ソウル・フラワー・ユニオン@渋谷duo MUSIC EXCHANGE

ソウル・フラワー・ユニオンの定例ツアー9月編『ホモサピエンスはつらいよ』。9/18日の大阪公演からスタートした今回のツアーは、9/21の横浜公演が台風15号接近の危険を考慮して無念の中止に。しかし当日、会場のF.A.D YOKOHAMAでは、急遽3曲のレコーディングが行われる(公式Twitterより)など、相変わらず転んでもただでは起きない逆境強さを発揮したようだ。いずれシングル作のカップリングなどに収録されるのだろうか。そうしてバンドは台風一過の東京・渋谷公演に臨むのだった。ツアーはまだ日程を残しているので、今後の公演に参加予定の方は、以下のレポートの閲覧にはご注意ください。

「人生は祭りだー! 共に生きようじゃないかー!」とフロントマン・中川敬の第一声を合図に、クソッタレな人生を謳歌する“ラヴィエベル”によってステージの幕が切って落とされた。続いて庶民による世直しダンス・ナンバー“エエジャナイカ”。中川はここで《原発廃炉でエエジャナイカ》と歌詞を変えて歌い、オーディエンスの喝采を浴びる。奥野真哉(Key.)は「今日は長いよー。100分の2が終わったとこやね。赤い髪にして人気がガタ落ちです。Twitterで〈奥野 赤髪〉で検索するとね、ひどいことばっかり書いてある……今日は頑張ります!」といきなり個人的なブルースを爆発。そして中川は「横浜、見事に出来んかったね。ギリギリまでやろうと思ってんけどね。ムリして来るやろ? 何人か(笑)。12月(のツアー)も横浜入れようと思ってるんで、楽しみにしててください!」と告げ、彼がイヤらしいほどに伸びやかなテナーのボーカルで歌い出すのは、最新アルバム『キャンプ・パンゲア』に収録されたシングル曲、人生の大原則をトロピカルなサウンドと共に放つ“死ぬまで生きろ!”だ。音楽の優しさ/強さを信頼し、重いテーマの言葉をこそ躍動感に満ちた楽曲に乗せて放たなければならない。そんなSFUの活動姿勢がいきなり突きつけられるような序盤である。

ジャジーなアンサンブルで決める“宇宙フーテン・スイング”に続いては、奥野のピアノがオリエンタルなメロディを聴かせるイエロー・マジック・オーケストラのカバー“ファイヤー・クラッカー”と、予測不可能な展開に喜びつつも驚かされる。更に凄かったのは現ライブ・メンバーの紅一点・上村美保子がリード・ボーカルを務める“天の生贄”から、エンヤトットな混沌が渦を巻く“もののけと遊ぶ庭”という、初期SFUナンバーの土着プリミティブ・ロック・グルーヴの連打である。当時とはメンバー編成もかなり変わっている(というか中川と奥野だけ)こともあって、この流れはおもしろい。“もののけと遊ぶ庭”のアウトロには“うたは自由をめざす!”のコーラスが挟み込まれるバージョンだ。

中川:「なんやアレンジ変わったねえ」
奥野:「エキサイティングやったねえ」
中川:「ちゃんとついてこいやお前」
奥野:「あとでミーティングやな。“天の生贄”なんて久しぶりで、初めて聴いた人も多いんちゃう? そういう人のためにボックス・セットも用意してありますんで。いいですよ、リマスターでね。もう(オリジナル盤は)売ってないよね? ボックス買わんと」
中川:「いや、まだ残ってる(笑)」

そういう流れか。これは90年代のSFUがキューン/ソニー在籍時に残した作品群のCD6枚組のボックス・セットで、オフィシャル・サイトから通信販売が可能(9/28発売)。そしてジゲン(B.)と美保ちゃんによる別動ユニット=桃梨が以前から行っている、被災地に新品のTシャツを届けるという活動について、ジゲンが「新しいTシャツを着たときの気持ち良さを味わって欲しいと思いますんで、詳しくはホームページを」とのこと。こちらは「桃梨」で検索を。このあとには更に初期ナンバー“たこあげてまんねん”が続き、中川と奥野が在籍したSFUの前身バンドのひとつ=ニューエスト・モデルにまで遡って“偉大なる社会”や“秋の夜長”までが披露される。それはさすがにボックスにも入ってないだろう。ジゲンがリード・ボーカルを取る“ソーラン節”はすっかりお馴染みになっていてフロアから間の手が上がっていたが、今回のツアー・タイトルにもなっている新曲“ホモサピエンスはつらいよ”は、近年のSFUにしては久しぶりと思えるぐらいの直球ロックンロール・ナンバーだった。巻き起こるハンド・クラップの中に、憂鬱と困難を小気味良く転がす、推進力として機能する正しきロックンロール。暑い暑い。高木克(ギター、ブズーキetc.)もジャケットを脱ぎ捨てている。

中川:「全っ然たどり着いてないなあ。長い。野心的なセット・リストやな」
奥野:「濃いなあ、ソウル・フラワー」
中川:「ときどき、どんな顔していいかわからんときあるな。笑ってたかと思ったら怒ったりな。みんなもそういう感じでいこうな」

そうか、音楽とは、ロックとは、無表情をやめるためのツールなのだ。怒りついでに中川、今年リリースしたソロ作『街道筋の着地しないブルース』を取り上げないメディアに当たり散らした挙げ句、ソロ作に収録された浅川マキのカバー・レパートリー“少年”をプレイし始める。これを豊穣なバンド・アレンジで聴けるのは嬉しい。そしてノスタルジックな旋律をレゲエ・ビートが支えるソウルシャリスト・エスケイプ名義作品“ニュー・モーニング”、続いて市井レベルの目線で流血の争いを憂いてみせる名曲“戦火のかなた”と楽曲群が並ぶ。あらゆる現場に足を運び、現地の人々と直に向き合うことで「歌われるべき歌」を知るソウル・フラワーの活動は3.11以後ますます活発になっていて、漁師たちの流行り唄“おいらの船は300トン”などは「被災地に歌を届ける」というよりも「現場から歌のレパートリーを頂戴してきてしまう」ソウル・フラワーの真骨頂だ。続いてジゲンの津軽三味線のようなベースのスラップとともに「宮城の有名な民謡です! 大合唱でいきましょう!」と“斎太郎節”が繰り出されては「エンヤートットー、エンヤートットー♪」の歌声が広がり、更には美保ちゃんがリード・ボーカルを取る“春駒”から“若竹”と民謡ロック・カバーを連発する。

作品のアート・ワークどおりに視界一杯のピース・サインが、そして雄々しいコーラスがフロアを満たす怒りの号砲“極東戦線異状なし!?”で中川は、《あの原発村の欺瞞にまみれた連中は/世界のあまたの唄が 首根っこを押さえるぜ》とここでも反原発ソングへと歌詞を変えて歌った。そして高木克のボトルネック・スライドが決まる“ロンドン・デリー”、奥野のピアノと中川のリード・ギターが交錯するスリリングなインスト・ロックンロール“旅を続けなくちゃ”と畳み掛ける。中川が三線を抱え「日本列島中で、いろんな人がこの曲をやってくれてます」と前置きして、阪神大震災以後、そしてもちろん今回の東日本大震災においても、人々の命を照らし出した“満月の夕”だ。『街道筋の着地しないブルース』にもやはり収録されていた。生きるために、生きる証しとして、歌い、踊るという強烈な手応え。それがこの普遍的な名曲にはある。たどり着いた本編クライマックスは、“ダンスは機会均等”そして“海ゆかば 山ゆかば 踊るかばね”という新旧の祭囃子ダンス・ロック・ナンバーの連打だ。おなじ阿呆なら踊らにゃ損々。踊りが上手だの下手だのの問題ではない。決まりきった振り付けもない。命がダンスを欲するときに鳴らされるべき歌と音楽を、SFUは知っている。

年に4度のツアーに被災地出前ライブ、フェスやイベント出演と大車輪の活躍を見せているだけに、代わり映えのないセット・リストはいい加減イヤだったのだろう、アンコールは“荒れ地にて”、“風の市”、またもやジゲン活躍の“秋田音頭”を挟んでホモ・サピエンス全身全霊の悪あがき“神頼みより安上がり”とさすがに必殺ナンバーが並んだものの、本編は長きに渡るファンでも驚くような、しかし歌われるべき歌と大熱演の3時間だった。ただ個人的に、3.11後の心を何よりも慰め、励ましてくれた最新アルバム『キャンプ・パンゲア』の楽曲群が少なめなのが気がかりというか、新しいファンにもぜひライブで触れてみて欲しかったりする(そもそも、リリース・ツアーが昨年末、発売日直前に行われてしまっていたこともある)のだが、どうだろう。さてさて、翌日の9/24には彼らは神戸に全速力で駈け戻って『長田大行進曲 2011』に出演。9/27には6月にも訪れた宮城・仙台のLIVE HOUSE enn2ndでツアー・ファイナルを迎える。「内容は全然違うよ。ニュアンスが(笑)」と中川は語っていたので、ぜひ足を運んでみて欲しい。詳細は未定だが9/28、29には宮城県女川町でのアコースティック・ライブの企画も進められているそう。また、10/28には東京・下北沢GARDENにて、eastern youthとの2マン・ライブも行われる予定だ。(小池宏和)
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