「mudy on the 昨晩とガチンコで試合しに来ましたストレイテナーです。よろしくお願いします!」というホリエの挨拶に続いて、セルフカバー・アルバム『STOUT』から“A SONG RUNS THROUGH THE WORLD”“BIRTHDAY”。「大山純&ホリエのWギターで旧曲を再構築」というよりは、「あるべき音を感性のままに掘り当て、フレーズとして輝きを放つまで磨き鍛え上げた」とでも言うべき大山のギター・プレイは、どこまでもしなやかでスリリングだ。さらに、ひなっちのベースが光るハイブリッド・ファンク“DONKIE BOOGIE DODO”、ギター・ロックとハウスの接点から荘厳な風景を立ち上らせるような“Man-like Creatures”、と前作『CREATURES』からの楽曲、そしてホリエのエレピをフィーチャーした“Lightning”(『Nexus』収録)……と、1時間足らずのセットリストの中に「今」のテナーを完全凝縮。ロック最前線を切り開き続け、日本のロック・シーンを代表する存在となった今でも、フェスだろうと対バンのステージだろうと常に自らを全力で提示してみせるテナーならではの、潔いくらいに充実した内容だった。「ストレイテナーは、9月22日、ここクアトロからツアー回ります。来てください! アルバムもね、絶対聴いてください。俺たちのほうが今日はレコ発です!」というホリエの言葉から、“羊の群れは丘を登る”のひときわ目映いメロディとギター・アンサンブルがあふれ出し、必殺ナンバー“Melodic Storm”でクアトロを揺らして最高のフィニッシュ!……かと思いきや、「渋谷クアトロの、バーサーカーに捧ぐ!」というシンペイの絶叫から“BERSERKER TUNE”(もちろん『STOUT』の超高速バージョン!)で完全燃焼! すべての音が止み、肩を組んで一礼する4人に、熱い拍手喝采が惜しみなく降り注いだ。
もっとコアな方向性だったり、あるいはジャム・バンド的なものだったり、ダンス・ロック的な表現だったり、インスト・バンドをやるにもいろいろな可能性があるし、表現として/存在としての「わかりやすさ」を獲得するにはそのどこかに振り切ったほうがラクなはずだ。が、mudyはそのどれも捨てることなく、踊れて、熱くて、壮大で、身近で、わかりやすくて、深い森みたいに不穏で……といった音楽の魔力を全部、自分たちの音楽に叩き込もうとしてきた。5人がその卓抜したテクニックと情熱で響かせているのは、「うた」と「音源」には収まりきらないどでかい心象風景そのものだ。80年代クリムゾン的な“geller / sun / flight”の冷徹ギター・サウンドから、静寂を織り重ねた果てに真っ白にスパークする轟音へと辿り着いたような“メッセージとは”への流れは、まさにインスト・バンドだからこそ鳴らせる「言葉なきメッセージ」の結晶のような瞬間だった。終盤“ユアイへ”でのクラップの嵐! 渦巻く激情そのままに轟々と鳴り響くアンセム“YOUTH”! 最後、“mudy in squall”の轟音土砂降り状態でクアトロに圧巻の熱狂を巻き起こし……本編終了。
アンコールでは、なぜか全員でストレイテナーTシャツを着て登場したmudy on the 昨晩の5人。「歌あるとかないとか、どっちでもいいし。そんなふうに音楽聴いてないしね。大きい音出して帰ります!」と、アンコールで上気した顔で語るフルサワヒロカズの言葉が、そしてアンプに立ち上がりダイブを決め、と躍動しまくる森のエネルギーだだ漏れの姿が、何よりの闘争宣言として心地好く胸に響いた。10月からは改めて新作を引っ提げて『mudy in squall リリースツアー「ファインディング・アディ」』を回るmudy。その進化と挑戦はまだまだ止まらない!と確信させてくれるアクトだった。(高橋智樹)
[SET LIST]
■ストレイテナー
01 A LONG WAY TO NOWHERE
02 VANDALISM
03 VANISH
04 A SONG RUNS THROUGH THE WORLD
05 BIRTHDAY
06 DONKIE BOOGIE DODO
07 Man-like Creatures
08 Lightning
09 羊の群れは丘を登る
10 Melodic Storm
11 BERSERKER TUNE
■mudy on the 昨晩
01 PERSON! PERSON!!
02 BEA
03 パウゼ
04 ZITTA
05 秘密
06 geller / sun / flight
07 メッセージとは
08 Your entrails and laughter.
09 ユアイヘ
10 YOUTH
11 this squall