[Champagne] @ 新代田FEVER

[Champagne] @ 新代田FEVER
[Champagne] @ 新代田FEVER
[Champagne] @ 新代田FEVER
7月にリリースされたシングル『言え』はもとより、10/5に発売されたばかりの[Champagne]初となるDVD作品『It’s Me And Me Against The World』(前回のツアー・ファイナルとなった6/19恵比寿リキッドルームでのワンマンの模様を収録)のリリース・タイミングに合わせた東名阪ワンマン・ツアー『Me Against The World tour 2011 ~やっぱ沖縄じゃね?~』。残念ながら沖縄での公演は予定されていないが、7公演+追加1公演がすべて異なるライブ・ハウスで行われるという駆け足巡業だ。大阪と名古屋でそれぞれ2公演ずつをこなした後、東京で行われる3夜連続ライブの初日=新代田FEVERである。

先に触れたように前回のツアー・ファイナルがリキッドルームだったということもあるので、当然というべきかフロアはオーディエンスでぎっちり。翌13日のShibuya WWWや14日の新宿ACBでもきっと同様だろう。暑い。パフォーマンスがすこぶる熱いものになってしまうから、めっきり秋らしくなったこのところの気候を忘れさせてしまうぐらいに暑い。今後の日程に参加予定の方は、どうぞそのつもりでお出掛けを。跳ねたり踊ったりしなくとも、長袖を着ていようものなら即座に汗が流れる。そういうスケジュールになっているので以下、本編のレポートでは曲名・曲順について触れることはなるべく控えるが、ツアー参加予定のため1曲たりとも知りたくない、どんなムードだったかも一切知りたくない、という方はご注意ください。

さて、お馴染みのオープニングSEから始まる序盤だが、新作のアルバム・ツアーではないからか、過去作もひっくるめた自由度の高い選曲で思い切りの良いスタート・ダッシュを見せてくれる[Champagne]の4人。「We are [Champagne]! Motherfuckers!!」と吠え立てる白Tシャツ+黒ジャケット姿の川上洋平(Vo./G.)の胸元が、あっという間に流れる汗で照明の光を乱反射している。デビューして瞬く間にロックンロール新世代の一角を担うところまで駆け上がってしまった彼らのスリリングなキラー・チューンの数々は、まだアルバムを2作しか発表していないバンドとは思えないほどの濃密な説得力で畳み掛けられてゆくのだった。川上の英語/日本語が入り交じった雄弁でクリスピーな歌が弾け、バンドの演奏はときに煙を噴くようなグルーヴを、ときに不穏なサイケ感を、そして怒濤の突進力を見せつけながらひた走る。

単純に選曲の自由度が高いからおもしろいのではなく、それによってメンバー4人も実に開放的な気持ちでパフォーマンスに臨んでいる気がする。約2週間で8公演のワンマンをこなすというスケジュールもそうだが、ここにきて[Champagne]の、ロック・バンドとしての生々しい息づかいと爆発力に満ちた勢い/ライブ感を再確認する意味合いも込められたツアーになっているのではないだろうか。

「あらためまして[Champagne]です! ただいま東京! 返事が微妙なのは、おれが横浜出身だからですか!? でもただいま!」あっついな、とジャケットを脱ぎ捨ててそう告げる川上は、このときステージに一人残された状態だった。「今回のツアーでは、セット・リストから零れ落ちた曲を弾き語りでやろうと思って。何やろうかな、決めてないんだよね」。そしてこの日に披露されたのは“You’re So Sweet & I Love You”だ。確かに弾き語りでも映える楽曲だけれど、シングル曲がバンド・セットから外されてしまうようなツアーなのである。「歌いますか?」とオーディエンスのハンド・クラップも巻きながら、共に歌心を刻み付けてゆく。

少年性を残した歌声とシンクロするかのような不思議で危うい色気、そしてスリリングなロックンロールの歌詞を転がすだけにはとどまらず煽り文句もビシビシと決めまくる英語/日本語入り乱れての言葉たち。そういったものを持ち合わせる川上が優れたフロントマンであることに疑いの余地はないが、今回のセット・リストに挟み込まれた弾き語りのアクセントは、他のメンバー3人の存在感をも浮き彫りにしていた。時に力強いリード・ベースでグイグイと前面に躍り出る磯部寛之も、大振りな鬼リフから小気味良くファンキーなカッティング、熱いソロまで、ロックのロックたるギターのダイナミズムをバンドに持ち込む白井眞輝も、上半身裸で高いポジションに設置されたシンバルを引っ叩きながらワイルドなビートを担う庄村聡泰も。メンバーが再び揃って改めて繰り広げられた余りの狂騒ぶりに川上が「今日、ファイナルでいいんじゃないかな? サイコーです!」と告げれば、磯部は「こんなの3日間ももたんわ」と零すのだった。

得意のカバー・レパートリーは、コーラス部のみの断片などを含めると、T・レックス“20センチュリー・ボーイ”、U2“ヴァーティゴ”、それに勢い余った川上がアカペラで歌い出し、アドリブで白井がギターを被せていったオアシス“シャンペン・スーパーノヴァ”(!)など。あ、カバーと言えば他にもあったな。何しろ、ロック好き丸出しでここまで来てしまった[Champagne]ならではの姿だ。しかし、ザ・ビートルズや、ドアーズや、T・レックスや、ニルヴァーナやオアシスがどれだけ偉大なロック・バンドであろうと決して出来ないことを、[Champagne]はひとつやってのけている。それは、2011年を生きる我々を狙い撃ちし、今の日本のロック・ファンと響き合うためのロックンロールを鳴らすということである。[Champagne]の高い機動力と凄まじいコンビネーション、雄弁な物語が描き出すロックンロールは、ロックの遺産を視界の端に収めながらも、それ以上に極めて現代的な響きを誇っていて、生々しい熱狂を生み出す。これだけ名曲をカバーしまくってもまったくコピー・バンドに見えないのはそのためだ。[Champagne]のロックンロールは少なくとも、今を映し出すことが出来るという意味においては、歴史的なロックの名曲たちよりも優位に立っている。

そんな中で、12/14にリリースされるシングル曲“Spy”も披露された。バンドのレパートリーとしては以前からあった曲だが、「就職とは何ぞやっていう曲で。学生時代に合コンをして、相手はOLだったんだけど、そこで知り合った人がつらいのよねー、って言ってて。ああ、自分たちもそうなるのかなあって。まあ、なったんですけど」。川上はそんな経験を語ってから、伸びやかなファルセット・ボイスを絡めつつ歌い始めた。もうひとつの人生を想像するという、「変わる」瞬間をじわじわとドキュメントしてゆくようなミディアム・テンポのバラードだ。僕には、就職という場面だけには留まらない、人生の様々な分岐点で強く訴えかけるようなナンバーとして響いてきた。広く世に放たれるときが楽しみである。

また、この夜に解禁された情報として、『Spy』発売の2日後となる12/16、[Champagne]企画『This Summer Festival』(通称『ディスフェス』)が今年も開催されるという発表もあった。対バンはNothing’s Carved In Stone、a flood of circleという強力な顔ぶれで、場所は東京・赤坂ブリッツ。ぜひ続報をチェックして欲しい。東京3夜連続の後には同じく東京・町田での追加公演が控え、学園祭転戦シリーズにイベント出演と、3作目のアルバム制作とともに年内のライブもフル稼働の[Champagne]である。なお年の瀬12/31には、COUNTDOWN JAPAN 11/12にも出演を予定している。(小池宏和)
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