MO'SOME TONEBENDER@恵比寿リキッドルーム

MO'SOME TONEBENDER@恵比寿リキッドルーム - (c) TAKAYUKI OKADA(c) TAKAYUKI OKADA
1月後半に全国で7公演を駆け抜けてきた、MO'SOME TONEBENDER約2年ぶりの全国ツアー『TOUR STRUGGLE』の千秋楽。1年前の実験期間とアルバム『STRUGGLE』という結実を経て、ネクスト・レベルのモーサムがいよいよステージにおいても完成する段階を迎えていた。「ハロー、ウィー・アー! MO'SOME TONEBENDER!」という百々の挨拶もそこそこに、いきなり『STRUGGLE』モードの音塊の象徴と呼ぶべきナンバー“Hammmmer”が叩き付けられる。文字通りの超重量級ハンマー・ビート。サポート・ドラマー(今回のツアーではSPANK PAGE・水野雅昭)を交えて4人編成となっている現在のモーサムのステージでは、何しろ本来のドラマーである藤田が、この“Hammmmer”一曲の間にもシンセを操り、百々と共にノイジーなギター・サウンドを撒き散らし、そしてスティックを振るってパッドを打ち鳴らしてしまう。藤田の担当パート=藤田勇としか表記できない、極めて自由闊達なパフォーマンスで観る者を楽しませてくれるのであった。

新生モーサムの面白さは、このビジュアル面、というかメンバーの一挙手一投足にもある。同期を絡めた演奏の中で彼らのアクションは以前よりも大きいものになり、“アイデンティティ”で藤田は横方向への高いジャンプをくり返しているうちにステージの袖に見切れてしまったりするのだった。なんか、ファミコン時代のゲームのキャラクターみたいだぞ。今回のステージでは観られなかったが、昨年末のCOUNTDOWN JAPAN 10/11では武井と藤田が揃ってライトセーバーを振り回している場面もあった。そして何よりサウンド面に至っては、インダストリアルと呼ぶには余りにブルージーで、ロックンロールと呼ぶには余りにも重くこんがらがった、前例のないロック・サウンドをモノにしてしまっているのである。今のこのモーサム・サウンドから繰り出される“Young Lust”の、金属的なノイズが高速で転げてゆく中に百々のボーカル・フレーズと武井のアジテーションがもつれ合うさまには、フロアも抗う術無く沸騰してしまうのだった。

つまり、ビジュアルもサウンドも総合的な意味において、ショウとして過剰で、ハミ出しているのだ。感情の赴くままに暴走する、というのとは違う。楽曲は異様なコード進行を規格外のサウンドとアレンジで鳴らすものだから今にも破綻してしまいそうなのに、決してそうならない。「過剰で、ハミ出している」部分を周到に計算して、的確に狙い撃ちしているのだ。これは実験ではなく、今のモーサムにとって既に実用化されたパフォーマンスだからである。ステージ上のメンバーは笑顔を見せるわけでもないが妙に楽しそうだ。それを観て聴く者は、ひたすら重苦しい轟音を浴びせかけられているのに妙に胸を熱くさせられてしまう。そもそも、ドラマー/ソングライターという役割からハミ出してしまったままステージに立つ藤田の存在を許容し、しかも輝かせてしまっているというモーサムのバンド運営論はどうだろうか。明らかに普通ではない。普通ではないが、「過剰で、ハミ出している」ことを愛し、それをロックと呼び、言葉本来の意味でのオルタナティブとするのが、モーサムのバンド運営論なのではないか。

『STRUGGLE』からのナンバーと往年の名曲群が入れ替わり立ち代わりで披露されてゆく。眩いシンセ・フレーズと武井&藤田のコーラスが折り重なる中で“けだるいDays”のメロディがじんわりと染みていった。ヘヴィな轟音が基本にあるステージなので、時折届けられるこうした美メロがよく映える。藤田のテクニカルなギター・リフと百々のスポークン・ワード的なパンク・ボーカルが並走する“教祖様はスレンダー”、フロアから拳が突き上がる“youth”、そして2本のギターのアルペジオによる交錯を聴かせた“七月二十日”と新作収録曲群が続いた後に投下された“未来は今”は、これまで聴いてきたものとはまた異なる神聖さを纏っているように思えた。さらに“HigH”が続くという徹底的なハイライトぶりも凄い。ここでの藤田は、ストリングス風のシンセ・フレーズに合わせて指揮者のように腕を振っていたのであった。

終盤は水野&藤田(今度はバスドラに乗り上がって遥か頭上に設置されたシンバルを叩いたりしている)のツイン・ドラムも披露しつつ、本編ラストの“ロッキンルーラ”までを熱いまま走り抜けていった。アンコールでは、武井がこんな告知も行う。「もうこういう島国は飽きたんで、MO'SOME TONEBENDER、アメリカに行ってきます! テキサス! ニューヨーク! シアトル! ラスヴェガス! アーンド、ロスアンジェルス! ハッハッハー!」。その言葉どおり、3月にアメリカ・ツアーが決定したそうだ。フライヤーによると、加えてシカゴやサンフランシスコでも公演が行われる予定になっている。海の向こうでも存分にハミ出してきて貰いたい。さらに、4月6日にはなんと、ベスト盤のリリースが決定! モーサムのオフィシャルHP上で発表されているので、ぜひともチェックを。(小池宏和)

セット・リスト

1:opening~Hammmmer
2:go around my head
3:アイデンティティ
4:Junk
5:Young Lust
6:けだるいDays
7:TIGER
8:L.O.V.E.
9:Black In, Black Out
10:ダミアン
11:教祖様はスレンダー
12:youth
13:七月二十日
14:未来は今
15:HigH
16:intro~Emperor Sun & Sister Moon
17:Drum Song
18:GREEN & GOLD
19:ロッキンルーラ
EN1:BIG-S
EN2:DUM DUM PARTY
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