JUMPIN’JACK FLASH@SHIBUYA O-WEST

ロッキング・オンの音楽フェスROCK IN JAPAN FESTIVAL、COUNTDOWN JAPANへの出場&当サイトRO69が運営するインディーレーベル〈JACKMAN RECORDS〉からのCDリリースを賭け、年2回、夏と冬の時期に行われるアマチュア・アーティスト・コンテスト「RO69JACK」。その歴代優勝アーティスト15組がSHIBUYA O-WESTに集結し、2日間に渡って行われるライブイベントが、この「JUMPIN’JACK FLASH」である。その初日となる本日の出演アーティストは、CoolRunnings、うすしお、Ain Figremin、日本マドンナ、snap、the crickets、真空ホロウ。音楽性もメンバーのキャラも全く異なるこの7組が繰り広げる、1組当たり30分弱の真剣勝負。出演順にレポートしていきます。

JUMPIN’JACK FLASH@SHIBUYA O-WEST
■ CoolRunnings
「1、2、3、4!」のカウントと共に勢い良くスタートしたトップバッターは、リスナーからの最も多くの支持を集めてRO69JACK 08/09を勝ち抜いたCoolRunnings。リアルな現状をシビアな視点から見つめながらも、あくまでその先に広がる理想に向かって、エモーショナルな言葉をのせた引き締まったアンサンブルで疾走していく4人組バンドである。スピード感のある“password”での立ち上がりから、「エモ」という枠を超えて展開していく様々な色調の楽曲群を出し惜しみなく叩き込み、フロアの熱をグングンと上昇させていく。そして「ライブハウスの事を、ここにいる皆の事を歌った曲です!」という、クールなバンド名に反した熱いMCからあっという間にラスト・チューンの“Stage”へ。フロントマン・鈴木(Vo/G)を中心に、オーディエンスに向かって積極的にコミュニケートを図っていく演奏中の彼らの姿から感じられた、「ここにいる、すべての人と繋がりたい」という強いエモーション。そんな彼らの真っすぐな想いが結実し、フロアを心地良い一体感で包み込んだ渾身のアクトだった。

JUMPIN’JACK FLASH@SHIBUYA O-WEST
■うすしお
バンドのルーツでもあるThe Beatlesの“HELP”にのって登場した2番手は、RO69JACK 09/10の覇者うすしお。メンバーの醸すゆるい雰囲気や、思いっきり力の抜けたバンド名からは想像がつかない程の熱量で、シンプルでオーセンティックな爆音をかき鳴らす正真正銘の「ロックンロール・バンド」だ。こっけ(Vo/G)のソウルフルな歌声がいきなりオーディエンスの度肝を抜いた“タイムマシン”でライブは始動。続く2曲目は原子力発電所を痛烈に皮肉った、“サマータイム・ブルース”RCサクセション・ヴァージョン! 偉大な先人の力を借りて、ここから彼らの勢いは急加速。4曲目“JとB”の最中の、「『遊ぼう』っていうと、『遊ぼう』っていう。『イェー!』っていうと、『イェー!』っていう。こだまでしょうか、いいえ、コールアンドレスポンスです!」というコールでフロアを沸かせると、そのまま最後の“もっともっともっと”まで一気に駆け抜けた。歌とメロディの至る所にロックンロールとの相思相愛ぶりを滲ませながら、本当に楽しそうに、嬉しそうに音に向き合う4人の笑顔が、とても印象的だった。

JUMPIN’JACK FLASH@SHIBUYA O-WEST
■Ain Figremin
3番手は、バンド結成から半年足らずでRO69JACK 10/11を制し、昨年末のCOUNTDOWN JAPANのステージに立った新鋭Ain Figremin。スリーピースならではのスリリングでタイトなアンサンブルで、背徳香るダークな世界観を描き出す大阪発のギター・バンドである。艶のある漆黒のグルーヴで会場の空気を一瞬にして塗り替えたオープニング・ナンバー“Othello”から、セットリストが進行するにつれて、薄暗くなった会場は徐々にじっとりとした湿気を帯びていくのがよくわかる。昨年末の幕張の時にも同じ事を思ったが、yokotan(B)のグルーヴィーなベース・ラインが跳ね回る“トリップ!!”、メロウなミディアム・バラード“忘れ名”と、多彩な楽曲を次々と繰り出す彼らの堂々とした佇まいは、明らかに、結成からまだ日が浅い新人バンドのそれとは一線を画している。そしてラストは「僕らは暗かったけど、次のバンドや次の次のバンドがものごっついアゲてくれると思うんで、それに少しでも繋げられればと思います」と、“You (and Me)”をプレイ。オーディエンスが恍惚とした表情で終始ステージを見つめ続けた、バンドの異様な存在感が浮き彫りになったアクトだった。

JUMPIN’JACK FLASH@SHIBUYA O-WEST
■日本マドンナ
ステージに現れた矢先に、「人が目を背けたくなるような、そういう部分を心を込めて歌うバンドです」という闘争宣言をラップでかました4番手は日本マドンナ。現代を生きるほとんどの人が漠然と感じているであろう「生き苦しさ」や「偽善」を、具体的で生々しい言葉に変えて、泣きわめくように告発する彼女達の無防備すぎるパンク・ロックはこの日も圧巻。中盤には、「前に一緒にやったバンドに『そんな歌うたって、親のこととかもっと考えた方がいいんじゃない?』と言われて、『こいつ何言ってんだ!?』と思って作りました」と新曲“バンドやめろ”を披露。その後も“生理”“村上春樹つまらない”と剥き出しの言葉を吐き出し続け、ラストの“田舎に暮らしたい”では、《何もかも捨てて田舎に暮らしたい》というあんな(Vo/B)の嗚咽にも似た悲痛な叫びがフロアに響き渡る。歌えば歌うほどに自らを傷つけていく様が、見ているこちらからも明らかなのに、彼女達は頑なまでに歌い続けるのを止めようとしない。それはきっと歌うことが、彼女達がこのまともじゃない世の中を、正気を保ちながら生き抜いていくための唯一の手段だからなのだろう。決して大げさでなく、本当にそうなのだろう。日本マドンナはこの日も、やはり、圧倒的に本物だった。

JUMPIN’JACK FLASH@SHIBUYA O-WEST
■snap
「うわっ、すげっ、ピンスポ。スターになった気分(笑)」という、ビーサンを履いた佐古(Vo/G)のマイペースなMCにより、和やかなムードで幕を開けた5番手はsnap。ギター、ヴァイオリン、ベース、ドラムという一風変わった編成の、RO69JACK 2009優勝アーティストである。夕暮れの帰り道で口ずさみたくなるような、人懐っこいフォーク・サウンドで4曲目の“カレーのうた”までゆったりと辿り着いてから、歌詞の一部が現代風にアレンジされた、大正時代の流行歌“東京節”を披露。芯の通った佐古の力強い歌声と、古き良き日本の原風景を映し出した牧歌的なメロディに、DNAレベルでノスタルジーがこみ上げてくる。フロアの温かい空気に誘われるかのように、段々とヒートアップしていく演奏のテンションが最高潮に達したところで、ラストの“僕といっしょ”へ突入。胸がすくような多幸感が充満するフロアからシンガロングが巻き起こり、最後は宗村(Vn)が頭の後ろでヴァイオリンを弾き倒して終了。短い時間ながらも確かな爪痕を残し、揚々とステージを後にした。

JUMPIN’JACK FLASH@SHIBUYA O-WEST
■the crickets
両サイドにツイン・ギター、少し下がってリズム隊、そして中央にフロントマンという立ち姿からしてもう、異様なほど「画になっていた」6番手は、RO69JACK 2009出身の5人組バンドthe crickets! 骨太のギター・ロックを起点に、あらゆるジャンルを取り込んだ突破力のある多角的なメロディでオーディエンスを巻き込んでいく、彼らの必勝パターンはこの日も快調。バンド内に3人のソングライターを擁するという彼ららしい、振れ幅の大きな楽曲をライブ序盤から連発し、フロアの熱気を一気に上昇させていく。そして林(G)と轟(G)が前に出てきてギターの音色を激しく交錯させた“loss”からのラスト・チューンは“Speak to the world”。「基本的にどのバンドも、人を元気づけたいと思ってやってると思うんですけど、僕らは一際それが強くて。最後はみなさんの未来が真っ直ぐどこまでも続いてるっていう曲をやります。」という山田(Vo)の前置き通りの、「届ける」という気概に満ちた渾身のプレイでオーディエンスを熱く滾らせ、圧勝のステージを終えた。

JUMPIN’JACK FLASH@SHIBUYA O-WEST
■真空ホロウ
イベント開始から4時間が経過し、いよいよ初日のJUMPIN’JACK FLASHもクライマックス。トリを飾るのは茨城県出身のスリーピース、真空ホロウだ。大貫(Dr)のけたたましいスネア・ロールで始まった1曲目“サイレン”から、松本(Vo/G)の歌の鬱屈した世界観とリズム隊のダイナミックなビートが正面衝突。ナイーヴで豪快な、奥行きのあるサウンドスケープが、瞬く間にフロアを飲み込んでいく。そんな、明らかに相反する二項を内包した彼らのサウンドの構造は、ライブ中のMCを聴くと一目瞭然なのが面白い。

松本「すごい感謝を、あなたたちにも、ロッキング・オンの方々にもしたくて、今こうして、しゃべっている次第です」
村田「(今日のイベントについて)すごいよね! グランドチャンピオン大会みたいなね! 紅(↑)白(↑)歌合戦みたいじゃね!」
言葉を選んで慎重に話す松本と、茨城訛り全開でまくしたてる村田(B)。要するにこの、2人のあまりにも正反対すぎるキャラクターのせめぎ合いこそが、真空ホロウのロックをスリリングで、深みのあるもの足らしめているのである。

その後も“闇に踊れ”→“被害妄想と自己暗示による不快感”とライブが進行していくにつれて、バンドのアンサンブルはギリギリの均衡状態を保ちながらどんどんと加速。ラストの楽曲“ナサム・コロニム”まで、片時たりとも目が離せない緊張感に満ちた鮮烈なアクトを披露して、初日のトリを堂々と完遂した。

強烈な存在感を放つ7組。その全てが自らの個性を爆発させることにより、自分達、そして共演者達が、ある一点において如何に特異なバンドであるかを結果的に浮かび上がらせた、初日のJUMPIN’JACK FLASH。音楽性に限った話で言えば、初日にも増して混沌とした全8組が登場する2日目も乞うご期待です!(文=前島耕/撮影=柴田恵理)
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