『忌野清志郎ロックン・ロール・ショー 日本武道館 Love&Peace』@日本武道館

『忌野清志郎ロックン・ロール・ショー 日本武道館 Love&Peace』@日本武道館 - 仲井戸“CHABO”麗市、トータス松本、奥田民生仲井戸“CHABO”麗市、トータス松本、奥田民生
『忌野清志郎ロックン・ロール・ショー 日本武道館 Love&Peace』@日本武道館 - 小泉今日子、仲井戸“CHABO”麗市、浜崎貴司小泉今日子、仲井戸“CHABO”麗市、浜崎貴司
《季節はずれの 激しい雨が降ってる/たたきつける風が 泣き叫んでる/お前を忘れられず/世界はこのありさま》

“激しい雨”のそんな歌い出しを思い返して、首都圏近郊の鬱陶しい長雨も妙に納得してしまうような5月2日。昨年に引き続き開催を迎えた、『忌野清志郎ロックン・ロール・ショー 日本武道館 Love&Peace』である(昨年のライヴレポートはこちら→http://ro69.jp/live/detail/50803)。愛車に跨がって武道館に乗り付ける清志郎のオープニング映像は昨年のスタイルを踏襲し(ただし東京スカイツリーをのぞむカットが挟み込まれていたのは2012年ならでは)、そして清志郎の声はレギュラー・バンドの面々をコールしてゆく。バンドの顔ぶれも仲井戸”CHABO”麗市(G.)、新井田耕造(Dr.)、藤井裕(Ba.)、Dr.kyOn(Key.)、梅津和時(A.Sax.)、片山広明(T.Sax.)、Leyona(Cho.)という不動のラインナップだ。それではまず、17:00から約4時間半に渡って繰り広げられた今回のショーの、演奏曲と豪華出演者たちの一覧をどうぞ。

01: ロックン・ロール・ショー (トータス松本・奥田民生・Leyona)
02: 君が僕を知ってる (トータス松本)
03: I LIKE YOU (トータス松本)
04: ラプソディ (Leyona)
05: Good Lovin' (Leyona)
06: Oh! Baby (LOVE PSYCHEDELICO)
07: い・け・な・いルージュマジック (LOVE PSYCHEDELICO)
08: つ・き・あ・い・た・い (浜崎貴司+小泉今日子)
09: Baby#1 (浜崎貴司+小泉今日子)
10: RAZOR SHARP・キレル奴 (吉井和哉)
11: Mother (吉井和哉)
12: 彼女の笑顔 (木村充揮 & 内田勘太郎)
13: 上を向いて歩こう (木村充揮 & 内田勘太郎)
14: 約束 (三宅伸治)
15: JUMP (三宅伸治)
16: スローバラード (JUN SKY WALKER(S))
17: キモちE (JUN SKY WALKER(S))
18: Dock of The Bay (Steve Cropper)
19: In The Midnight Hour (Steve Cropper)
20: 雑踏 (矢野顕子)
21: ひとつだけ (矢野顕子)
22: まぼろし (ラキタ)
23: ハイウェイのお月様 (Chara w/仲井戸"CHABO"麗市)
24: 指輪をはめたい (Chara)
25: エンジェル (斉藤和義)
26: 涙あふれて (斉藤和義)
27: ドカドカうるさいR&Rバンド (斉藤和義+奥田民生)
28: あふれる熱い涙 (奥田民生)
29: 誰かがBedで眠ってる (奥田民生)
30: いい事ばかりはありゃしない (仲井戸"CHABO"麗市)
31: トランジスタ・ラジオ (浜崎貴司+吉井和哉)
32: 雨あがりの夜空に (全員)
33: 映像 “毎日がブランニューデイ" (忌野清志郎)

なお以上のうち、レギュラー・バンドとの共演ではなく単独でのパフォーマンスを行ったのは、出演順に木村充揮 & 内田勘太郎、三宅伸治、JUN SKY WALKER(S)、そして矢野顕子の4組だった(クライマックスの“雨あがりの夜空に”は全員参加)。

華々しいバンド・サウンドとトータス/民生/Leyonaの3連砲ヴォーカルがいきなり破壊力満点な、公演のタイトル・コールと呼ぶべき“ロックン・ロール・ショー”ののち、トータスが「今年も始まりましたー! たくさんの人が出て歌ってくれるんで、最後まで楽しんで行ってください!」と挨拶してステージに残る。彼はソウルフルで切々とした節回しももちろん良いのだが、“I LIKE YOU”の笑い声のフレーズを含めた陽気な曲調がとてもサマになっていた。一方、レゲエ風に練り上げられるグルーヴがフィットするのはLeyonaの“ラプソディ”である。その後に登場したLOVE PSYCHEDELICOは“い・け・な・いルージュマジック”の選曲と盛り上がりが目立っていたけれど、KUMIとNAOKI、それにDr.kyOnのアコーディオンというトリオ編成でフォーキーに披露された“Oh! Baby”が素晴らしい。

浜崎貴司の呼び掛けでオーディエンスが一斉に「キョンキョーン!!」の声を上げ、ショートパンツ姿がデタラメに可愛い小泉今日子も姿を見せる。00年代に洗練された、オトナな作風のオリジナル・アルバム群を生み出してきた彼女らしく、“Baby#1”では落ち着いた歌で魅了してくれる。そして吉井和哉。この日発売された清志郎作品のカヴァー集『KING OF SONGWRITER〜SONGS OF KIYOSHIRO COVERS』にも収められた“RAZOR SHARP・キレル奴”を披露する。これはずるいぐらいのハマり方だ。しかし圧巻だったのは、昨年の『ジョン・レノン スーパー・ライヴ』でも披露されたという、孫カヴァー曲“Mother”だった。歌を作ったのはジョン・レノンだし、日本語詞を書いたのは清志郎だが、あれは吉井和哉の歌だった。CHABOがとても真剣な表情でギターを奏でていたことも印象深い。レポートを書きながら思い返してみても、肌が粟立つようだ。

ここで、秋元康、三池崇史、爆笑問題らが次々に登場するコメント映像が流され、山口冨士夫の姿が映るに至っては武道館がひときわ大きくどよめいた。そして竹中直人が登場するグッズ企画会議。ここでは昨年同様、武道館の座席表にダーツが投げられ、当たった座席の来場者1名に公演のグッズ一式+清志郎のブルーレイ作品がプレゼントされるという企画も盛り込まれる。

さてステージでは、レギュラー・バンドが一時捌けて木村充揮 & 内田勘太郎の元・憂歌団コンビによるアコースティックな弾き語りが繰り広げられる。「よかったら、みなさんも一緒に歌うてくださいよ。レッツ・シンギン♡」とお茶目な木村だが、その歌も内田によるボトルネック・スライドも、説得力の塊みたいになって迫って来る。続いて喝采と共にステージに迎え入れられたのは、三宅伸治だ。共作した“約束”を清志郎に語りかけるように披露すると、ワンマン・バンド・スタイルでビートを刻みながら“JUMP”で武道館一杯のオーディエンスをたった一人で飛ばしてしまうという空間掌握力を見せつけてくれるのだった。そんな高揚感のバトンを受け取るのはJUN SKY WALKER(S)。ここでの“スローバラード”は、ジュンスカの懐の深い表現力が存分に発揮されていた。

清志郎のダイナミック・ライブ映像も披露され、“CALL ME”から野音の“ラプソディ”、B.B.KING BLUES CLUBでの“激しい雨”、そして“スローバラード”にブルーノート東京の“トランジスタ・ラジオ”。その直後にステージに姿を見せたのは、今しがたB.B.KING BLUES CLUBのライヴ映像にも映っていたスティーヴ・クロッパーだ。ここで彼がプレイするのは、「キヨシローも大好きな歌だったんだよ」と“Dock of The Bay”、“In The Midnight Hour”のオーティス・レディング2連発である。ソウルフルで艶のあるギターと、梅津和時のサックスとが交錯する。とても気が利いたトリビュートであった。

“雑踏”を、余りにも自由かつ豊かな解釈で歌ってくれるのはピアノ弾き語りの矢野顕子。「今年もここに呼んでもらって嬉しいけど、やっぱりひとつだけ足りないのは、本人よね。でも彼は、膨大な量の素晴らしい歌を残してくれたので、私たちはそれを歌い継ぐことが出来ます。今日も、え? そんな曲あったっけ? っていう曲もあるんですけど、ファン失格ですけど、でも、また覚えて歌ってやるぜ! って思ってます」。この人は一体なにを言っているんだろう。矢野顕子が、覚えて、歌うということは、つまりそれだけで歌に最大級の賛辞と、新しい命が贈られるということなのに。清志郎が旅に出てからの、彼女が歌う“ひとつだけ”。僕はそれを聴くたびに、嬉しいような、悲しいような、どうしていいか分からない気持ちになる。

さあ、Dr,kyOnが「僕がボ・ガンボスというバンドをやっていたときのヴォーカル=どんとの息子、今日出る中で一番年下の仲間です!」と紹介して登場したのはラキタだ。“まぼろし”の、バンドの音とがっちり渡り合う歌、それにブルージーで熱を帯びるギター・プレイもきっちり披露してくれた。ちなみにラキタ、5/5のJAPAN JAM3日目のステージでは、ズットズレテルズ再稼働の決定的瞬間を見せてくれる予定になっている。スカートをはためかせて登場したCharaは、CHABOとのデュエットを披露すると、「キヨシローさんが、一曲だけ歌ってやるよ、って弾き語りを聴かせてくれたときにリクエストした曲なんです」と“指輪をはめたい”へ向かう。これまた思い入れの強さが伝わる熱演だ。

カヴァー集『KING OF SONGWRITER〜SONGS OF KIYOSHIRO COVERS』にも提供した“エンジェル”を歌う斉藤和義。CHABOの美しいギター・フレーズが寄り添ってゆく。「今日もそこに日の丸が出てますけど、以前キヨシローさんがまた、またってことないけど君が代問題でやらかしたときにですね、大丈夫なんですかって訊いたら、10年に1回、発売中止になったほうがいいんだって言ってて(笑)。やっぱりついて行こうって思いました」と持ちネタも披露して大喝采である。斉藤と民生が共演するナンバーは、幾つもの巨大バルーンが客席に放り込まれる“ドカドカうるさいR&Rバンド”。2人の歌とレギュラー・バンドの演奏をひっくるめて、こう「ドカドカうるさいロックンロールのグルーヴ」って今は希少価値高いよなあ、と感じてしまった。

民生が「座ってていいよ。OK、おれ!」とRCナンバーを2曲。そうはいいながらも必ず清志郎のロックンロールのエッジの部分を見せてくれるという、すこぶるカッコいいパフォーマンスだ。CHABOが歌詞を噛み締めるように歌う“いい事ばかりはありゃしない”も鉄板、2コーラス目はLeyonaに預け、自らは片山広明と音をぶつけ合う。クライマックスは大量の紙吹雪が舞う“トランジスタ・ラジオ”からの、全員集合+武田真治(Sax.)による“雨あがりの夜空に”で大団円を迎えた。出演者全員がラインを作り、ペコリと頭を下げる。

素晴らしいショーだった。ただ、昨年とは何かが違っている気がした。出演者の顔ぶれが違うということでもなくて、熱量で言えば前回も今回も同じぐらい高かったけれど、清志郎や清志郎作品に向けられる気持ちの消化の仕方が違うと言えば良いだろうか。前回は、3.11を受けてのこともあって、泉谷しげるが予定曲を変更して歌った“サマータイム・ブルース”にも大きな意味が生まれていたことをはじめ、出演者も、観客も、清志郎不在の世界を率直に悲しみ、嘆くような激しいエモーションが立ち込めているように感じられていた。

しかし今回はどうだったろう。出演者の演奏曲の多くには、清志郎が残したものをそれぞれに血肉化し、まるで自分自身の歌として放っているような手応えがあり、そのせいか清志郎の不在感よりも、残された音楽の、歌のエネルギーそのものが粘り強く生きてゆくための力として与えられているような、そういう感覚があった。前回がおかしかったと言いたいのではない。あのときは即効性の高いエモーションの開放が必要だったし、それが必要な人は今もたくさんいるだろう。ただ、我々が清志郎の歌を生かし、活かすことの先に、何か新しい力を見つけようとしているという気も、するのだ。(小池宏和)
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