っていうくらいの、鉄壁なライブだった。もうほんと、音がハガネのよう。アレンジのしかた、各楽器&シーケンスの重ねかた、フレージングなどに、ユーモラスな感じ・チープな感じ・かわいい感じが混じるのが、POLYSICSの音だが……いや、POLYSICSの音って以前に、そういうの、ポリのルーツのひとつである80年代ニューウェイヴやテクノポップのマナーだが、そのユーモアやチープさやかわいさを、音の「かっこよさ」「男前さ」「激しさ」が凌駕している。次の曲のイントロが鳴るたび、ブレイク明けでどかーんと音が入るたびに、思わず「かあっこええー!」と声を出して言ってしまいました、何度も。
セットリストは以下。
1 Heavy POLYSICK
2 Tei! Tei! Tei!
3 Bleeping Hedgehog
4 Cough Cough
5 Mach肝心
6 Hot Stuff
7 go ahead now!
8 Much Love Oh! No!
9 3 Point Time
10 Digital Dancing Zombie
11 ワトソン
12 Go to a Strange City
13 TIME SHOCK!
14 Boy’s Head
15 サブリミナル CHA-CHA-CHA
16 Moog is Love
17 Don’t Cry
18 機械食べちゃいました
19 How are you?
20 Jumping Up and Clash
21 シーラカンス イズ アンドロイド
22 Shout Aloud!
23 Smile to Me
24 Have a Good Night
アンコール1
25 Let’s ダバダバ
26 Electric Surfin’ Go Go
アンコール2
27 BUGGIE TECHNICA
ハヤシの立ち位置の背後に、シンセ2台。1台は普通に置いてあって、もう1台は手弾きはしないらしく、客席に鍵盤を向けて斜めにセッティングされている。フミちゃんの背後の高い位置にはサンプラー。そして、下手にはフミちゃん用のドラムセット。あとはアンプやドラムセットだけ、というステージの光景が、ホールに入って目に入った段階でもうあがる。なんというか、セッティングが既に表現になっている。というのにも表れているとおり、とにかくシンプルで質実剛健、前述のとおり、男前でひたすらにかっこいいのだ、今のPOLYSICSは。
と書くとわかりやすいけど、それだけではないのだ。これ、ちょっと矛盾しているけど、男前度が上がると同時に、バラエティ感や楽しさも上がっているのだ。ハヤシがバットのようなものを振り回してシンセを叩く8曲目。ハヤシが左腕にポータブル・シンセを装着して(ってどういう状態かわからないか。あの、なんかシンセに筒みたいなのが付いていて、そこに腕を通すのです)プレイした11曲目。フミちゃんがメイン・ヴォーカルをとる12曲目。フミ&ヤノのツインドラムとハヤシのギターとシーケンスでプレイする13曲と14曲目(めちゃめちゃかっこよかった、これ)。ヤノが前に出てきてギターを弾く15曲目と16曲目。あと15曲目、曲中にハヤシとフミちゃんがテレビ通販番組のナレーションをやりますが、あそこ、グッズ紹介に置き換えてました。そして、フロアを「Let's」と「ダバダバ」に分けて、掛け合いで大シンガロングを起こしたアンコールの“Let's ダバダバ”。
というふうに、3人になったことによって、やれることが減ったのではなく、逆に広がっている。とにかくもう、やれることは全部やる。で、それがもういちいちハマっている。
そういえば、『Oh! No! It’s Heavy Polysick!!!』を最初に聴いた時の僕の印象は、「ポップだなあ」「いい曲多いなあ」「これライブ、楽しそうだなあ」だった。
つまり。「この部分はすごいけど、この部分はごっそり欠落している」とか「この部分はすばらしいけど、この部分はハナから手をつけてない」みたいな極端さやアンバランスさも武器のひとつにして、ここまで闘ってきた、そして勝ってきた……いや、スムーズに連戦連勝ではなかったけど、なんとか勝ち進んできたのがPOLYSICSだったとすると、今はその欠落部分がなくなってきている感じを受けるのだ。総力戦というか。正面突破というか。このバンドのライブ、下北沢CLUB Queの初ワンマンから観てるけど(その時のメンバー、もうハヤシくんしかいないけど)、今回くらい「かっこえええ!」と思ったこと、なかったかもしれません。
10曲目にやった、“Digital Dancing Zombie”。ニュー・アルバムの11曲目に入っている曲です。音色なんかはいろいろ装飾されているけど、曲の根本は、単なるオールド・スタイルのロックというか、あまりにも王道すぎて、オーソドックスすぎて、ポリ的にはちょっとどうかと思うような曲です。が、私、このアルバムでこの曲が一番好きです。めちゃめちゃかっこよくて。で、そんなオーソドックスなのに、ポリにしかできないものになっていて。ということだと思う、今のポリの強さは。
蛇足。ライブ中のしゃべりにおける、グダグダ&いじられ&つっこまれ方面担当、ヤノくんの、この日のベストMC。
「今日のライブはどうですか?」みたいなことをハヤシに振られて、「いやあ、最高です。底知らずです!」。で、フロアがちょっと妙な空気になったところで、フミちゃんがツッコミ。「底知らず? 天井知らずじゃないの?」。
一同、大笑い。どこまでも落ちていってどうする。すばらしい。(兵庫慎司)