eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN

eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN
1994年の始動以来、今年で19年目を迎えたeastern youthの自主企画ライヴ・シリーズの2012年一発目、「極東最前線~人の子こぞりて足踏み鳴らせ!~」。開演予定時刻の19時を少し回った頃に、SEのブルガリア民謡“Molih Ta, Majcho I Molih”が流れ出し、フロアに大歓声が上がる。まずは先攻=BRAHMANの登場だ。

eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN
eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN
「世界の東の端っこで起こった惨劇からまだ1年も経ってねえ。おれはどうすんのかな。逃げんのかな。無視すんのかな。指くわえて見てんのかな。どうせ死ぬなら前のめり。どうせ死ぬなら最前線。極東の地、BRAHMAN始めます!」。ゆっくりとした導入から、徐々にスケールの大きな爆音を解放していった1曲目の“From My Window”を終え、そう語ったTOSHI-LOW。そしてすかさず“The only way”へとなだれ込み、会場のボルテージをまた一段と跳ね上げる。クリーン・トーンがディストーション・サウンドに移行する瞬間に破格の爆発力が迸るKOHKIのギター、髪を振り乱して一心不乱に極太のラインを弾き出すMAKOTOのベース、様々なビートを使い分けてアンサンブルを加速度的に推進させるRONZIのドラム、そして身体をしならせ、命を振り絞るようにして発せられるTOSHI-LOWのボーカル。鬼気迫るテンションでそれらの武器をぶん回し、あっという間に終盤の“Fibs in the hand”まで辿り着くと、フロアに飛び込みオーディエンスに支えられて屹立するTOSHI-LOWが再び語り始める。

eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN
eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN
ここでTOSHI-LOWは、復興支援のためにeastern youthとのWネームグッズを作ったことを告げてから(ライヴ終演後、物販は長蛇の列でした!)、かねてからの念願だった「極東最前線」に出れたことの喜びを語った。そこには、様々な想いがあったのだという。バンド結成直後、まだ閑古鳥が鳴いているライヴハウスの中で、RONZIと「もしもバンドが終わるなら『極東~』に出たい」としゃべっていたこと。かつて付き合っていた人と見た99年のフジロックでのeastern youthの“青すぎる空”に、とても感動したこと。そして「『極東~』に出れたらいいね」って言ってくれていたその人が、昨年の震災で逝ってしまったこと。その時は既にお互いが別々の人と結婚していたため、葬式やお別れには行かなかったが、今度その人の旦那さんに訊いて、「極東最前線」に出たことを伝えに墓参りに行こうと思っていること。丁寧に言葉を選びながらそれらを語り尽くした後の、ラスト・ナンバーは“霹靂”。ありったけの感傷を込めて吐き出されるTOSHI-LOWの声がクアトロの空気をびりびり震わせ、BRAHMANのアクトは終わった。

eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN
eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN
そして短めのセットチェンジを挟んだ20時20分、ブルージーなSEにのって後攻=eastern youthが登場。二宮のド迫力のベース・ストロークが落ち着いたタッチの吉野のアルペジオを塗りつぶし、1曲目の“月影”が立ち上がる。初っ端から飛ばしまくる吉野のボーカリゼーションの圧倒的な求心力で、瞬く間にフロアを再点火させた後、“未ダ未ダヨ”“浮き雲”とノンストップでたたみかけていき、イントロが鳴ったと同時に大歓声が起こった“青すぎる空”では耳をつんざくシンガロングが勃発! 続いては、吉野が「我々ロック度氷点下、eastern youthです。何をやれるのかわからないけど、やれることを精一杯にやりたいと思います。最後までどうぞお付き合いください」と挨拶をして、“二月はビニール傘の中”へ。《届かない夢でこそ/愛しいから捨てねえんだな/今捨てるのはビニール傘だ/行くしか無えんだぜ又》と全力で歌う吉野の声がフロアに高く伸びていき、場内を包む熱気はどこまでも上昇軌道を描いていくのであった。

「この雨音を誰かと共有したくない。この雨は俺だけのものだ。どうぞ濡れて帰らせてくれ」(“雨曝しなら濡れるがいいさ”)「知らねえところで知らねえことが、どんどんどんどん行われていくんだね。そして俺たちの住む場所が、どんどんどんどん狭くなっていくんだね」(“自由”)と、独特の語りを交えながら熱っぽく突き抜けていったライヴ中盤。吉野の鋭いカッティング・ギターからスタートした“踵鳴る”では、剥き出しの魂をそのままぶつけてくるような迫真のプレイを見せていた3人である。続くMCでは吉野が、午後3時から開いている高円寺の飲み屋「馬力」の話で会場の笑いを誘ってから、一転、少しシリアスなトーンになって語り出す。

「そういうとこばっかり見て生きてるわけ。子供の頃から運動会とか全然参加しなかったしさ。そういう、ちっちゃいマッチの火みたいな、すぐ消えそうだけど確かに灯ってるみたいな。意地があったりしてね。そういうものを見ていくうちに、そうか、おれはそういうことをやりたかったんだって、ハッキリしてきた。俺はでっかい歌を歌いたいんじゃなくて、ちっちゃいちっちゃい一人一人の歌を歌いたいんだってね。そうすれば、一切合切みんな輝く」。

流行らないメシ屋を、ダサイTシャツを、放置自転車を、項垂れた背中を。そういう決して陽のあたることのない、うだつの上がらない日常のあれこれを真っ向から見つめ、「それでも生きていくしかない」という覚悟を持って真っ向から愛してやることで、街の一切合切が輝き始める。このMCでの言葉と、その後に投下された“一切合切太陽みたいに輝く”から伝わってくるのは、つまりはそういうことであり、そしてそれは紛れもなく、これまでの活動の中でeastern youthが目を血走らせながら、喉も裂けよとばかりに叫び続けてきたことそのものであった。そして「もうだめだ、限界だって思っても、夜が明けたら行かなきゃいけないもんなぁって。最後の歌は、そういう思いで生きてる全ての人…じゃなくて、目の前のキミだけに歌います」と届けられた本編ラストの“夜明けの歌”で、会場のエモーションの高まりは遂に頂点を迎えたのであった。

「お酒はね、僕は寿命と天秤にかけても絶対にやめませんよ!」という吉野の生涯飲酒宣言が飛び出したアンコールでは“ドッコイ生キテル街ノ中”“街はふるさと”、客電が点きクロージングSEが流れ出しても鳴り止まない拍手に応えて行われたダブルアンコールでは“Don Quijote”を、それぞれ全身全霊でかき鳴らし、この日の「極東最前線」に幕を下ろしたeastern youth。なんだか、あらゆる角度から「逃げずに生きるための力」みたいなものを注入されたような、凄まじい一夜だった。(前島耕)
eastern youth@渋谷クラブクアトロ ゲスト:BRAHMAN

[eastern youth セットリスト]
1. 月影
2. 未ダ未ダヨ
3. 浮き雲
4. 青すぎる空
5. 二月はビニール傘の中
6. 扉
7. 雨曝しなら濡れるがいいさ
8. 自由
9. 踵鳴る
10. 一切合切太陽みたいに輝く
11. 夜明けの歌
アンコール
1. ドッコイ生キテル街ノ中
2. 街はふるさと
ダブルアンコール
1. Don Quijote
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする