BIGMAMA@TOKYO DOME CITY HALL

BIGMAMA@TOKYO DOME CITY HALL
BIGMAMA@TOKYO DOME CITY HALL
BIGMAMA@TOKYO DOME CITY HALL
本編終盤、金井政人(Vo&G)の目からは涙が溢れていた。会心のステージを成し遂げたことで感極まったから?
いや、残念ながらというべきか、違う。それは、ふがいない自分自身に対する屈辱の悔し涙だった。まだ公演中であるにもかかわらず、顔をくしゃくしゃにして、金井は泣いていた。ブログに「どう転んでもスペシャルな夜になること間違いなしです」と綴られていたけれど、彼が想い描いていたものとは異なる形で、この年に一度の全席指定ライブ=『母がまた座席指定のライブを終えるまで』@TOKYO DOME CITY HALLは、バンドにとって生涯忘れがたい特別なものとなったのだった。

大歓声を受けて、最新作『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』と同様“beautiful lie, beautiful smile”からスタートしたライブ冒頭には、“異変”はほとんど感じられなかった。アッパーな“#DIV/0!”では、ステージ上のバルーンに歌詞とシンクロしたカウントダウンが投影され、バンドは手に汗握るようなスリルとドラマツルギーを描いてみせる。続く“最後の一口”では、おもむろに天井からいくつものハート型の紙吹雪(?)が天恵のように降り注ぎ、早くも場内はBIGMAMAのライブ特有の、妙に心温まるような親密なムードに包まれた。いやぁ、楽しい!

「今日は年に一度の特別な日です。今僕らにできることすべてお見せできるように、全力を尽くします!」(金井)と威勢良く告げて、“Paper-craft”、“Lucy”と畳み掛ける。しかし、その“Lucy”の最中、思うように高音部が出ないようで、歌い切れずにもどかしげな素振りを見せる金井。どうしたのかと思ったら、「めちゃめちゃ声枯れてるんすよ…」と苦笑い。「昨日の晩、みんなにどんな顔して謝ればいいかわからなくて…。だったら一生懸命やって「ヘタクソ!」って言われてもいいやと思って、一生懸命やることに決めました。一緒に歌って手伝ってください!」と語る彼に喝采で応えたオーディエンスだが、ノドの不調にもがき苦しむ姿を目の当たりにすることとなり、個人的には少々もどかしく思わざるをえない場面も――。しかし、BIGMAMAのファンは本当に温かくて、精いっぱいの手拍子やシンガロングで金井をサポート。メンバーもフロントマンの苦境を補って余りある熱演をみせ、曲を追うごとに、ステージと客席の間には分かちがたい連帯が生まれていくのだった。

声は不調ながら実に見所の多いステージで、“Zoo at 2a.m.”ではゾウやキリン、ゴリラにパンダなど、たくさんの動物たちのバボット(バルーンロボット)が壇上に現れ、さらに10人ほどのセクシーなバック・ダンサーも登場して場内の熱気は加速度的に上昇!
中盤には「今日のために何かしたいなと思って、曲を書いてきました」(金井)と、カッキー(柿沼広也/G&Vo)と2人だけでブランニュー・ソングを熱唱(ありとあらゆるロジックを駆使して“君”への想いを綴った、愚直ながらとてもロマンチックなバラードだ)。そして、本編ラストの“until the blouse is buttoned
up”では、ストリングス・セクションとバック・ダンサーが再び登場し(PVに登場していたパジャマ姿の女の子も!)、さらに頭上からは大量の紙吹雪が舞い散り、場内は眩いばかりの歓喜のオーケストレーションに包まれた(アンコールでは5月に“母の日”のスペシャル・シングル「母に贈るCD」のリリースも公表!)。要するにBIGMAMA流エンターテインメントの限りを尽くしたような、豪華かつ気持ちのこもったセットだったのだ。

「物が飛んでくる覚悟でした。いや、マジで、俺がお客さんだったら「ふざけんな!」って絶対思うから…。めちゃめちゃ悔しいんで、死ぬほど練習して、死ぬほどいい曲作って、リベンジできるように努力します」と、本当に悔しそうに、涙ながらに金井は語っていた。何よりもファンの気持ちをいちばんに優先し、そこに自分たちの信念、あるいは夢や希望やそういった類のすべてを乗っけて、何ひとつおろそかにすることのないまま、ここまでのスケール・アップを遂げてきたBIGMAMAだ。だからこそ、ファンの期待に100%応えることができない自分へのふがいなさは耐えられるものではなく、人目をはばかることのない涙となって表出したのだろう。しかし、思うように声が出ないぶん、大きなアクションでオーディエンスに訴えかける金井の姿には、観る者の魂を震わせてやまないものが確かにあった。そのがむしゃらなステージングには、表現者としての意地、また、ひとりの人間としての精いっぱいの誠意のようなものが強烈に感じられたからだ。この夜の無念を糧として、5月13日のツアー・ファイナル@Zepp Tokyoではまたきっと素晴らしい景色を見せてくれるに違いない。そう信じて、楽しみに待ってます!(奥村明裕)
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