SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト

震災の影響により延期となっていた、ライブカメラマン橋本塁が普段から撮影をしているバンドを招いて年に一回行っているライブイベント「SOUND SHOOTER」の振替公演。6周年目となる今年は、(出演順に)another sunnyday、rega、killing Boy、ヒダカトオル、THE BAWDIES、the HIATUSを迎えて、新木場スタジオコーストでの開催。チケットはもちろんソールドアウトである。開演時間の17時45分頃、まずは前説で本日のオーガナイザー橋本塁が登場。「本来ならば3月21日に開催する予定でしたが、先の震災で延期になりました。震災で延期になったからには、今日はめちゃめちゃ盛り上がって、めちゃめちゃ楽しんで帰っていただければと思います!」と延期の経緯に触れてから、「では、SOUND SHOOTER vol.6、始めます!」と勢い良く開会宣言をぶち上げる。そうして始まった6バンドによる5時間弱の大祝宴、順を追ってショート・レポートをお届けします。

■ another sunnyday
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト - all pics by 橋本 塁(SOUND SHOOTER)all pics by 橋本 塁(SOUND SHOOTER)
一番手は、ストレイテナーのOJこと大山純(G)とナカヤマシンペイ(Dr)のサイド・プロジェクト=another sunnyday。まず一曲目に披露されたのは、今春発売の初音源『siesta』でもオープニングを飾っていた“Sunnyday”。「わかりやすく、楽しく、脳にストレスがかからないバンド」というコンセプトの通り、意表を突いたトリッキーな曲展開ではなく、王道感に満ち満ちたサウンドでの正面突破でもって、フロアの熱気をグングンと上昇させていく。その後も“Human Lightning”などを投下して、あっという間に辿り着いたラストは“Feather”。クライマックスでOJとTHE RODS美登(B)がステージ中央に集まって激しく音色を絡ませてから、元serial TV drama伊藤(Vo)のハイトーン・ボーカルが高らかにフロアに伸びていったシーンは、文句無しにこの日のハイライトのひとつだった。そして「ありがとうございました、another sunnydayでした! この後も楽しんで帰ってください!」と、これまたストレートな伊藤のMCで締め。爽やかな空気をフロアに無尽蔵に送り込んだ、イベントのオープニングを飾るにふさわしい、躍動感に溢れるアクトだった。

■ rega
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト
「数年前にYoutubeで今日の最後にやる“VIP”っていう曲を見て、一目惚れしまして…」という橋本塁のネタバレ混じりの紹介でスタートした2番手は、ツインギター、ベース、ドラムという編成の4人組インストバンドrega。激しく明滅するライトの中、さながらフリーキーなジャム・セッションのように予測不可能な展開を見せる変幻自在のアンサンブルで、彼らのライブを初めて見るというオーディエンスが大半だったスタジオコーストのフロアを揺らしまくっていく。井出(G)、四本(G)、青木(B)のフロント3人がステージ上を所狭しと動き回る派手なライブパフォーマンスも迫力満点で、オーディエンスは踊ったりながらもステージに釘付けになったりと、随分と忙しそうな様子である。そして雷鳴のような三宅のスネア連打が響き渡った新曲を終えた後のMCでは、「あのー、スタジオコーストでやるの初めてです僕達。塁さんがバージンを奪ってくれました。塁さんありがとう! 今日はこんな大ステージに立てて本当に光栄です!」と四本が喜びを爆発させて、予告通りにラストナンバーの“VIP”をプレイ。大回転しながらベースを弾き倒した青木を筆頭に、最後まで堂々とした様子で熱のこもった爆音のアンサンブルをフロアに向かって叩き付けた彼らに、フロアから盛大な拍手と歓声が送られた。

■ killing Boy
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト
「踊れるけどめっちゃ暗い、ダウナーなダンスミュージック」という橋本塁の紹介通り、ひなっちこと日向秀和(B)のフィジカルなベース・ラインと木下理樹(Vo/G)の鬱屈とした世界観の歌が真っ向からぶつかり合って、冷たくダンサブルなグルーヴを生み出していた3番手はkilling Boy。ひなっちのスラップ・ショットが勢い良く発射されたオープニング・ナンバー“Frozen Music”から、木下がゆらゆらと身体を揺さぶりながら、ゆらぎのあるボーカリゼーションを披露してフロアの心をがっちりと掴み取っていく。その後も疾走感溢れる“1989”、メロウなギター・イントロからの“Perfect Lovers”と、セットリストは粛々と進行。なお、この日はいつもよりもボーカルの音量が大きかった(ような気がする)ので、歌詞がとてもクリアに聴こえていた。それもあってか、《僕らの愛は間違い 惨めにただ汚れた》という、4曲目“xu”の暗すぎる歌詞が響き渡る場内でオーディエンスが一心不乱に踊り狂っているのは、なんとも奇妙な光景であった。終盤に差し掛かるにつれて徐々に肉体性に特化していったバンドのアンサンブルは、木下のフライングVのざらついた轟音がリズム隊のグルーヴィーなダンス・ビートをザクザクと切り裂いたインストナンバーを経て、“Confusion”で最高潮へ。そしてラストは“Call 4 U”をプレイして、killing Boyのライブは終わった。

■ ヒダカトオル
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト
入場SEは“SEX ON THE BEACH”、そして5名のバンドメンバーを引き連れて、ステージに現れるなり飛び出した第一声は「どうもこんばんはーSEXでーす!」。相も変わらずド直球の下ネタ全開の4番手=ヒダカトオルのアクトは、いきなりフロアに盛大なシンガロングを巻き起こした“BE MY WIFE”でキックオフ! その後も“DAY AFTER DAY”“HIT IN THE USA”と、一撃必殺のビークル・ナンバーを叩き込み、フロアを瞬く間に掌握してしまう試合巧者ぶりを存分に発揮するヒダカ。「皆さん幸せですかー! 不幸せな人もいるかもしれませんが、踊ってこの時間だけは楽しんでください!」というMCから披露された“LIFE IN THE NATION”では、ヒダカの「ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」という小刻みなアジテーションでオーディエンスをジャンプさせ、続く新曲“MAXIMUM ROCKN’ROLL”では、スピーディーでメロディックなバンドサウンドにのせて届けられる《MAXIMUM ROCKN’ROLL》というヒダカのシャウトが、フロアを包む高揚感に更なる拍車をかけていく。そして最後は“Situation”からの“FOOL GROOVE”で場内の手を大きく左右にスウィングさせて、ヒダカトオルのアクトは終了。やはり楽しませることにかけてはこの人の右に出る者はいないということを改めて確信することができた、圧倒的歓喜の充満する盤石のステージだった。

■ THE BAWDIES
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト
天井に取り付けられたミラーボールが回りだし、フロアからの割れんばかりのハンドクラップで迎えられた5番手はTHE BAWDIES。一曲目の“IT'S TOO LATE”から全開になったソウルフルなROY(Vo/B)の「あの声」が、スタジオコーストの空気をビリビリと震動させていく。そして2曲目“YOU GOTTA DANCE”3曲目“EMOTION POTION”では、髪を短くしたTAXMAN(G)と、しきりに前に飛び出してくる人懐っこいJIM(G)のツインギターがフロアを強襲。むせかえるような熱を巻き上げながら、TAXMANがメインボーカルを執る“B.P.B”まで、爆発的なスピードで転がっていくロックンロールの塊のような4人。また、「(直前の前説でテンパっていた)塁さんを含め、ちょっと一旦落ち着きましょうと言うことで…“JUST BE COOL”」「早い時間から皆様ご苦労さまでした。そろそろ腹が減ってきたかなと。そして夏ですよ! えー、夏バテ間近ですか! 夏バテ予防いっときましょうか!水分と塩分とビタミンB群…“HOT DOG”」というような、次に演奏する曲を紹介するROYの小粋なMCはこの日も絶好調。そして「イェー!」のコールアンドレスポンスでフロアを一つに纏め上げた“KEEP ON ROCKIN'”からのラストチューンは“A NEW DAY IS COMIN’”。最後はアウトロの際に頭の後ろでギターを弾き倒していたTAXMANが主導となって、ライブ恒例の「わっしょーい!」コールで大団円! 心地良い充足感に包まれた彼らが去った後のフロアには、何度も反芻したくなるような甘い余韻が漂っていた。

■ the HIATUS
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト
イベント開始から4時間が経過して、いよいよトリを飾るthe HIATUSが登場。クリーンなアンサンブルで穏やかに立ち上がっていったスタートから一転、暴力的なバンドサウンドがフロアに大きな戦慄をもたらしたライブ序盤。暴動寸前の狂騒の中でオーディエンスは、頭上にある何かを掴み取ろうとするかのように、必死になって拳を天高く振り上げている。その後も創造/破壊、緊張/弛緩を繰り返しながら徐々にライブはヒートアップ。MCでは、「こりゃ気持ちいいや! みんなすごい長い時間ありがとね、最後までいてくれて! 俺は下半身の左側だけちょっと不完全燃焼だぜ!(笑)」と、細美がギプスをはめた左足(先日ケガをしたそうです)を見せておどけてみせる場面も。細美が両手を大きく広げ、抱きしめるようなアクションをとってフロアを大いに沸かせた“西門の昧爽”や、メンバー全員が楽器を振り上げ、分厚い音の壁を作り出した“The Ivy”と、全シーンがハイライトと言ってしまっても過言ではないこの日の彼らのアクトの中でも最大の輝きを放っていたのは、やはり“ベテルギウスの灯”だろう。「『夢も叶えちゃうとつまんなくなる』とかさ、『好きなことを仕事にすると変わっちゃう』とかあるけど、あれ全部嘘だからね。本当にやりたいことがあるんだったら、絶対やった方がいいよ! たぶん塁だってガキの頃から写真やってきたわけじゃないだろうし、俺だってサラリーマンだったんだしさ。だからみんな、一度の人生なんだから思いっきり生きようぜ!…って、熱いこと言っちゃったなあ(笑)」という直前の細美のMCでの言葉を祝福するかのように、ダイバー達が次々とフロアに打ち上がっていったり、全員でもみくちゃになりながら声を張り上げて大合唱したり、それを受けて細美が満面の笑みを浮かべながら「ありがとー!!」と絶叫したり。そんな全身全霊のコミュニケーションが、ステージ内外を当たり前のように行き交っていた、本当に幸せなクライマックスだった。
全バンドのアクトが終わり、ステージに現れた橋本塁の「今日は本当にありがとうございました! 来年とかもやると思うんで、ぜひまたよろしくお願いします! 気をつけて帰ってください!」という挨拶で、「SOUND SHOOTER vol.6」は大団円! それでは皆さん、また来年!(前島耕)
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