でもこれぐらいのバズを起こして認知されないと、自分たちが望んだものは手に入らないなと認識したんですよね。いろんなやりたいことの計画の中で、売れていないとできないことも正直あって。「は? なんでだよ」って思ってた時期もあったんですけど(笑)。バンドを始めてから世間に認められるまで、いろんなことが制約されているっていう「枷」が、ここでようやく外れた気がしたんですよね。だから、ここからはもう無敵かもしれないと思って。マサ ああ、わかる。Yuno 僕も“未完成〜”は、これ⋯⋯賭けか?とは思ってたんですよ。ただ、その枷を外すために一発ドカンといかなきゃいけないと、常にシングルを出すたびに思ってはいたから、「これでいきましょう」ってなりました。MVについても、語弊を恐れずに言うと作るまでにいちばん準備してないんです。今回は文献や資料を読み込むような準備はあえてせず、トンチキな作品に寄せていく逆張りの考え方で作っていきました。そのMVがあんなに回って、学びが多かったです。最低でもこれぐらいのバズを起こして認知されないと、自分たちが望んだものは手に入らないと認識した(Yuno)
──3人が肩ひじ張らずに作ったものの集大成でバイラルヒットに繋がったというのは本当によかったですよね。その流れも受けながら制作された最新EPの『YOKAI』は、Dannie Mayサウンドを完全に確立した作品だなと受け取りました。特にそれを感じたのは“DAME DAME”でした。マサ やっぱり「これがいちばん聴いてて楽しい」と思うものを作るのがいちばんよくて。また“未完成〜”っぽい曲を作るとなっても絶対超えていかないといけないなって意識はあったんです。だから“未完成〜”のときにちょっとやりきれなかった歌のアグレッシブ感だとかビートの鋭さは、もっとできると思っていたので、今回はできる限りやろうと。「こんな音楽どこにもない」ってやつを作りたかったので、それがすごくうまくいきましたね。僕、ラップとかまったく通ってないんですけど、ラップしたくなっちゃうんですよね(笑)。メロディの情報量をなるべく少なくして、ラップではなるべく情報量を詰め込む。このシーソーみたいな忙しなさが新しいDannie Mayのフックの鍵だなと思っていて。僕らが言ったらしょっぱいんで、このサウンドに誰かが名前をつけてくれるまで、僕らのシグネチャーサウンドにこれからなっていけばいいなと思って、曲書いていきたいですね。メロディの情報量をなるべく少なくして、ラップでは情報量を詰め込む。このシーソーみたいな忙しなさが新しいDannie Mayのフックの鍵(マサ)
──マサさんのルーツには、竹原ピストルさんのような弾き語りがあるじゃないですか。だから、自然に自分の中から出てきた曲がこうなるのはギャップがあって面白いなと。マサ ただ意外と、竹原さんもラップ調の曲が多いのでそれが根底にはあって、その要素がいろんなものと混ざり合って、出てきたのがこういう曲だったのかなって思いますね。最近はレコーディングでもやりすぎってぐらいニュアンスを出していくようにしてます。上手に歌うのも面白いんですけど、そのほうが人は聴いてくれるなと思うようになりましたね。──歌も然りですが、Dannie Mayサウンドを確立していくうえで、アレンジ面も相当大きく寄与していると思います。アレンジャーを入れるわけではなく、アレンジ面はタリラさんがずっと一手に担っていて、自分の力だけでどんどんアップデートできているのはすごいことだと思うんですよね。タリラ いや⋯⋯⋯⋯まずはありがとうございます。マサ (笑)。「まずはありがとうございます」はおもろいな。タリラ “未完成〜”を作れたのは自分の中でもデカかったんですけど⋯⋯シンプルに耳がよくなったんですよね。世界最高峰の超高いヘッドホンを買ったんです。それでいいアレンジができなかったら自分の責任でしかないんですよ。そのヘッドホン使ってる人がグラミー賞とか獲ってるから。じゃあ何がいけないんだろうって考えることができて、そうやって1個1個の音を聴いていくと、適切な音が選べるんですよね。だから、今までとやろうとしていたことはあんまり変わってないんです。センスがアップグレードしたとかではないんですけど、音選びがうまくなったという自覚はあります。で、元の音が適切だと、ミックスがさらによくなるとエンジニアさんにも言われます。マサ 確かに。ミックスの伸びしろはえぐいよね。