レミオロメン @ 横浜アリーナ

レミオロメン @ 横浜アリーナ
レミオロメン @ 横浜アリーナ
レミオロメン @ 横浜アリーナ
レミオロメン @ 横浜アリーナ
名曲“3月9日”にちなんで、これまでレミオロメンはこの日付にいくつかの作品をリリースしてきたり(今年も昨年末のツアー・ファイナルを収めたライブDVDがリリース)、また武道館ライブやゲリラ・ライブなどの企画を敢行してきたのだが、今回は横浜と神戸で各2日ずつの『レミオロメン SPECIAL CONCERT “Your Songs” with strings』を開催。タイトルどおり、ストリングス・セクションとのコラボレーションが果たされるパフォーマンスである。このテキストがWeb上にアップされるのは横浜アリーナ2日目となる3/10の公演終了後だが、前日3/9の公演を観させて貰った。

さて、まずは気になるバンド・メンバーなのだが、レミオロメンの3人は当然としても、ストリングス・セクションには岡村美央ストリングス、サポート・ギタリストに田中義人、キーボード奏者にして今回のストリングス・アレンジを担当したのは皆川真人。さらにタブッキーズと名乗るホーン・セクション(タブゾンビ&後関好宏&滝本尚史)までが加わるという、ストリングスとのコラボどころか実に強力なビッグ・バンド編成になっている。

レミオロメンの楽曲には、レコーディング作品においてもストリングス・アレンジが施されているものは多くあるが、今回のスペシャル・ライブでは「え、こんな曲がこんなふうに!」と驚かされるアレンジが随所に見られた。藤巻は「リハーサルにあまり時間を取れなかった」と語っていたが、それにしてはかなり綿密で奥行きのあるアレンジになっているのである。「緊張し過ぎて痔になりそう」と呟いて藤巻に「生中継(スカパー!)でそれ言いますか!」と突っ込まれていたのは前田だったが、つまりバンドにとってもそれほどチャレンジングなライブということだ。

もちろん、触れる人によって印象は様々なのだろうけれど、今回の大所帯レミオロメンによるパフォーマンスは個人的に、大きく分けて3つのタイプのアレンジに分けられるという気がしたので、そのことを書きたい。

・タイプA……藤巻の歌唱力に裏付けされた、レミオロメンならではの伸びやかで高く舞い上がるような主旋律に、豊かなハーモニーが絡んでゆくスタイル。これはあらかじめイメージ出来ていたし、最も多くプレイされていたし、当然素晴らしかった。最高のメロディの最高の歌が、さらに美しくドレスアップしているのだから反則モノである。

・タイプB……ロック色が強くエモーショナルなナンバーに比較的多く採用されていたアレンジで、ストリングスがまるで映画音楽のように、ときにパーカッシブに、ときにスリリングなコード感で、効果的に活躍するスタイル。

・タイプC……ファンキーな曲/ダンサブルな曲を中心にいくつか用いられていたアレンジで、タブッキーズ(ホーン・セクション)が前面に出て賑々しく煽り立ててくれるスタイル。印象がガラリと変わってこれまた楽しい。

どれも素晴らしいし、それらによってステージ展開が豊かなものになっていたわけだが、個人的にとりわけ強い感銘を受けたのが上記の「タイプB」のアレンジであった。ロック・バンドのためのロックなストリングス・アレンジというか、3ピースの機動力を損なわずにダイナミズムだけが倍加されている。サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドの“ア・デイ・イン・ザ・ライフ”が現実に目の前で演奏されていたらきっとこんなだったろうかというような、ものすごいクレッシェンドが皮膚を震わせたりもする。ステージ上であれの直撃を食らいながら演奏しているレミオロメン3人は尚更、興奮しているに違いない。もし今月末の神戸公演への参加を迷っている人がいるなら、ぜひ体感してみて欲しい。

そして、鮮やかな季節感を描き出すレミオロメンの詩情が、大所帯バンドによってドラマティックに演出されている部分もやはり圧巻である。記憶にタッチするメロディと季節感が、こんなふうに一期一会の新しいライブ体験としてアップデートされていることの凄さ。ロックは輸入文化で、日本のロックが本場のロックに学べることもまだまだ多いけれど、それでもこういうパフォーマンスに出会えると「どうだ、四季折々の情景を感じられる心は凄いだろう? 四季折々のフレーズが盛り込まれたロックは凄いだろう? そのために生み出されて歌い継がれてゆくメロディは凄いだろう?」と誰にともなく自慢したくなってしまう。

というところで結論だが、このライブを4公演のみのスペシャル・ライブのままに終わらせてしまうのは、余りにもったいないと思う。3ピース・バンドとしてのレミオロメンの良さもあるわけだし、今後すべてのライブをこの形でとまでは言わないが、状況の許す範囲内で、何らかの形で続けて欲しい。むしろ、こういうパフォーマンスが発展してゆく姿もまた観てみたい。という意味で、結果的に「記念」というよりも「希望」という形の思いがより強く残されてしまった2時間半のライブであった。(小池宏和)
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