ネブラスカ州オマハ発5人組エレクトロ・バンド、ザ・フェイント。昨今の80s/ニューウェイヴ・リバイバルに先駆け、2001年発売の『ダンス・マカブレ』で、無機質なシンセ音を利かせたダンス・ロックを奏で、シーンに大きな衝撃を与えた彼ら。
そうした時代の趨勢の呼び水となる作品をリリースしながらも、以来、ファッション性の高い一過性のムーヴメントに呑み込まれることなく、シーンと一定の距離を置き、独自のサウンドを深化させ続けている。
今回は約4年ぶりとなる新作『ファシネイション』を引っさげの日本ツアー。場内が暗転し、ほぼ満員の観客の歓声に迎えられメンバーがステージに登場。“アジェンダ・スーサイド”から幕開け。リード・シンガーのトッドはタイトな白っぽいスーツに、バイク用のごついゴーグルを着用というミスマッチぶりをものともしない、なんとも不敵な面構え。「ハロー、トーキョー」というMCに続けて“アジェンダ・スーサイド”が。ビートとともに、全身をくねらせ、マイクスタンドをしなやかに操りながら、ちょっと気だるいヨレた歌声を繰り出す。メンバーの背後では、ステージいっぱいに貼られたスクリーンにモノトーンのグラフィカルな映像が、曲の展開に合わせて投射されている。2面のスクリーンはV字型になっていて、客席の右からも左からも映像が観やすい。最近、ダンス=蛍光色的なギラギラ感を煽る演出に無意識のうちに食傷気味になっていたのか、モノトーンの映像+ブルーのライト+ストロボというセットがえらい潔くクールに感じられた。
新作の楽曲のみならず、3rd、4thの楽曲がバランスよくちりばめられている。彼らは確かにオーディエンスを踊らせるロック・バンドなのだが、ライブとなると、やはり最近ぽっと出のダンス・バンドとは、基礎体力の違いが明らかになる。CDで聴くよりはるかにダイナミックなグルーヴを生み出す鉄板のリズム隊、やたらとブリープを利かせたりと派手なエフェクトに頼ることなく、ミニマムな音色で聴き手のツボをおさえてくるシンセ音。そのサウンドのベースには、ハード・コア、ゴシック、ポジティブ・パンク、エレ・ポップ、デス・メタルなど多様なサウンドの影響が見え隠れする。その底の深さが、オーディエンスを惹きつけてやまないのだと思う。
最新作は自身のレーベルからリリースした彼らだが、これまではブライト・アイズのレーベル<サドル・クリーク>所属だった。もともとブライト・アイズと一緒にバンドを組んでいた経歴もあり、<サドル・クリーク>では確かに異端の存在だったが、彼らのこの唯一無二な個性が育まれていくのに、そうした出自や環境の影響ははかり知れない。
ラスト“パラノイアタック”“アイ・ディスアピア”からアンコール3曲にかけての流れは特に圧巻で、生のバンド・サウンドとシンセ音がせめぎあうギリギリの緊張感に、思わず見とれてしまっていた人も少なくなかった。(森田美喜子)
1.Agenda Suicide
2.Drop Kick The Punks
3.Take Me to the Hospital
4.Forever Growing Centipedes
5.Psyco
6.In Concert
7.Posed To Death
8.Desperate Guys
9.Get seduced
10.Conductor, the
11.Worked Up So Sexual
12.Machine in the Ghost
13.Mirror error
14.Paranoiattack
15.I Disappear
アンコール
16.Birth
17.The geeks were right
18.Glass Danse