※当レポートは、1月29日富山のツアー・ファイナル終了後にアップしました。
「うわ、近っ!」と会場に入った瞬間に観客の誰もが驚くくらい、キャパ1500ほどの椅子席の会場は、2階後方の座席からでもステージまでの体感距離が異常に近い。そして19:05、場内が暗転し、『WORLD SKA SYMPHONY』のロゴをあしらった黒幕をかきわけてGAMO(テナーSax)がひょっこり顔を出し、指揮者のようにオーディエンスのはちきれそうな高揚感をいきなりMAXまで煽りまくった直後、欣ちゃんこと茂木欣一(Dr)のビートが高らかに響き渡ると同時に幕が開き、ステージ後方の一段高くなったお立ち台に居並ぶ黒スーツ&仁王立ち姿のNARGO(Tp)/北原雅彦(トロンボーン)/谷中敦(バリトンSax)/加藤隆志(G)/川上つよし(B)/沖祐一(Key)/大森はじめ(Perc)の7人が視界に飛び込んできた瞬間、その距離は限りなくゼロに近くなり、「いい感じで声に出して、マキシマムに身体に出して、闘うように楽しんでくれ!」という谷中の号砲のようなMCが客席のエモーションをどこまでも加速させていく……29日の富山公演で盛大なグランド・フィナーレを迎えた、東京スカパラダイスオーケストラの全32公演に及ぶ全国ホール・ツアー『“WORLD SKA SYMPHONY” TOUR』のセミファイナル=練馬文化センター公演。まだツアー2本目だった渋谷C.C.Lemonホール公演(11月2日)の模様をここでもレポートした通りの「今」のスカパラのポテンシャルに加え、「11月から丸々3ヵ月にわたって練り上げてきたツアーの集大成」のパワーが加わって、2時間以上にわたって熱風のような歓喜と一体感が会場を包み込み、キッズから子連れのベテラン・ファンまで誰もが踊り跳び歌い叫ぶ、圧巻のアクトだった。
昨年3月の最新フルアルバム『WORLD SKA SYMPHONY』を軸にしつつ、10月のミニアルバム『Goldfingers』の楽曲もどっさり盛り込んだスカパラ最新型のセットリストは下に記した通り。ツアー当初は3曲目“A Song For Athletes”と4曲目“明鏡止水”の間に組み込まれていた“WORLD SKA CRUISE”がカットされているぐらいで、曲順も含めほぼ同じ。各会場ごとに違う内容にトライする、というよりは、1ツアーを通して鉄壁のセットリストを練り上げ鍛え上げて最高の形へ向かっていく、というものだ。だから、『WORLD SKA SYMPHONY』のオープニング・ナンバー“Boppin’ Bunny”で怒濤の幕開けを迎え、“Pride Of Lions”の眩いホーンのメロディと歌が祝砲のように響き渡り、“A Song For Athletes”では谷中&加藤隆志が絶妙のソロ回しをキめ、“明鏡止水”のピアノ・ジャズのクールな空間を管楽器の旋律がたゆたうように流れ、“Finger Tips”で沖祐一がミニキーボード抱えてステージ前列に飛び出して超絶ソロをキめ、“Juggling City”ではアコーディオンを構えた沖とNARGO/谷中が鮮やかな音のパスワークを見せ、怒濤の全員ボーカル一斉砲火!の“SKA ME CRAZY”の前にはメロディオンに持ち替えたNARGOが“メリーさんのひつじ”から“火曜サスペンス劇場アイキャッチ”まで披露して場内を沸かせ、中田ヤスタカのハイパーな“流星とバラード”リミックス・バージョンが9人の人力アンサンブルでさらにでっかく花開き……という展開や演出の1つ1つに至るまで大筋はほぼ同じだし、ツアー2本目を体験している身としてはそこまで大きな目新しさや驚きはないはずだ。普通なら。しかし、再び同じツアーの公演を目の当たりにして、そのむせ返るような音の力に素で驚かされてしまった。今ツアーを通しての、音楽として/エンターテインメントとして/コミュニケーションとしての磨き上げられっぷりが、全方位的にとんでもないことになっているのだ。
「スカパラで最も危険な曲。お子さんとか大丈夫ですか?(笑)」とNARGOが紹介したダーティ&ミステリアスなナンバー“THE PEAK”、『Goldfingers』では上原ひろみとの夢のコラボを実現させていた美麗ピアノ・ナンバー“水琴窟 -SUIKINKUTSU-”といった楽曲から滲む、サウンド面でのアグレッシブで自由闊達な進化。“Like Jazz On Fire”の前には「練馬! 今日も絶好調だぜ。ここからもっと盛り上がっていきましょう! 沖のピアノが火を噴くぜ!……待てよ、その前にもう火を噴いてる男がいるぜ! ドラムス茂木欣一!」というGAMOのコールから欣ちゃんの凄絶なドラム・ソロへ突入し、「大森はじめが火を噴くぜ!」と大森のパーカッション・ソロへつないだと思ったら欣ちゃん&大森のソロ・バトルが始まってなかなか沖のピアノが火を噴けなかったり、“WORLD SKA BEACH”の後で「あのさざ波のような素敵なサウンドを出す楽器は何と言うんですか?」(GAMO)「小豆です!」(大森)という寸劇のようなやりとりがあったり……というショウ要素からもこぼれんばかりに伝わる情熱。スカもロックもジャズもパンクも完全に血肉化した上で、音楽という表現そのものをどこまで熱く楽しくスリリングにアップデートできるか?という領域を、デビュー21年目にしてなおもひた走っているスカパラ。最高だ。
「サンキューサンキューサンキューサンキューサンキュー!」。“KinouKyouAshita”の晴れやかな歌の前に語り出したMCの主はもちろん欣ちゃんだ。「オー、ベイベー! 今夜はたまらなくいい気持ちですね。めちゃめちゃいい空気が流れてます! もう、なんか……このメンバーちょっと頭おかしいんじゃないか?と思うこともあるけど……頭おかしいんだと思うよ?(笑)。でも、それってすごく幸せなことです!」と、ステージにあふれる充実感を客席にお裾分けしてみせる。10年以上前、まだ欣ちゃんがスカパラのサポートだった頃に練馬文化センターでよくライブをやっていたこと、今回はわりと平常心で臨んだツアーであり、メンバーそれぞれがスカパラとは?という原点に立ち返るツアーだったこと、そして欣ちゃん個人的にはそのテーマが「チームワーク」だったこと……を、あのハートフル過剰な口調で切々と語っていく。「豪華なフカヒレぼーん!じゃなくてね、素材をどんだけゴキゲンに料理するかっていうところが大事で。それでみんなの最高の笑顔が見れると、もうね……ミュージシャン冥利に尽きるね。これはひと言で言うと……愛だね!」。満場のオーディエンスの歓喜がさらに激しく吹き荒れたのは言うまでもない。
『ジャンプ HEROES FILM トリコ3D×ONE PIECE 3D』の主題曲2曲を収めたワンコイン・シングル『Break into the Light ~約束の帽子~/The Sharing Song ~トリコのテーマ~』とその劇中音楽を収めたミニアルバム『HEROES』を3月16日に同時リリースしつつ、5月&6月にはスタンディング・ツアーを回り、その前の4月にはメキシコで行われるフェス『Vive Latino』に出演、さらに8月6日にはスカパラ主催のスカ・フェス『トーキョースカジャンボリーvol.3』、山中湖畔で開催!……と、アンコールで代わる代わる告知していく活動内容だけでも目が眩むほどのボリューム感。「スカパラ、これからもガンガン攻めてくんで、応援よろしくお願いします!」というGAMOの言葉に続くラスト・ナンバー“愛の讃歌”が、9人の男たちのダンディな逞しさそのもののように、タフに優しく響き渡った。(高橋智樹)
[SET LIST]
01.Boppin' Bunny
02.Pride Of Lions
03.A Song For Athletes
04.明鏡止水
05.STORM RIDER
06.Like Jazz On Fire
07.Finger Tips
08.WORLD SKA BEACH
09.Boogie Stop Shuffle
10.Juggling City
11.SKA ME CRAZY
12.KinouKyouAshita
13.流星とバラード(Yasutaka Nakata Remix)
14.THE PEAK
15.水琴窟 -SUIKINKUTSU-
16.White Light
17.Just say yeah!
EC1.THEME FROM LUMPY GRAVY
EC2.愛の讃歌
東京スカパラダイスオーケストラ@練馬文化センター
2011.01.27