【特集】まさに覚醒の時を迎えたHIKAGEがロックシーンを喰らい尽くす。嘘のない新作『human. EP』を引っ提げたツアー初日をレポート!

【特集】まさに覚醒の時を迎えたHIKAGEがロックシーンを喰らい尽くす。嘘のない新作『human. EP』を引っ提げたツアー初日をレポート! - all photo by oct osawaall photo by oct osawa
「札幌のHIKAGEです。よろしくお願いします!」
どのライブにもあるような当たり前の挨拶ではあるが、GEN(Vo)がこう叫んだのはライブをまさに締め括ろうとするタイミング。この日のライブはこれで終わりだが、おまえらとの付き合いは別にこれで終わるわけじゃない、これからもずっと続くんだ。そんな気持ちから出てきた言葉なのではないだろうか。

もはやラウドロックシーンの次世代を担う筆頭株という言葉では追いつけないほどの存在感を放っているHIKAGEが4月1日に発表した新作『human. EP』を引っ提げたリリースツアーの初日が4月10日に千葉LOOKにて開催された。メタルコア色の強かった初期からそのポテンシャルを徐々に発揮し、音楽的彩りを増してきたバンドではあったが、この『human. EP』はさらにその躍進っぷりが秀逸。シューゲイザーやスタジアムロックな要素も取り込み、独自のミクスチャー感が炸裂しているのだ。当日は生憎の雨模様ではあったが、会場は熱気が充満。フロアを埋め尽くす観客が始まりの時を待ちわびていた。

まず会場を熱くさせたのは関西ハードコアクルーWEST SIDE UNITYの一員でもあり、大阪を拠点に活動するReVERSE BOYZ。このツアーでは「刺激を味わってもらって、新しい扉を開いてほしい」という想いから対バンを招いており、ReVERSE BOYZは言ってみればHIKAGEから送られた刺客ともいえる存在。その心意気を感じてか、極悪なサウンド感をこれでもかと響かせ、「暴れたいヤツらはオレらについてこい!」とYoung Dio(Vo)が言い放っていたように、ツボを押さえまくったモッシュパートも絶品。低音も高音も入り混じった強烈なシャウトと挑発的視線を飛ばしながら会場全体をグワングワンに揺らしていく。危なさ満点な新曲から「蹴散らせ!」という号令と共に放った“NEONINJA2”と畳み掛け、HIKAGEからGENを呼び込んでの“B.D.P”というラストへ向けてのラッシュも凄まじかった。

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雨による湿気という説明じゃ追いつかないほど蒸し暑くなった中、いよいよHIKAGEの登場だ。GENが「human. TOUR初日、千葉LOOK。始めようぜ!」と獣のように叫んだ後、吐き捨てるように「全員で来いよ」と呟いて『human. EP』に収録されている“raw”で口火を切るが、もう初っ端から盛り上がりが尋常じゃない。ステージから溢れ出す爆音と熱量、フロアから湧き上がる歓声とパッションがぶつかり合い、1曲目かつ新曲とは到底思えないほどのクライマックス感がすでに漂っている。

龍が昇るが如くメロディを力強く歌い上げるGEN、飛び跳ねるようにギターをかき鳴らすYASUI(G)とHalki(G)、Wataru(B)も傍若無人なステップを踏み、ISSEI(Dr)は砲撃のようなビートを叩き出す。振り返れば、1週間ほど前の「DEAD POP FESTiVAL」でも新曲を中心としたセットリストで会場を掌中に収めていたHIKAGEであり、とんでもないスピード感でシーンを飲み込もうとしていることは知っていたつもりだが、それでもガツンと食らわされる衝撃があった。

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そんな状況であっても、まだまだ始まったばかり、もっと先があるということだろう。“raw”終わりのタイミングで改めて「始めようか?」とつぶやくGEN。この前傾姿勢で全部を喰らい尽くしてやるという意気込みもいい。抜けのいいメロディアスなサビでは大シンガロングが起こり、ビートダウンすればすぐさまサークルピットで超絶モッシュが起こった“F.P.P”で特に感じたのが、HIKAGEは全員攻撃の威力が桁外れなバンドだということ。もちろん、フロントマンであるGENの存在感は特筆すべきものなのだが、そこだけに目がいくかと言われると、そうではない。5人のメンバーそれぞれが自分自身、そして観客と向き合い、ボルテージをマックスまで上げて絡み合い、巨大な塊となってフロアへ襲いかかる。決して小手先でなんとなく沸かすようなバンドではないのだ。

加えて、「最高の幕開けにしてくれてありがとう!」「おまえらがライブハウスの主役だ!」とGENが口にしていたように、それを受け止め、跳ね返そうとする観客に対して最大級の敬意を払っているのもポイントだろう。ブチ切れモードと言っていいキレッキレな音の洪水に対して起こった盛大なシンガロングを受けて、YASUIが最高かよと言わんばかりの表情でニヤリとフロアを見つめていたり、観客の上に身を乗り出して歌い上げたあと、「支えてくれてありがとうな!」と感謝を伝えるGENの姿も印象的だったはず。

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勇猛果敢な勢いのみならず、大きく深く揺らすアプローチも見せつけた中盤戦を経て「新しい挑戦を常にしてるオレたちの音楽に必死についてきてくれて、最高だと言ってくれてさ、それをやっと披露できるツアーが始まります。この初日、来てくれてありがとうございます。この曲たちがどう活きるかわかんないから、それはおまえたちに託します」と胸の内をGENが伝えてからプレイしたのが“overdrive”。スペーシーなムードも漂うサウンド感の中、空間を切り裂く歌声から大きなスケール感を誇るキャッチーなサビが広がっていく。特異な浮遊感が会場全体を包み込み、ライブで覚醒を感じた一曲でもあった。

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「千葉LOOK、ツアー初日、始めます! やれんのか、おまえら!」とGENが絶叫し、観客もその意気込みを汲んで歓喜のウォールオブデスから始まった終盤戦も圧巻の光景ばかりが広がっていく。重厚なビートとリフが押し寄せ、とんでもないヘッドバンギングとハードコアダンスを起こした“傷”もインパクト大だったが、やはりハイライトとして触れたいのは“tiny flower”だ。シューゲイザー的サウンドで耽美な歌メロと共に何が本物か、何が愛なのかを突きつける。HIKAGEの潜在能力の高さを知らしめる曲でもあり、観客もそのメッセージに共鳴するようにステージへ向けて力いっぱい手を伸ばしていた。

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そして、最終盤に差し掛かるところ、GENが「最近社会でさ、これがいい、みんなが言ったらいいって言う、みんなが悪いって言ったら悪いって言うみたいになってて。AIも発達して、何がホントがマジでわかんなくなってきてさ。こうやって生でライブハウスで会って体験しないと本当のことすら、ウソなんじゃないか、と思えてくるなと最近感じてて。音楽もそうだし、オレが言ってる言葉がウソにならないように、そういうオレたちは人間らしい音楽をずっとやっていきたくて、この新譜を出しました」と『human. EP』というタイトルに込めた想いを話したあと、「このライブハウスの空間が最高だって思ったら、また遊びに来てください。そんな簡単に日常を生きていけないかもしれないけど、オレたちはずっと音を出し続けるからさ」「そんな君たちとオレたちだったら、この先も遠い未来へ行けるよなって考えて作った曲です」と語りかけてから始めたのが“kimi no hoshi”。捧げるような歌声にもディストーションにも神聖さがあり、《We’re gonna be alright, alright, alright》を抱きしめれば心がなんだかスッと軽くなる感覚もある。その音と言葉を大切に自らと重ねる観客の姿もまた美しかった。

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ラストはそこから一変し、本能むき出しの絶叫とブラストビートで活力しかみなぎらない“human.”を投下。観客も瞬時に呼応し、天井を突き破るような勢いで熱狂し、大合唱を起こす。まさしくエンディングにふさわしいピークを迎えてライブは終了。HIKAGEはこの日を皮切りに、屈強な対バン相手を迎え各地を巡りながら、まだまだ大きいところを目指していくんだというスタンスを表すように、10月にはファイナルシリーズとして東名阪QUATTROで行われる追加公演も発表された。ライブをすればするほどバンドはタフさを増し、取り巻く輪は大きくなるに違いない。ムーブメントという表現は大げさに聞こえるかもしれないが、そういった何かの始まりを感じざるを得ない夜だった。(ヤコウリュウジ)

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