客電の暗転と共に、怒号のように湧きあげる歓声とオイ・コール！　そして、AXを一瞬にして百花繚乱のミュージック・ワンダーランドへと変貌させる享楽的アンサンブル！ ―― 4月13日にリリースされたニュー・アルバム『MASTER LOW GO』のレコ発ツアー、その待ちわびた第一夜は、冒頭から目もくらむような熱狂に包まれた。いつものワンマンでは、プロローグとも言えるジワジワと興奮と期待感を高めていくようなオープニングでオーディエンスを出迎えるイッチャンだが、この夜は初っ端からギターかき鳴らして、ステージを所狭しと疾駆。そのなりふり構わぬスタート・ダッシュには、ひとつの理由があった。前々日になって、想定外のハプニングがイッチャンのもとに舞い込んだのだ。つまり、“MASTER LOWサウンドの要”といって過言じゃない盟友・TGMXが、インフルエンザを罹患して戦線離脱せざるを得なくなってしまったのだ。その顛末を、イッチャン自身がステージで語っていた――。

「いつもと違うでしょ？　いや、TGMXがインフルエンザに罹っちゃって。正直、ヘコみました。普通どうしようと思うじゃん？　でも、こんな時だからこそ、やるべきなのよ。今、俺、試されてんのよ！」。さらに声を大にして、「不可能はない！ ドンドンやろうよ！　こういうのパワーにして、届けましょうよ！　いつも120％の力出してるけど、今日も120％でいきます！　4649!!」。そう、危機的状況に怯むどころか、真っ向から立ち向かって切り拓いていくのがイッチャンの流儀だ。だからこそ、いつだって絶好調なイッチャンだけれど、加えてこの夜は“闘志”がハンパじゃなかった。ハミ出るどころの話じゃない、前述のMCのとおり、もうモロ出しだったのだ。揃いのベストでキメたMASTER LOWの面々との、強固な信頼に裏打ちされた重厚級サウンドで、『MASTER LOW GO』収録曲をはじめ鉄板ナンバーの数々を矢継ぎ早にプレイ（いきなりAXをハンドクラップと絶頂感に包んだ、“Mr.Jones”の即効的ポップネスはスゴかった！）。漢6人衆のみなぎる闘志と一級のエンターテイナー・シップで、AXは白熱の闘技場になったり、ネオンきらめく遊園地になったり、ある場合には親密で気のおけないパーティ会場になったりもした。そのいずれにおいても、オーディエンスの歓喜が弾けていた。
ブレイクでは、客席からの声に「9月18日？ なんかあったっけ??」と、すっとぼけるイッチャン。「そう、『AIR JAM』フル出場です！　言いたくて仕方なかったんだよね（笑）。アイツら、いつ再結成してくれるのかと思ってたんだけど、ここにきて彼らの底力っていうのを見せてもらいました」と、折しもこの日開催が正式公表された『AIR JAM 2011』への思いを語る。「人の力はスゴいなって思いました。僕らもお手伝いできたらと思います。こうなったら、みなさん楽しみましょうよ!!」と、いっそう熱を高めてパフォーマンス。さらに、飛び入りしたBRAHMAN・TOSHI-LOWが、歌のみならず、イッチャンと掛け合い漫才のような爆笑トークを繰り広げる場面も――。TOSHI-LOW曰く、「“LOW”が被ってるから、名前変えてください。“ハイエナジー昌之”に（場内爆笑！）。みんな、『ハイエナジー』って呼んでね（フロアから盛大な「ハイエナジー！」の声が・笑）。対してハイエナジー昌之氏、「“LOW”はあげない！　“LOW”は俺のもの!!」ってな具合。震災後にTOSHI-LOWが起こしたアクションに感化されたことにも触れ、「TOSHI-LOWは常に本気なんですよ。口だけじゃなく、いろいろやってくってことを教えてもらいました！」と称え、両者の深い絆を垣間見せた。昔のイッチャンがいかに怖かったかという暴露話、さらにハイスタじゃない方の3人組の復活を熱烈リクエストするなど、ステージでしゃべくり倒したTOSHI-LOW氏に、この夜の最優秀助演男優賞を捧げたいと思う（笑）。

「最後に底力見せましょうか!?」と2度のアンコールにも応え、この上ない形でツアー初日を終えたイッチャン。次の名古屋＆大阪公演もMASTER LOW編成で巡るわけだが、このハイエナジーな状態でTGMXが復帰加入すれば一体どうなっちゃうのか!?　さらに、5月22日の福岡 DRUM BE-1、5月23日の広島 Cabe-Be、5月30日の仙台 PARK SQUAREの3公演はTHE RHYTHM MAKERS編成でツアー・アラウンド。『AIR JAM 2011』や『ROCK IN JAPAN FES. 2011』など続々決定中のフェスと合わせて、ドン・ミシット！（奥村明裕）